投資信託は運用をプロに任せられるため、初心者でも安心して始めることができます。しかし、最終的な売買の判断は基本的に自分で行う必要があり、売り時に悩む人も多いようです。そこで今回は、投資信託を売却するタイミングや売却に関する基礎知識、失敗しないためのポイントを投資初心者の方に向けて詳しく解説します。

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■投資信託の売却に関する基礎知識

投資信託の売り時を知る前に、まずは投資信託の売却について知っておきたい基本事項を確認してみましょう。

1.売却は基本的にいつでもできる

投資信託には、運用期間が定められているものと定められていないものがありますが、運用期間のあるなしに関わらず、基本的にいつでも売却が可能です。

ただし、「クローズド期間」が設定されている投資信託は、その期間中解約ができません。クローズド期間とは、投資信託が解約できない期間のことで、投資信託によっては3ヶ月から1年程度のクローズド期間が設定されている場合があります。

クローズド期間が設定されていても、破産や疫病、天災地変などやむを得ない事情がある場合は解約可能ですが、こうした例外を除いて解約はできません。そのため、購入を検討している投資信託にクローズド期間があるかどうか、事前に確認しておきましょう。

また、海外資産に投資している投資信託の場合、投資先の国が休業日の時は売却できないため、その点についても注意しましょう。

2.売却時には税金や手数料がかかる

投資信託を売却して利益を得ると、利益に対して20.315%の税金がかかります。税金の内訳は、所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%です。

また、「解約手数料」や「信託財産留保額」など、売却に伴う手数料も発生します。解約手数料とは、投資信託を売却した時、証券会社などの販売会社に支払う手数料です。解約手数料がかかるかどうか、またかかる場合の金額は投資信託によって異なります。

信託財産留保額とは、投資信託を解約する時にかかる費用で、解約代金から差し引かれます。信託財産留保額は運用会社や販売会社の収益になるものではなく、解約代金から差し引かれた後は投資信託に残る財産です。費用は投資信託によって異なり、信託財産留保額が設定されていないものもあります。

3.売却後には確定申告が必要

投資信託から利益を得た場合、納税のために確定申告が必要です。ただし、投資信託から発生した利益が20万円以下の場合やNISA口座・iDeCo口座を利用している場合、源泉徴収ありの特定口座のみを利用している場合、確定申告は不要です。

なお、取引で損失が出て損益通算や繰越控除などをしたい場合、確定申告をする必要がありますので注意しましょう。

4.長期保有を前提とする

投資信託はいつでも売却できますが、長期保有を前提に運用しましょう。長期保有することで、「複利効果」と「価格の振れ幅を抑える」という2つのメリットが得られるからです。複利効果とは、運用で得た利益を再び投資に回すことで、利益が利益を生み雪だるま式に資産が増えていく効果のことです。

また、積立形式で一定額の投資信託を定期的に購入していくと、長期投資によって価格の振れ幅を抑える効果が期待できます。反対に、短期で見ると、購入のタイミングによってはリターンがプラスやマイナスに大きく変動する可能性があります。

投資信託はいつかは売却のタイミングを迎えますが、基本的には長期保有を前提とした運用計画を立てましょう。

■投資信託の売り時はいつ? おすすめの売却タイミング6選

投資信託の売り時として適切なのは、これからご紹介する6つのタイミングが考えられます。ご自身の投資目的などと照らし合わせ、売却タイミングの参考にしてください。

1. 投資の目的のタイミングが到来した時に売却する

子どもの教育資金を準備する、退職後の生活資金を確保する、車や住宅を購入するための資金を蓄えるなど、投資信託を運用する目的は人それぞれです。「目的の時期が到来したら投資信託を売却する」と決めておくと、資金を計画的に準備でき、タイミングに迷うことなく投資信託を売却できるでしょう。

ただし、投資信託を売却したい時期に基準価額(投資信託の値段)が下がっているケースも考えられます。売却予定の時期が近づいてきたら、売却のタイミングを見計らっておくといいでしょう。

2. 目標金額に達した時に売却する

「〇年後までに〇〇万円貯める」という金額の目標を立てている人は、目標金額に達した時点で投資信託を売却するのもいいでしょう。目標金額に達した時点で売却すると決めれば、必要な資金を確実に手にすることができます。

ただし、目標金額に達した時、特に現金が必要でない場合、リスクがあることを踏まえたうえで、さらに運用を続けてより大きな資産形成を目指すのも一つの選択肢です。

3. より魅力的な投資先が見つかった時に売却する

保有している投資信託よりも高いリターンが期待できる他の投資商品が見つかった場合、保有している投資信託を売却し、他の投資先のために投資資金を確保するという方法もあります。

いきなり全てを売却するのが不安な場合、はじめは一部だけを売却して投資資金を作り、その後は運用状況を確認しながら徐々に切り替えるといいでしょう。

4. 長期的な値上がりが期待できないと判断した時に売却する

投資信託の運用状況や市場の動向を分析し、長期的な値上がりが期待できないと判断した場合、損失を最小限に抑えるために売却することが望ましいでしょう。

投資信託の運用はプロに任せられますが、売買のタイミングは自分で判断しなければなりません。また、長期で保有していれば、投資信託の運用方針が時代や経済状況に合わないものになる可能性もあります。売却のタイミングを判断できるよう、保有する投資信託の特徴や経済に関する知識は最低限身に付けておきたいところです。

5. 現金が必要になった時に売却する

予期せぬ出費や緊急事態が発生した場合、手元の現金が不足することがあります。このような時、投資信託を売却して必要な資金を確保することができます。

タイミングによっては値下がりしていることも考えられますが、今後の上昇が望めそうであれば、必要な分だけ売却して現金に換える方法もあります。

6. 保有資産をリバランスする時に売却する

長期的に複数資産に投資していると、金融商品の価格変動によって保有資産のバランスが崩れてしまうことがあります。そうした場合、投資信託を含む保有資産の一部を売却し、保有資産の比率を再調整する「リバランス」を行うことが必要です。

たとえば、当初は「投資信託60%・個別株式40%」の比率で保有資産を構築していたけれど、投資信託が値上がりして「投資信託70%・個別株式30%」の比率に変わってしまったとします。その場合、投資信託の一部を売却することで保有資産の比率を「60%・40%」に戻すことができます。

バランスが崩れたまま資産を保有し続けると、はじめに想定していたリスクやリターンから乖離したポートフォリオ(どの銘柄にどのくらいの配分で投資するかの組み合わせ)になってしまうこともあります。複数資産を長期投資する場合、保有資産のバランスを定期的に確認するようにしましょう。

■投資信託の売却で失敗しないためのポイント

ここまで、投資信託の売り時をご紹介しましたが、いざ売却する時に失敗しないためにはどのような点に気を付けるべきなのでしょうか。特に大切な4つのポイントをご紹介します。

1.値下がりしてもすぐには売却しない

投資信託の価格が大きく下がったとき、多くの投資家はパニックに陥り、すぐに売却してしまう人も少なくありません。しかし、価格の下落は一時的なものである可能性もあり、長期的な視点で見れば回復することも多いです。そのため、短期的な価格変動に惑わされず、元々の投資計画に忠実でいましょう。

投資の基本的な目的は、長期間保有し続けて資産を増やすことです。短期的な目線で慌てて売却を判断するのではなく、長期目線で冷静に判断するようにしましょう。

2.値上がりした場合、全てではなく一部だけ売却する

保有している投資信託が値上がりして目標としている金額に達した場合などは、投資信託を売却して現金化するのに良いタイミングです。しかし、保有している投資信託を全て現金化する必要がない場合、一部だけを売却することも検討してみましょう。

一部だけを売却して運用を続ければ、投資信託が値上がりした場合はさらに利益が得られますし、値下がりした場合は目標金額に達した資産の目減りを防ぐことができます。

3.マーケットタイミングを避けて売却する

市場のタイミングを計ることは非常に難しく、多くのプロの投資家でさえ成功できません。そのため、マーケットタイミング(安い価格で購入し、高い価格で売却すること)を避け、ドルコスト平均法のような定期的な投資を行うことをおすすめします。

これにより、市場の上下に惑わされることなく、一定の投資を続けることができます。

4.申し込みから売却・入金までのタイムラグに気を付ける

投資信託では、売却の申し込みをしてから実際に売却され、入金が行われるまでの間にタイムラグがあります。また、売却の際の基準価額も、申込時のものではなく売却注文の後で決定される価格が適用されます。

そのため、特に現金が必要で投資信託を売却する場合、入金までのタイムラグや実際に適用される価格に気を付けて売却の申し込みを行いましょう。

■投資信託の売り時は、あらかじめ決めておこう

投資信託を売却すれば現金が得られますが、売り時を誤ると損失につながる恐れがあります。予定していた金額や、それ以上の資金が手にできるように、投資信託の売り時はあらかじめ決めておくようにしましょう。

特に、価格が下がった時には慌てて売却してしまいがちですが、後から振り返ると「そのまま保有していれば良かった」というケースが多いものです。そうした失敗を防ぐためにも、自分が決めた売り時まで計画的に運用を続けていきましょう。