近年、就職活動時に福利厚生の充実度に注目する学生や転職者も少なくない。実は働き方の多様化が進んでいるように、福利厚生のニーズも時代に合わせて変化しているという。
このほど、「新時代の福利厚生トレンド」に関するメディア勉強会が東京・五反田で開催され、「AI英会話スピークバディ」「audiobook.jp(オーディオブック)」「OFFICE DE YASAI」の3社がプレゼンを実施。福利厚生のトレンドとそれぞれが提供するサービスについて語った。
変化する福利厚生、令和の最新トレンドとは
AI英会話スピークバディの伊藤さんは冒頭、「人的資本経営時代の新しい福利厚生トレンド」について説明した。
いわく、かつての福利厚生といえば家賃補助、大規模な社員食堂、保養施設、温泉、カラオケ、金券などが主流だったが、90年代のバブル崩壊によって状況は一変。予算削減のため、福利厚生としての社宅や保養施設などを手放す企業も増えたという。
「今は福利厚生費用も圧迫し、予算を下げなければいけない時代ですが、それでも従業員の満足度は上げないといけません。それではどういうサービスがいいかというと、現在は安価で手間がかからない"福利厚生代行サービス"がトレンドになってきています」
現在の企業は売上の伸長とともに持続可能な成長も求められており、中でも人的資本への投資によって従業員が健康的に、長く働ける環境であることが重要視されている。かつては従業員を"コストの対象"として捉えていたのが、今は"長期投資の対象"としてサポートすべきだという考え方に変わったのである。
「今の時代に求められる福利厚生サービスは、場所や建設コストなどをかけずに導入できる『健康的な社食サービス』や、書籍購入や語学学習などをサポートする『リスキリング』、他にも『メンタルヘルスケア』や『婚活支援』、『家事代行サービス』などが人気メニューとして広がっています」
スキマ時間にできる! AI×英語学習
AI英会話スピークバディが提供するのは、まさに「リスキリング」に該当するサービスだ。現代は少子高齢化による国内マーケットの縮小、人手不足による外国人雇用、インバウンドの増加などに伴い、組織のグローバル化が求められる企業が増え、同時に語学学習の重要性も高まっているのだという。
これまでも多くの企業が社員の英語力向上に努めてきたが、福利厚生で英会話サービスを導入しても、社員が継続して学んでいるか、実際にスキルは伸びているかといった実情が把握しにくく、それでいてコスト面での負担は大きいという実態があったという。しかし、AI英会話スピークバディは現在100社以上が導入し、好評を得ているようだ。
「AI英会話スピークバディはAIキャラクターとの英会話を通じて英語を習得するスマホアプリで、AI相手だから気恥ずかしさもないし、間違えても恥ずかしくありません。今はいろんなAI英会話サービスが出てきていますが、我々はいかに英語を習得できるかといったことを重視し、最新鋭のAIテクノロジーやカリキュラム、プログラムの独自メソッドが評価されています。
学習状況や現在のレベルも可視化でき、人件費もかからないので、圧倒的にコストも低く、低価格で導入できます。1レッスンあたり15分程度なので、スキマ時間でも学習しやすいという特徴もあります」
一例として、AI英会話スピークバディをトライアルで導入したみずほフィナンシャルグループでは、社員の92%が継続を希望し、85%が英会話のレベルアップを実感したという。
多忙なビジネスパーソンの"ヒマな耳"に着目
耳で聴く本「audiobook.jp(オーディオブック)」もリスキリング分野に該当する福利厚生サービスのひとつだ。
オーディオブック広報の佐伯さんは、「今は共働き家庭も増えていて、ビジネスパーソンはあまりにも忙しく、インプットする時間もありません。家事・育児などをこなしながら、いかに効率的に学ぶかが重要になってきています」と指摘する。
そこで注目したのが、"音声コンテンツ"と"多忙なビジネスパーソン"の相性の良さだ。
「どんなに忙しくても、"耳"は意外とヒマだという事実にみんなが気づき始めています。動画コンテンツはじっくり観る必要がありますが、耳は"ながら"で使えます。1日のうち、耳のスキマ時間は平均で3.7時間ほどあるというデータもありますが、この3~4時間をワイヤレスイヤホンで有効活用している人が増えています」
現在、国内のオーディオブック会員数は300万人を突破。福利厚生として法人版サービスもスタートした。ビジネス書なども含め、1万5000点の書籍がラインアップされている。
「現在は100社以上に導入されています。法人版はひとりあたりの会費も割安ですし、その手軽さも評価されて継続率は87%。今後もオーディオブックは、学びたい人が学べる環境づくりをサポートしたいと思っています」と佐伯さんは語った。
"置き型健康社食"で社員の健康をサポート
"置き型健康社食"の「OFFICE DE YASAI」は、場所や建設コストなどをかけずに導入できる社食サービスである。
広報の白井さんは、「OFFICE DE YASAIは、企業のオフィスに冷蔵庫を無料で貸し出し、サラダやフルーツ、サンドイッチなどの健康的な食事をお届けするサービスです。従業員の方々は1品100円からという安価でお召し上がりいただけるのが強み。約10年前にスタートして、現在は全国で累計1万拠点に導入いただいています」と話す。
例えば、ホテル事業で知られるアパグループは200を超える国内拠点に「OFFICE DE YASAI」を導入。病院やクリニック、薬局などは前年比で約80パーセントも導入実績が増えているという。やはり従業員が決まった時間に休憩を取りづらい職場や、近くにコンビニなどがないオフィスでは特に需要があるらしい。
「SDGsの取り組みも意識していて、北海道から沖縄まで地産地消であることに力を入れています。例えばアスパラガスって、長さを整えるために端っこを切り落としてしまうのですが、私たちはその端材を使ってスープやアイスなどを作るなど、フードロスに取り組んでいます。また、サラダは消費期限が短いので、消費期限が近づいたら自動的に値下げする『ダイナミックプライシング機能』を搭載した冷蔵庫なども開発しています」
昭和の時代とはまるで様変わりし、多様化が広がる福利厚生サービス。自分が勤務している企業、または就職を希望している企業がどんなサービス内容を用意しているか、改めて確認し、うまく活用してみよう!