キャリアアップのために、TOEICや簿記検定などに挑戦したいと思っている人、独学ではなく講座を受講したいと思っている人に、ぜひ知っておいてほしい制度が「一般教育訓練給付」制度です。

  • 知らなきゃ損! TOEICや簿記検定の講座費用20%が戻ってくる「一般教育訓練給付金」とは

「教育訓練給付」と聞くと、失業者が対象と思われがちですが、雇用保険の被保険者であれば、在職中でも給付を受けることができます。今の仕事でさらなるスキルを付けるために、「一般教育訓練給付」を利用できることを知っておくといいでしょう。「一般教育訓練給付」を利用すれば、費用の20%(最大10万円)が戻ってくる可能性がありますよ。

■教育訓練給付制度とは

国の教育訓練給付制度には、「専門実践教育訓練」「特定一般教育訓練」「一般教育訓練」の3つの教育訓練があります。

●専門実践教育訓練

中長期的なキャリア形成のための実践的な教育訓練が対象。受講費用の70%給付

<対象講座>
公的職業資格(業務独占資格など)の養成課程など。介護福祉士、看護師・准看護師、美容師、社会福祉士、歯科衛生士、保育士、調理師など

●特定一般教育訓練

速やかな再就職・早期のキャリア形成のための教育訓練が対象。受講費用の40%給付

<対象講座>
業務独占資格などの取得を目標とする講座など。大型自動車第一種・第二種免許、介護職員初任者研修、社会保険労務士、税理士、行政書士、司法書士、宅地建物取引士資格試験など

●一般教育訓練

雇用の安定・就職の促進のための教育訓練が対象。受講費用の20%給付

<対象講座>
資格の取得を目標とする講座など。TOEIC、TOEFL、実用英語技能検定(英検)、簿記検定試験(日商簿記)、中小企業診断士、インテリアコーディネーターなど

  • 出所:厚生労働省「教育訓練給付制度パンフレット」

ここでは、仕事を続けながら、キャリアアップの一環で資格取得を目指す「一般教育訓練」について解説します。

■一般教育訓練給付金を受けるには

まずは、一般教育訓練給付金を受けるための要件を確認しましょう。

●対象者
初めて教育訓練給付金を受ける場合は、受講開始日までに雇用保険の被保険者期間が1年以上ある人、以前に受けたことがある場合は被保険者期間が3年以上あり、なおかつ、前回の教育訓練給付金受給日から受講開始日前までに3年以上経過している人が対象となります。

離職して雇用保険の被保険者でなくなった場合は、被保険者資格を喪失した日以降、受講開始日までが1年以内でありかつ支給要件期間が3年(初めての教育訓練給付金であれば1年)以上あれば対象となります。

●対象講座
厚生労働大臣の指定を受けた講座が対象となります。例えば同じ「TOEIC対策講座」と銘打っていても、厚生労働大臣の指定を受けていない講座は給付金の対象とはなりません。対象となっている講座は、厚生労働省「教育訓練給付制度 検索システム」から探すことができます。オンラインで受講できる講座や、土日、夜間開講の講座もあるので、働きながら学ぶことができます。

●支給額
教育訓練経費の20%(上限10万円)となります。ただし、その20%に相当する額が、4,000円を超えない場合は支給されません。つまり2万円を超える講座を受けないと支給されません。

教育訓練経費とは、入学料および受講料(最大1年分)です。検定試験の受験料は含みません。まずは、教育訓練施設に受講費用を全額支払い、受講後に申請をすることで、受講費用の20%が戻ってくる仕組みです。

■給付金を受けるまでの流れ

受講から給付金が支給されるまでの流れをみていきましょう。

1. 雇用保険の被保険者期間の要件を満たしているか確認する
2. 対象講座を選択する
3. 教育訓練施設に受講の申し込みをする
4. 受講する
5. 受講修了後1か月以内に、住所地のハローワークに下記書類を提出する

・教育訓練給付金支給申請書
・教育訓練修了証明書
・領収書
・本人・住所確認書類およびマイナンバー確認書類
・通帳またはキャッシュカード(給付金の振込先口座)
・教育訓練経費等確認書(郵送・電子申請の場合)

このほかにも書類が必要となる場合があります。詳細は管轄のハローワークに確認してください。支給申請は、受講修了日の翌日から起算して1か月以内に手続を行う必要があるので忘れないようにしましょう。

6. 給付金が指定口座に振り込まれる

■一般教育訓練給付金のメリットとデメリット

TOEICや簿記などの検定試験や資格試験は、職業訓練というよりは、スキルアップ目的で受験する人がほとんどだと思います。そのため、ハローワークの教育訓練と結びつかず、給付金が受けられることを知らない人は意外と多いのではないでしょうか。

「一般教育訓練給付金」の対象となる講座は、例にあげた以外にもたくさんあります。厚生労働省「教育訓練給付制度 検索システム」で検索してみるといいでしょう。最後に、「一般教育訓練給付金」のメリットとデメリットをお伝えしておきます。

メリット

一般教育訓練は、スキルアップ目的の資格の取得を目的とした講座が対象となっており、幅広い資格が対象となっています。今まで知らずに仕事帰りに通っていた「英会話教室」も実は教育訓練給付制度の対象となっている場合もあるので、確認してみるといいでしょう。受講料の20%が戻ってくるのは大きいメリットです。

デメリット

「一般教育訓練給付金」を受けるには、厚生労働大臣の指定を受けた講座を受講する必要があります。さらに、単に受講しただけではなく、教育訓練修了証明書を発行してもらう必要があるため、目標達成の客観的な評価を得なければなりません。

また、受講料は最低でも2万円を超える講座でないと給付金は支給されず、数十万円の講座が多く見受けられます。それだけお金をかける必要があるということです。独学で試験に合格できる人は、そもそも必要のない制度といえます。