2024年11月21日に発売予定の『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』は、一人称視点のサバイバルホラーシューティングゲーム。2007年に発売された第1作目『S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chornobyl』よりカルト的な人気を集める『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズの最新作だ。
発売に先駆けて、日本国内の販売を担当するセガはメディア向けの試遊会を開催。ウクライナに拠点を持つGSC Game World社の開発メンバーも登壇し、本作の魅力を語った。歴史ある『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズに今回初めて触れた筆者が、その様子をお伝えする。
生き延びるためには逃げるのも大事! 状況に合わせた計画と行動が鍵
まずは、『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズの世界観から紹介したい。舞台は、かつて爆発事故を起こしたチョルノービリ原子力発電所の跡地。立入禁止区域の「ゾーン」には、放射線の影響で突然変異を起こした生物「ミュータント」が徘徊し、雷や竜巻などの異常現象「アノマリー」が頻発する。プレイヤーは、過酷な状況下にあるゾーンで危険な依頼を請け負いながら生きる者「ストーカー」としてゲームを進める。
本作の主人公は、ストーカーの男「キエフ」。相棒らしき人物とトラックに乗り込み、暗い夜道を走っていくシーンから物語が始まった。冒頭のムービーが終わると、いよいよゲームプレイがスタート。トラックを降り、立入禁止区域を囲む塀を乗り越え、ゾーンへと侵入する。草木が生い茂る荒廃した土地に一人で放り出され、夜の暗さも相まって一気に不安が募る。
「一体どこにどうやって向かえばいいのか」と緊張したが、ゲーム内には「PDA」と呼ばれる小型情報端末があり、進行中のミッションや地図などの詳細情報を確認できる。また、画面上部の方位表示に目的地の方角と距離が記されているので、ゲーム世界でも現実世界でも方向音痴な筆者としては、非常にありがたかった。
いざ覚悟を決めて歩を進めると、ゾーンに徘徊するミュータントと遭遇し、初の戦闘が始まった。銃を構えて狙い打つも、ミュータントはなかなかにしぶとく、一発二発の銃撃では怯む様子がない。シューティングゲームにあるようなダメージ数値の表示はなく、銃弾が当たっているのかどうかも不確かで、それがさらに恐怖を煽る。
ようやく倒せたと思って体力ゲージを見ると、すでに半分以下に減っていた。医薬品を使って回復するが、手持ちのアイテムにも限りがあり、決して無駄遣いはできない。ゲーム冒頭のチュートリアルとは思えない厳しさに、ただならぬ雰囲気を感じ始める。
目的地であるゾーン内の研究所に辿り着くと、研究者たちは何者かに襲われ息絶えていた。遺体を調べると、わずかながら回復薬などのアイテムが手に入る。過酷なゾーンを生き残るには、こうして遺品を漁り、物資を奪うことも必要不可欠なのだ。
研究所内をくまなく探索し、遺された研究者のノートパソコンからチュートリアルのミッションの最終目的地となるポイントを割り出す。再び外に出て探索を続けるが、複数体で襲いかかってくるミュータントたちや、敵対するストーカーの攻撃に手も足も出ない。
特に厄介だったのが、ゾーン内の一部地域にいると、「被曝」による継続ダメージが発生すること。ただでさえ、ミュータントやストーカーに苦しまされているのに、被爆でドンドン体力が削られてしまっては、泣きっ面に蜂である。命からがらミュータントを倒せても、被爆ダメージにより、目的地手前で息絶えてしまうことが何度もあった。しかも、直前のオートセーブのデータをロードしてゲームを再開するも、セーブの時点で体力がほぼ尽きているため、またすぐにゲームオーバーになってしまう。
手詰まりになった筆者を見かねて、GSC Game World社の開発メンバーが操作を代わり、手を貸してくれた。直前のセーブデータではなく、体力が多く残る少し前のセーブデータからやり直し、襲い来る敵たちの間を見事に走り抜けていく。敵に正面から立ち向かわず、ときには逃げることも大事なのだと、開発者直々のプレイングから学びを得た。自身の体力や手持ちの物資を見直し、計画を立てて行動する。力押しなゲームプレイをしがちな筆者にとっては、新鮮な発見であった。
助けを借りながらどうにか先へ進み、目的地のポイントに到着。「スキャナー」と呼ばれる機器を所定の場所に設置し、ようやくミッション完了かと思いきや、周囲に稲妻がほとばしり、キエフは気絶してしまう。画面が暗転し、タイトルロゴが表示されたところでプロローグは終わった。
冒頭部分のみの試遊とはいえ、『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズのストーリーや世界観を理解するにはゲーム内の専門用語が多く、筆者と同じように本作で初めてシリーズをプレイする人は少々戸惑うかもしれない。事前に過去作をプレイして少しでも知識を得ておくと、よりスムーズにゲームを楽しめるだろう。
2024年6月には、過去の3部作がセットになった、パッケージ版PlayStation 4用ソフト『S.T.A.L.K.E.R.: Legends of the Zone Trilogy』が発売されているので、気になった方はぜひチェックしてみてほしい。
圧倒的な没入感が魅力! リアリティあふれる一人称視点とハードなゲームシステム
2時間ほどの試遊プレイを通して感じたのは、圧倒的な没入感だ。最新のゲームエンジン「Unreal Engine 5」による高精細なグラフィックもさることながら、筆者が驚いたのはムービーのカメラワークである。
冒頭のトラックに乗るシーンでは、会話や景色の変化に合わせてキョロキョロと一人称視点が動く。トラックから飛び降りるモーションに合わせて画面が大きく揺れたときには、特にリアリティを感じた。「映像」としてではなく、ゾーンに生きるキエフそのものの「視点」として世界を描くことで、プレイヤーに臨場感を与えているのだ。
また、被曝ダメージに加え、出血や空腹、睡眠不足などの細かく設定されたハードなゲームシステムが作品への没入感を高める。現実世界で生きる私たちがそうであるように、主人公のキエフも走り続ければ腹が減るし、怪我をしたまま放っておけば出血で死に至り、ゲームオーバーだ。「ゲームの世界だから大丈夫だろう」といった甘えが一切通用しない厳しさが、リアリティを拡張する。
さらに、回復薬や銃器などのアイテム資源に限りがあることが、ゾーンの過酷さに拍車をかける。崩れかけた建物内や転がる遺体を必死に漁り、物資をかき集め、ときにはゲーム内のキャラクターたちと取引や交渉をしなければ、生き残ることができない。
ゲームであることを忘れるほどの「サバイバル生活」を味わえる没入感こそが、『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズが持つ最大の魅力なのだ。ストイックかつ歯応えあるゲーム作品を探し求める人には、ぜひおすすめしたい。
開発メンバーにインタビュー! プレイヤーそれぞれの「生き方」を楽しんでほしい
試遊会の最後には、GSC Game World社の開発メンバーが登壇。2024年8月12日に公開となったプレイ映像を交えながら、テクニカル・プロデューサーのEugene Kulik(ユウジン)氏と、マーケティング・プロデューサーのVlad Novikov(ブラッド)氏がインタビューに応えてくれた。
圧倒的な没入感を生むビジュアルについて、どのように制作を行ったのか訊ねてみたところ、「実際にチョルノービリ発電所の跡地に何度も足を運んだ」と答えてくれた。立入禁止区域を含め、膨大なロケーション写真を現地で撮り、それを基にアーティストたちが草木の質感にまでこだわりながらカスタムして作り上げたのだそう。
今回の試遊会では冒頭部分のみしか見られなかったが、オープンワールド全体の面積は60平方kmにおよぶ。過去作ではアクセスできなかったロケーションや建物も、本作ではオープンになっているので、さまざまな景色を味わいながら探索を楽しんでほしいと語った。
また、チュートリアルからゲームオーバーばかりしてしまった筆者としては、ゲームの難易度設定が気になるところ。本作で初めて『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズに触れるプレイヤーたちに向け、アドバイスはないか聞いてみると、難易度は数段階の設定があり、ゲーム開始時に選択ができるとの答えが返ってきた。
ただし、ゾーンは、さまざまな危険が待ち受ける過酷な場所であり、決して「リラックス」できるような場所ではない。そのため、まずはじっくりと時間をかけてゾーンという場所を学び、十分に準備をしてからミッションに臨むのがよいだろうと教えてくれた。そして、ストーカーとして必ずしも“戦闘員”である必要はなく、戦いを極力避けつつ、キャラクターとの交流や取引を楽しむのも良いだろうとアドバイスをもらった。
『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズの最新作にして、最高レベルの没入感を味わえる『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』。その世界で、どのような生き方を選ぶのかはプレイヤーに委ねられる。ぜひ、ゾーンに生きる一人のストーカーとして、自分なりのサバイバル生活を楽しんでほしい。
なお、今回の試遊会では、第14世代のintel Core i7 CPU、NVIDIAのRTX 4090 / RTX 4080 Superを搭載したASUSのゲーミングブランド「ROG」デスクトップPCを使用。ディスプレイは、GtG 1msの高速応答を実現したゲーミングモニター「ROG Strix XG256Q」が用意されており、高画質、超高速リフレッシュレートでのゲームプレイを満喫できた。