43,780円というドン・キホーテの安価な14型ノートPC「MUGA ストイック PC5」実機を使って、ベンチマーク測定のほか、Officeを使った作業や画像レタッチなどの実作業を行い、実作業でどの程度使えるのか試しました。

  • 記事の構成上“登場”するのはまだ先だが、この記事の主役「MUGA ストイック PC5」の姿をまずは。その姿はとても4万円台PCとは思えないっ

【お先に結論】ココがよかった!
●ボディがシンプル・イズ・ビューティフル
●ディスプレイがきれい
●“とりあえず”安い!
【お先に結論】ココが惜しい!
●ストイックな処理能力
●華奢なキーボード
●“微妙に”安くない

PCを持ってない若い人、確かに多かった

「PC持っていないっす」

これ、なにげに当たり前だったりします。特に年齢が若くなるにしたがって。

SNSとかで若い人がPC使っていないっす持っていないっす使っていても学校のもので授業でしか使わないっす何ならレポートはスマートフォンで書いちゃうっす、という書き込みとかから肌感覚で“何となく”そうなのかのなあ、と思っていましたが、総務省が発表した「令和5年通信利用動向調査」の「問1 情報通信機器の保有状況」をみると、なるほど結構な違いがあることがわかります。

「情報通信機器の保有状況」調査結果は、情報機器の所有率をスマートフォン、タブレットパソコン、ウェアラブル端末など18項目のデバイスに関して、年齢を10歳ごとに区切った世代別、世代構成人数ごとに集計した値を示してくれます。

例えばスマートフォンとタブレット、PCの所有率を20~29歳、30~39歳、40~49歳、50~59歳、60~69歳、70~79歳、80歳以上で比較したり、単身世帯とそれ以外の世帯で比較したりすることができるわけですが、「パソコン」項目の所有率は40歳から69歳の年齢層で7割台、40~59歳で区切ると75%を超えるのに対して、30~39歳では68.3%、20~29歳では65.7%まで下がってしまいます。

どわー!(ただ、70歳以上の結果では50%台とこれまた一気に下がってしまう。いいかえれば40~69歳の年齢層のパソコン所有率が他の年齢層と比べて異様に高いともいえるかもしれない)。

ちなみに単身世帯と2人以上の世帯でパソコン所有率を比較すると単身世帯が48.1%に対して2人の世帯で63.8%、3人以上の世帯では総じて7割以上となります。

なお、単身世帯のすべてが若い世代というわけではありませんが、同じ統計資料には「単独世帯(非高齢者)」という項目も用意されていますが、こちらのパソコン所有率は60.9%と単身世帯の値と比べると高いですが、それでも、先に挙げた“40歳から69歳の年齢層で7割台”と比べると低くなっています。うーむ。なぜだ。

「情報通信機器の保有状況」調査結果には、もう1つ興味深いデータがありました。情報機器の所有率を世帯収入別でも調査しているのですが、200万円以上の収入がある世帯でスマートフォンの所有率は9割近く(400万円以上では95%超)に上るのに対し、パソコンの所有率は200万円以上400万円未満で58.2%まで下がります(ちなみに200万円未満の世帯になるとスマートフォン所有率が71.6%に対してパソコン所有率は33.8%と“パソコンを持っていないのが普通”となります)。

たしかに、“ネットにある情報を利用する”ならスマートフォンで大方のことはできてしまいますものねえ。まずはスマートフォンを持っていないと。これはよくわかります。PCベンダーにとって困っちゃうのは、スマートフォンがどんどん高額になっていること。手持ちの可処分所得には限りがありますから欲しいもの全てを購入するわけにはいきません。

となると、まずはスマートフォンに。まあそうなりますよね。で、PCベンダーにとってさらに困るのが、スマートフォンがけっこうなスピードで代替わりすること。「新しいスマホじゃないとなんかかっこ悪いじゃーん」という“見え”な事情も理解できますが、それ以上に「新しいモデルじゃないと反応が遅くて使いづらくなる」という要因も少なからず作用しているのではないかと(他に、というか、けっこう多くの人から相談を受ける事案として「スマホの中が写真でパンパン」という話もありますが……。自分で整理しなよ……)。

などなど、もろもろの事情が作用して今や「購入で優先すべきはPCよりスマートフォン」となって久しいわけです。

ただし。「んじゃ、PCはもういらないね」とはならないのもまだ事実であったり。

なんだかんだ言って、「(スマートフォンより)大きいディスプレイ」「キーボード」「インタフェース」を備えているクラムシェルスタイルのノートPCがあると、「ディスプレイに表示された文字や画像や動画が見やすくて楽」「(使い慣れたら)長文の入力が楽」「仕事の場面ではまだまだ利用する機会が多いUSBメモリなどが本体にあると楽」となるのは真実だったりします。

「はっはっは。私たち学生は宿題(もしくはレポート)をスマートフォンだけでやれちゃいますので心配ご無用」と今は思っていても、卒論レベルのボリューム(つまりお仕事で求められる使い方)となるとやはり「それなりのサイズのディスプレイ」「それなりのサイズのキーボード」「それなりの種類のインタフェース」があると格段に作業は「楽!」ですね。

「PCがあるといいっていうのは私も理解しているんですよねえええ」

ならばこの機会にぜひ1台。

「でも先立つものがなかなか。先日新しいスマートフォン買っちゃったし」

んんんんんー、そうですかあああ。

「そういえば、ちょっとネットで見つけたんですけれど、最近のノートPCってスマートフォンより安く買えるとか」

【ここから本編】MUGA ストイックPCとは何ぞや

そう。最近、“みんなが欲しがるスマートフォン”(もしくは“みんなに自慢したくなるスマートフォン”)の価格が軒並み「10万円超」となっている一方で(ただし各種割引を反映した“実質価格”となるとまた別ですが)、一部のPCベンダーには「格安製品」なるものが存在します。

このジャンルでしばしば話題になるのがドン・キホーテで扱うノートPC「MUGA ストイックPC」シリーズ。2017年11月にシリーズ最初のモデル「MUGA ストイックPC」を価格19,800円で投入。以降、代を重ねて2023年12月にリリースした「MUGA ストイック PC5」が現時点における最新モデルとなります。

  • その後ろ姿はシンプルでびゅーてぃほ

  • 14.1型ディスプレイはスマートフォンと比べて大きいし広い。そして、意外と明瞭で見やすい

MUGA ストイック PC5は解像度1,920×1,080ドットの14.1型ディスプレイを採用してOSはWindows 11 Homeを導入、キーボードはアイソレーションタイプ、キーピッチは実測で19.0mm、キートップサイズは同じく16.5mm、キーストロークは1.5mm。タッチパッドサイズは125×78mmを確保。

そして、本体サイズは幅323.4×奥行き219.9×厚さ19.9mmで重さが約1,460g。14型ディスプレイを搭載する競合他社モデルの中では大きくて重い部類ですが、それでもキーボードとタッチパッドのサイズは十分で、厚さが20mmを切るのと天板の形状がフラットなこともあって、“出来のいい”薄型ノートPCという風情を醸しています。

  • キーピッチとストロークは十分確保したキーボード。タイプすると軽くて華奢でそれなりに“うるさい”けれど、ぐらついたりたわんだりすることはなかった

これで価格は発表時点で43,780円。エントリークラスのスマートフォン並みですね。Windows 11 Homeを導入して14型ディスプレイを採用するノートPC薄型ノートの最新モデルなら安くても10万円台後半となるところです。

お値段控えめの理由を考える

ただまあ、システム構成をチェックすれば、他者競合モデルと比べて3分の1程度の価格となるだけの理由はあります。そりゃそうだ。

なんといってもその最たる理由は載せているCPUでしょう。MUGA ストイック PC5のCPUは「Intel N100」。その登場は2023年第1四半期と「その時期に登場しているなら、格安PCに載せるCPUとしてはそれほど古くないんじゃないの」と思うかもしれませんが、アーキテクチャは開発コート名「Alder Lake-N」という、発表そのものは2023年第一四半期だけれど中身は「Alder LakeのEコアだけ抜き出して最新規格の命令に対応させたもの」という実質的には「もしかするとAtom?」なCPUといえます。なので、CPUのお値段も処理能力も控えめ。

  • 今やリモート会議やビデオチャットで必須アイテムとなったWebカメラも搭載。有効画素は2Mピクセル

  • レンズカバーも備えて当然

“お値段控えめ”を感じさせる仕様は他にも。システムメモリはLPDDR5-4800ながら容量は8GBとイマドキのノートPCとしては“控えめ”で、ストレージは容量256GBのSSDながら接続バス規格はSerial ATA/600とやはり“控えめ”。

ただ、その一方で無線インタフェースではIEEE 802.11ax/ac/b/g/nに準拠、Bluetooth 5.2に対応するなど最新の規格が利用できます。

  • 左側面にはHDMI出力にUSB Type-A、USB Type-C、ヘッドホンマイクコンボジャックを備える

  • 充電は左側面に用意した専用の丸型コネクタを利用する

  • 右側面にあるのはセキュリティーロックのみ

  • 左側面。本体の厚さは20mmを切る

  • ただ、ディスプレイ側ボディとキーボード側ボディの形状が“そろっていない”ので、数値以上に厚く見えてしまうのがもったいない(写真は右側面)

  • 正面

  • 背面

  • ディスプレイの最大開度は180度

ベンチマークで性能をチェックした

「安物の銭失い」を危惧する人にとって、一番気になるのはやはり「いろいろな意味でなにかと控えめなCPUの処理能力ってどれぐらいなの?」ですよね。そういうわけで、せっかくですからその典型的な例としてIntel N100を載せているMUGA ストイック PC5の処理能力を試してみましょう。

先ほども紹介したように、Intel N100が登場したのは2023年第一半期ですが、内部のアーキテクチャとしては2021年11月に登場した第12世代Coreプロセッサー(開発コード名はAlder Lake)の省電力コア(Efficient-core:Eコア)として開発された「Gracemont」の系譜になります。

Intel N100はCPUコアを4基組み込んでいます。このコアはマルチスレッドに対応していないためIntel N100として同時処理できるスレッドの数も4本までです。TDPは6W。グラフィックス処理にはCPU統合のIntel UHD Graphicを利用して、演算ユニットは24基で動作クロックは750MHz。

Intel N100を搭載したMUGA ストイック PC5の処理能力を検証するため、ベンチマークテストのPCMark 10、3DMark Time Spy、3DMark Night Raid、CrystalDiskMark 8.0.5 x64、そしてファイナルファンタジー XIV:黄金のレガシーを走らせてみました。

主な仕様 MUGA ストイック PC5
CPU Intel N100
メモリ 8GB(LPDDR5-4800)
ストレージ SSD(SATA3) 256GB
光学ドライブ なし
グラフィックス Intel UHD Graphics(CPU統合)
ディスプレイ 14.1型(1,920×1,080ドット)非光沢
ネットワーク IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax対応無線LAN、Bluetooth 5.2
サイズ / 重量 幅323.4×奥行き219.9×厚さ19.9mm/約1460g
OS Windows 11 Home 64bit
  • CPU-ZでIntel N100の仕様情報を確認する

ベンチマークテスト MUGA ストイック PC5
PCMark 10 3009
PCMark 10 Essential 5920
PCMark 10 Productivity 5123
PCMark 10 Digital Content Creation 2438
CrystalDiskMark 8.0.5 x64 Seq1M Q8T1 Read 539.44
CrystalDiskMark 8.0.5 x64 Seq1M Q8T1 Write 464.81
3DMark Time Spy 377
3DMark Night Raid 4721
FFXIV:黄金のレガシー 標準品質(ノートPC) 1664

10万円~20万円クラスの、Core Ultra系CPUを搭載した最新モデルやCore i系CPUを搭載した“近年レビュー記事が掲載された通常価格PC”ベンチマークテストのスコアと比べたら格段の差となってしまいますが、例えば「Celeron N4020を載せた2023年夏ごろの格安2-in-1 PC」や「2020年の初頭に登場したCore m3-8100Y搭載超小型PC」のベンチマークテストスコアは十分に上回っています。

Webブラウジングや解像度を抑えたストリーミングコンテンツの利用、テキストをメインとしたドキュメントの作成ならストレスなく使えるでしょう(立ち上げるアプリの本数は抑えたほうがいいですが。まさにストイックに使うPCですなっ)。

実作業は意外とこなせる。最小限の出費で済ませたい人に

「“ストレスなく使えるでしょう”とのことですが実際どうでしたか?」とは、この原稿を受け取った編集氏の第一声です。「ベンチマークテストのスコアだけじゃ、そのあたりのところがよくわからないんですよねー」。ああー、たしかにたしかに。

格安ノートPCでまずストレスと感じるのって、キーボードの打ち心地ですね。キートップを押し込んだ時にぐらついていたりカチャカチャとうるさかったりすると“いらっ”となります。MUGA ストイック PC5は、ちょっと軽めなタッチですが、これまでの格安ノートPCと比べると格段にタイプしやすく、そして静かになりました。何よりキーがぐらつかないのはいいですね。

格安PCというとどうしても「価格とトレードオフで我慢させられる処理能力」という印象があります。従来の格安ノートPCがシステムメモリ4GBのストレージがeMMCで、ビジネス用アプリケーションを起動したり大きめの画像ファイル(最近はスマートフォンの撮影画像でさえデカい)を保存しようとすると「んんんんんん!」と待たされますが、MUGA ストイック PC5なら「んんー」ぐらいですむので、許容範囲かな、と。

なにげに不安なのが2023年生まれなのに中身は前世代のAtomだったりするCPUの処理能力です。ベンチマークテストのスコア的には「Core m3-8100Y搭載超小型PCを十分に上回っています」とは説明したものの、Core m3-8100Y自体が微妙ですからね。

……と不安を感じながら実際にストリーミングコンテンツを利用してみると、十分に速いネットワークが利用できる環境なら、フルHDはもちろんのこと、4K動画も問題なく視聴できます。このあたりはWi-Fi6をサポートしているおかげでしょうか。

画像の編集はどうでしょう。非力なPCならPhotoshop Expressをどうぞ、というのがアドビシステムズの主張ですが、実際に使ってみてもMUGA ストイック PC5でレタッチ作業も待たされることなくできてしまいました(ファイルの読み書き時間と重い処理を伴うフィルタ処理時間を許容できるならPhotoshop 2024も使えないこともない)。

ビジネスや学業におけるドキュメント作成作業はどうでしょう。Microsoft 365も高速なネットワークが確保できれば、画像を差し込んだdocxドキュメントの作成や校正モードでの閲覧やxlsxファイルの編集、pptxファイルの作成など、こちらも一通りのビジネスワークが可能でした。

というわけで、クラウド対応アプリケーションで軽量なファイルを扱うのであれば、ビジネスワークも一通りのことはストレスをためることなくできてしまそうです。

それはそれとして、「あと数万円出してCore 3 100Uを載せたモデルを買ったほうが幸せなんじゃない」という声も少なくありませんし、それはそれで適切な意見とも思うのです。

一方で「その数万円を出すのが果てしなく難しいのですよっ!」という心の叫びも身をもって知る私としましては、使い方次第でスマートフォンより作業が楽になるMUGA ストイック PC5のような格安Windows PCの存在はそれなりに必要性がありますよね、とつぶやいてみたくなります。