ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみがパーソナリティを務めるinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(毎週水曜日18:40~18:55)。ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみが、ニューヨークZ世代の若者たちと一緒に、日本も含め激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。
7月31日(水)のテーマは「ネットミーム氾濫でカマラ人気急上昇! トランプを倒せるか? アメリカZ世代激論」。「NY Future Lab」に所属するアメリカZ世代が、新大統領候補カマラ・ハリスについて語り、トランプ氏との勝算について考えました。
◆カマラ・ハリスの登場にアメリカの若者の反応は?
ジョー・バイデン大統領が大統領選から撤退すると表明し、民主党のカマラ・ハリスが新たな大統領候補になって10日が経ちました。猛スピードで有名政治家からの支持を取り付け、正式な候補者として指名されるために必要な選挙人も確保しました。
若者たちからの支持が薄かったバイデン大統領でしたが、ハリス氏の登場をどう受け止めているのでしょうか? アメリカZ世代のラボメンバーから本音を聞きました。
メアリー:これまでは4年前と同じ候補者で、しかも高齢者だっていうことがすごく嫌だったんだよね。だから、バイデンが辞退してくれたおかげで肩の荷が降りた気がする。
これで新たな希望が生まれたし、選挙がもっとエキサイティングに感じられるようになった。多くの人が今、同じように感じていると思うよ。
ミクア:カマラはいい選択肢だと思うよ。彼女が完璧な候補だと言っているわけでないけれど、正直、彼女が大統領になってほしいと思う。今、彼女の人気が非常に高まっているように感じるしね。
今まで副大統領って、具体的に何をするのかよくわからなかった。いつも大統領ばかり目立っているからね。だから、以前はカマラについてどう感じていいかわからなかったけれど、今回大統領選に出馬したことで、みんなの関心が高まっている。私は以前よりずっと希望を感じるな。
ハリス氏の登場によって、若者たちに希望が生まれ、選挙がエキサイティングなものになりました。これまでバイデンの周りにはなかった興奮が、今急激に彼女の周りに生まれ、まるで磁石のように若者を惹きつけています。
ハリス氏は出馬表面してからわずか24時間で120億円超(日本円換算)もの多額の寄付を集めたことも大きな話題となりました。Z世代専門家のシェリーは「ほとんどが10ドルや20ドルといった“草の根募金”でした」と補足します。
◆デジタルネイティブ世代がハリス氏を“ミーム”で応援
飛躍的に注目が集まるハリス氏ですが、オバマ夫妻をはじめ多くのビッグネームが彼女を推薦をしていることも大きいです。スーパースターのビヨンセが、自らの楽曲の使用を許可することで支持を示したり、アリアナ・グランデ、チャーリーXCXなど、若い世代に絶大な人気を誇るアーティストたちが次々に支持を表明しています。
一方で、若者たちを中心にソーシャルメディアユーザーではハリス氏の「ネットミーム」(インターネットを通じて人から人へ広がっていく文化や行動)があふれ、大きな話題になっています。どんなミームなのか、ラボメンバーに説明してもらいましょう。
メアリー:カマラはお母さんからいつも「あなたは自分がココナッツの木から生まれてきたとでも思っているの?」と言われていたらしいよ。どういう意味かというと、「あなたは先人たちが作った世界のなかで生きているんだよ。それを忘れずに生きなさい」っていうことらしい。
ミクア:そうそう。それで今、カマラがココナッツのことを話しているビデオクリップに、いろんな曲に乗せてリミックスしているんだ。ドレイクの曲とか、ビヨンセの曲とかね。本当に面白いよ。
ココナッツの話の意味って「あなたがここにいるのは、これまで生きてきたすべて人のおかげ。そして、あなたがこの世界に生まれてきたことには必ず意味がある。それを理解しなきゃいけない」ということだと私は思うんだ。だからココナッツはすごくポジティブなメッセージなんだよ。
しかも、それって彼女のスローガンである「決して過去には戻らない」にも共通するんだよね。それに比べて、トランプのスローガンは真逆だよね。「アメリカを過去に戻すことで素晴らしくする」というものだけど、過去のアメリカを素晴らしくないと思っている人もたくさんいる。私たちは前に進むしかないんだよ。
トランプ氏が挙げる“過去のアメリカ”とは、女性やマイノリティに、白人男性と平等な権利がなかった時代のアメリカです。そこには決して戻らず、歴史を理解して、しっかり前を向いて生きていこうというメッセージを、若者たちはハリス氏のココナッツの話から受け取っています。「これまでポジティブな希望に飢えていた若者たちは、カマラの笑顔とココナッツからその匂いを敏感にかぎとっているのだと思います」とシェリーは説明します。
◆ハリス氏の勝利は決して容易ではない
精力的かつポジティブに発信することで、若者たちの支持をつかんだカマラ・ハリス。無理をして作られたものではなく、ありのままの彼女そのものを感じられたことが若者たちの信頼を得る大事なポイントだったと考えられます。
最新の世論調査では、18歳から34歳でバイデン対トランプではバイデンが6ポイントのリードだったのが、ハリス対トランプではハリス氏が20ポイントもリードしています。一方で、それだけではトランプ氏を倒せない、という慎重な意見もあります。
ヒカル:希望があると言っていたけど、僕はまだ完全には確信が持てないんだ。なぜって、僕たちはまだカマラの政策についてよく知らないからね。これから彼女は、バイデンが無駄にした時間を取り戻すために、大急ぎで行動しなければならない。
彼女には「初の女性大統領」「初のアジア系」「黒人」といった、たくさんの肩書きがあるよね。でも、こうした肩書きが、彼女をこの選挙でどれぐらい助けてくれるかは、わからないと思うんだ。
メアリー:むしろ、そういう肩書きが彼女にとって邪魔になることが多いと思う。この国はいまだに人種差別と女性蔑視の国だからね。でも、だからすごいことだと思うよ。
ラボメンバーによる「アメリカは人種差別と女性蔑視の国」という発言。ほぼ半数が非白人であるZ世代は、こうした差別の存在を肌で感じ、それを変えたいと願っていますが、まだまだ激しい抵抗があることも知っています。それを乗り越えてハリス氏が勝てば、アメリカは大きく変わる。Z世代がハリス氏を支持する理由はここにもあります。
ハリス氏の勝利が簡単ではないことは、人種差別や女性蔑視の発言をしばしばするトランプ氏が強い支持を受けていることからも予測できます。「カマラがZ世代の票を得なければ勝てないこともわかっています。そのためにはどんな課題があるのでしょうか」とシェリーはコメントし、話題を締めくくりました。
<番組概要>
番組名:NY Future Lab
放送日時:毎週水曜日18:40~18:55放送
出演:シェリーめぐみ
番組Webサイト: https://www.interfm.co.jp/nyfutureweb
特設サイト:https://ny-future-lab.com/