日本大学藝術学部・映画学科に在籍中の宮川彰太郎氏が、授業の課題で制作した1つの企画書を原案とした映画『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』。宮川氏が高校3年生時に母校の不祥事を目の当たりにしたことをきっかけに、子どもが大人に対抗するヒヤヒヤ感や何かを成し遂げようとする熱量を詰め込んだ企画書がプロデューサーたちの心を動かした。気鋭のキャスト・スタッフが集結して製作され、きょう9日に劇場公開を迎えた。

そんな今作で、映画初出演で初主演を務めるのは、アイドルグループ・櫻坂46の藤吉夏鈴。憧れの作家・緑町このはが在籍する高校に入学するも、ひょんなことから新聞部に潜入することになる女子高生・所結衣を魅力たっぷりに演じている。今回のインタビューでは、初めてづくしの映画出演についてや作品、演じたキャラクターについて聞いたほか、自身が活動するうえで大事にしていることを明かしてくれた。

  • 櫻坂46・藤吉夏鈴 撮影:島本絵梨佳

映画初出演で初主演、決定の瞬間は「ワクワクが大きかった」

――今作で映画初出演にして初主演を務めましたが、お話を聞いたときには率直にどのように感じられましたか?

グループの外に出て何か新しいことを経験できるということも嬉しかったです。早く監督やキャストの皆さんと会ってお芝居してみたい! というワクワクが大きかったです。不安よりも楽しみの方が勝っていました。ただ、撮影中は現場についていくのに必死というか……無我夢中にがんばっていました。

――初の映画出演でしたが、撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?

私は、まだお芝居をたくさん経験しているわけではないので、現場の違いとかがあまり分からなくて……ドラマと映画で撮影現場の違いもあまり感じることはできなかったです。特に今回は先ほどもお話したようについていくのに精一杯だったので、現場の雰囲気を感じられないぐらい必死でした。カメラの前に立って、監督と映像を確認して、そこから直して、またカメラの前に立ってということを常に繰り返していました。

――監督と密にコミュニケーションを取って撮影に挑んでいたんですね。監督からはどういった言葉をかけてもらいましたか?

監督から言われた言葉で印象に残っているのは、「人って物事を伝えたいときや、自分の好きなことを話しているときには、目に光が多くなる」ということ。私はお芝居をしているときにあまり目に光が入ってきていなかったんですが、相手に本気で伝えようという気持ちだけで目が全然違うふうに映っていて、それが印象的でした。これは目に力を入れるとかではなく、意識の問題だと気づきました。完成した作品を見てもそう感じましたし、演じていて新しい発見があって、おもしろかったです。

“トロッ子”所結衣は「昔の私にそっくり」

――今作の脚本を読んでみて、どんな印象を受けましたか?

とにかく、まぶしかったです(笑)。学生特有の感情が詰まっていて、もう今は味わうことのできないような感情を持っている子たちがいっぱいいたので、キラキラしていて胸が痛かったです(笑)。

――まさに青春といったシーンも多くありました。藤吉さんが演じたトロッ子こと所結衣というキャラクターについては、どんな印象を持たれましたか?

私が演じさせていただいた所結衣という役は、ピュアで愛らしくて人を引きつけるパワーがある子。好きなことに対してとても素直で、ときに間違ったこともしてしまうんですが、その行動さえもピュアで、好きすぎるが故の間違え方なんです。そういった部分もとても愛おしく感じました。

――藤吉さんと似ている部分、また違った部分はどこかありますか?

結衣ちゃんは、昔の私にそっくりです。自分の信じているものを真っすぐに見ていて、何も余計なことは考えずに純粋に物事を見ているところが特に。逆に今の私とは似ていないと思います。結衣ちゃんは世話を焼きたくなるというか、見守りたくなる愛らしい部分は、今の自分にはない要素なのかなと思うので、うらやましいです(笑)。

高石あかり・久間田琳加ら同世代キャストから刺激も

――たしかに結衣は劇中でも新聞部の先輩たちにすぐ馴染んでいました。今作は高石あかり(※高ははしごだか)さんや、久間田琳加さんなど同世代のキャストが多く出演されています。

高石さんと久間田さんは堂々とされていてとても男気がある方々でした。女優さんとして、たくさんいろんなことを見て聞いて経験して、そうなったんだろうなと思うので、私もいろんなことを早く経験したいなと刺激を受けました。2人とも本当に肝が据わっているので、カメラの前に立っているときもそうじゃないときも常に堂々としていらっしゃって、とてもかっこよかったです。ただ、私が撮影に必死だったので、あまりお話ができなくて……今回、座長なんですが、私はお芝居の経験が浅いので、周りを意識できないくらい自分のことで精一杯でした。

――無我夢中に走り抜けた今作の撮影を通して、いちばん成長できた部分はどこでしょうか?

監督からセリフを話すときの目の動かし方や声のトーン、間とかを指示していただいて、直していただきました。今までのグループ活動では“自由に”と言われてきたタイプ。ここのセリフを言うときに最後目線を外すとか、自分の中にある表現ではないものを表現する難しさを身にもって知ることができたのが大きな経験になったと思います。

――結衣は新聞部の部長・かさねと出会うことで、人生に大きな影響があったと思います。藤吉さんの人生に影響を及ぼした出来事はありますか?

すごく刺激的だったことはあります。欅坂46から櫻坂46になった当時、櫻坂46としての1st、2ndシングルではカップリング曲でセンターをやらせていただいたのですが、3rdシングルでBACKS(フォーメーション3列目に位置するメンバー)になったこと。そのときは苦しかったですけど、それを経験できたからこその感情や、その時に出会った感情もたくさんあるので、今となってはいい経験です。刺激的で自分が変わるきっかけになったタイミングだったなと思います。

――そういった経験を経て、グループ活動だけでなく女優業にも挑戦している藤吉さんですが、活動をする上で大事にしていることはありますか?

好奇心です。私は好奇心がないと何もできないですし、楽しくなくなってしまうんです。好奇心がなくなったら、活動をやめようと思っているくらい大事にしています。

■藤吉夏鈴
2001年8月29日生まれ。大阪府出身。2018年に「坂道合同新規メンバー募集オーディション」に合格し、同年に欅坂46に加入。櫻坂46に改名後、初のシングル「Nobody's fault」収録曲「なぜ 恋をして来なかったんだろう?」で初センターを務める。テレビ朝日系バラエティ番組『あざとくて何が悪いの?』内のあざと連ドラ第5弾「東京であざとく頑張って何が悪いの?〜上京ガールの成長日記〜」に出演、第6弾「あざといを知り尽くした私 I like you? like you」では主演を務めた。さらにWOWOW『アオハライド』やNHK『作りたい女と食べたい女 シーズン2』に出演するなど、女優としても活動の幅を広げている。初主演映画『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』が8月9日に公開。 ヘアメイク:渋谷絵里奈(SHIBUYA ERINA) スタイリスト:市野沢祐大(TEN10)