KDDIは8月2日、2025年3月期第1四半期の決算を発表した。同日に開催された決算説明会では代表取締役社長 兼 CEOの髙橋誠氏が決算の概要について説明にあたった。

  • 代表取締役社長 兼 CEOの髙橋誠氏

    決算説明会に登壇した代表取締役社長 兼 CEOの髙橋誠氏

通信ARPU収入は料金値下げの影響から脱した

第1四半期の連結業績は、売上高が前年同期比4.2%増の1兆3,891億円、営業利益は同じく3.9%増の2,770億円。当期利益は前年と変わらず1,769億円となった。

  • 第1四半期連結業績ハイライト

    第1四半期連結業績ハイライト

営業利益セグメント別にみると、MVNO収入+楽天ローミング収入が62億円の減益となったものの、通信ARPU収入が29億円増、金融エネルギー領域で46億円増、ビジネスセグメントで54億円増と成長を牽引している。通信ARPU収入は2023年3月期第1四半期(2022年4月~6月)の水準を回復しており、通信料金の値下げの影響から回復した格好。通期での二桁成長を想定しているビジネスセグメントについても11.2%の成長で順調なスタートとなっている。

  • 営業利益の増減要因

    営業利益の増減要因

  • 通信ARPU収入とビジネスセグメントの成長

    通信ARPU収入とビジネスセグメントの成長

5GはSub6基地局整備で通信品質向上とエリア展開を目指す

そして説明は同社の掲げるサテライトグロース戦略の各セグメントの進捗状況に移る。

事業の中心に位置する5Gの展開については、Sub6基地局数が業界1位の3.9万局となっていることを報告。Sub6の周波数帯を近接した2ブロック保有しているメリットをいかし、2周波数対応のMassie MIMOを導入するなど、効率的な通信品質向上とエリア展開を図っていくとした。

  • 5G/Sub6の現状

    5GはSub6の展開に注力

ユーザーの利用シーンに合わせたエリア展開としては、Starlinkを活用した「山小屋Wi-FI」、音楽フェスなどのイベント時の出張基地局、山上/海上でのサービス提供を行っていることを紹介した。

  • エリア展開のトピック

    エリア展開のトピック

生成AIに関しては、現在は大規模計算基盤の整備、LLM構築、ソリューション提供の3つの領域においてパートナーとの取り組みを推進中であるとのこと。

  • 生成AIについての取り組み

    生成AIについての取り組み

通信ARPUは順調に成長。付加価値サービスとのシナジー拡大を図る

パーソナルセグメントの詳細としては、成長基盤となるスマートフォン稼働数が順調に増加していること、マルチブランドでは解約率が上昇傾向にあるもののauの解約率は低水準を維持していることを紹介。

  • スマートフォン稼働数と解約率の推移

    スマートフォン稼働数と解約率の推移

ブランド別通信ARPUは、au/UQ mobileともに前年より増加。それぞれのサービスの中でも高単価のプランが高い比率を占めているという。UQ mobileからauへの移行も前年同期から倍増しており、通信ARPUは全体的に順調なようだ。

  • ブランド別通信ARPUとUQ mobileからauへの移行状況

    ブランド別通信ARPUとUQ mobileからauへの移行状況

なお、髙橋氏のプレゼンテーションでは触れられなかったが、補足資料には総合ARPUの推移が記載されていた。第1四半期の総合ARPUは、前年同期の5,120円から5,210円と若干の増加となっているものの、その増加分は付加価値に関わるもので、通信ARPU自体は3,930円で横ばいが続いている。質疑ではこの点にについての質問がいくつかあったが、前述のとおりUQ mobileからauへの移行が順調ということもあり、計画通りで順調という判断のようだ。

  • 総合ARPUの推移

    総合ARPUの推移

ARPU成長にあたっては、相対的に高ARPUであるauの構成比をどれだけ維持できるかが課題となる。現在はau稼働構成比の減少率は小さくなっているということだが、引き続きauへの移行を促すような施策も含め、au稼働数を増やす取り組みを行っていくという。現在はUQ mobileを経験したユーザーにauへ回帰させる施策も実施しているそうだが、全体としてユーザー1人あたりのデータトラフィックが増加している(au/UQ mobileとも)という状況があり、使い放題プランを持つauへの移行を促しているということもあるようだ。

こういった状況の中、パーソナルセグメントの恒常的な成長を目指し、付加価値サービスを拡充していく方針だ。中でも、通信と金融のサービスがセットになった「auマネ活プラン」は好調でこの7月に100万契約を突破。解約率の改善およびARPUの増加につながっているという。さらに金融サービスであるauじぶん銀行の利用者も増えており、銀行の基盤拡大にも貢献しているとした。

  • 付加価値サービスを拡充する方針

    付加価値サービスを拡充する方針。決済/金融サービスとのシナジーを期待する「auマネ活プラン」は100万契約を突破した

  • auじぶん銀行とのシナジー

    「auマネ活プラン」のシナジーにより、auじぶん銀行も着実に成長している

ビジネスセグメントは、IoT関連サービスやデータセンター、デジタルBPOといったグロース領域が順調に成長している状況。ローソンの買収も、すでにローソンの非上場化は完了しており、9月にスクイーズアウト完了となる見通しだ。

  • ビジネスセグメントのハイライト

    ビジネスセグメントのハイライト

  • ローソン買収も順調に進捗

    ローソン買収も順調に進捗

プレゼンテーションのあとの質疑応答では、パーソナルセグメントに関連して、前述のARPUに関するやりとりのほかに、楽天モバイルがユーザー数を増やしている状況をどう見ているかという質問もあった。この質問に回答した取締役執行役員常務 パーソナル事業本部長の竹澤浩氏は「ちょっと勢いが出てきているのも事実」としながらも、その中身について「ちょっと急増しすぎてはいないか」とし、KDDIでは端末/エリアカバー/ネットワーク品質などを差別化要素として対抗し、純増を積み上げていく方針を示した。

  • この日の発表内容のまとめ

    この日の発表内容のまとめ