東京・日本橋の日本橋高島屋で、人気ミニチュア写真家・田中達也さんの企画展「田中達也展 みたてのくみたて MINIATURE LIFE MITATE MIND」が始まりました。ミニチュアの視点で日常にある物を別の物に“見立てる”という作風で、2011年から毎日Instagramで作品を発表し、現在のフォロワー数は約386万人。2017年に手がけたNHKの朝ドラ「ひよっこ」のタイトルバックを、「あ、あのオープニングの!」と懐かしく思い出す人も多いのではないでしょうか。
今年3月に韓国・ソウルで開催され総動員数約19万を記録した展覧会の、日本初上陸となる本展。ワールドワイドな人気を博す田中さんの頭の中の“見立てのアイディアの組み立て方”を、「HOME」「FORM」「COLOR」「WORLD」など7つのキーワードに分解し、そのアイディア創出のカギを解き明かしています。
田中さんがミニチュアを使った作風を選んだのは、「趣味として写真を撮り始めていたところ、被写体が欲しくなり、同じく趣味で集めていたミニチュア人形を被写体として使い始めた」のがきっかけだったそう。Instagramに投稿した作品への「いいね」の数やリアクションから、共感を得られる作品というものを意識して作っていく中で、現在の“見立て”という作風につながっていったといいます。アイデアの源はコンビニやスーパー、一般的な日用品がそろっている場所やモノから得ているのだそう。
“見立て”の面白さは、身近なものを別のものに変換することによって面白みが生まれるところ。たとえば、指輪をお風呂に見立てたり(《混浴指輪》)、ハンガーの曲線部分を波に見立ててサーファーを表現したり(《この波にかける》)。パソコンのキーボードや文房具、指輪やつまようじ、メガネに洋服など、ありとあらゆる身近なアイテムを駆使した作品は、「この日用品を、こんな風に見立てるんだ!?」という着眼点への驚き、人形たちのポーズや身なりのリアリティへの共感、さらに「アイスることを誓います」「今日も1日ガムばろう」といったダジャレ風タイトルから溢れるユーモアもたっぷり詰まって、いつまでも眺めていたい中毒性を放ちます。さらには写真だけでなく、その実物の作品も展示されているので、「写真に写っていない角度はこうなっているのか」と、“裏設定”を発見する楽しみも。
ちなみにユーモラスな作品タイトルは、撮り終わった後に考えているそうで、「ダジャレと言われることもありますが、自分では“言葉の見立て”と捉えています。これは日本人にとって馴染み深いものであり、作品をより印象深く覚えてもらうための手法でもあります」と田中さん。「HOME」という身近なテーマから始まり、「WORLD」という広い世界につながっていく展示構成は、知っているものを使って知っている何かに表現する“見立て”という手法は、世界に共通するものだから。作品は人間の普遍的なものを表現しているので、世代や国境を超えて楽しんでほしいといいます。
「若い方も年配の方もリアクションに年齢の差がなく、反応がみな同じなのが楽しい」と、展覧会ではこっそり“お客さんウォッチング”もしているという田中さん。フォトスポットになっている大型作品では、“見立ての世界”に入り込むように体感できます。「全作品撮影可能なので、見立ての発想に思いを巡らせながら、ミニチュア写真家になったつもりで、子どもから大人までたくさんの方々に作品鑑賞を楽しんでいただき、『日常を違う視点で見て楽しくなるという発想』を持ち帰ってもらえれば」と話していました。
日本初公開となるミニチュア作品約160点が集結した「みたてのくみたて」展は、8月28日まで、日本橋の日本橋高島屋で開催しています。
■information
「田中達也展 みたてのくみたて MINIATURE LIFE MITATE MIND」
会場:日本橋髙島屋S.C.本館 8階ホール
期間:8月1日~8月28日(10:30~19:00※最終日は17時半まで)/21日は休業
料金:1,200円/大・高生1,000円/中学生以下、および障がい者手帳提示の方および付添者1名まで無料