「パフォーマンス・エンスージアスト」のためのスポーツタイヤ|グッドイヤーの新製品「EAGLE F1 ASYMMETRIC 6」

ターゲットドライバーは”パフォーマンス・エンスージアスト”というスポーツタイヤの新製品「EAGLE F1 ASYMMETRIC (イーグル エフワン アシンメトリック)6」がグッドイヤーからこの春、登場した。

【画像】「EAGLE F1 ASYMMETRIC (イーグル エフワン アシンメトリック)6」を様々なシチュエーションで試してみた(写真9点)

このタイヤはイーグルF1アシメトリック5の進化版だ。イーグルF1はグッドイヤーのスポーツタイヤの一連の製品を示し、4モデルが展開されている。快適さとスポーツ性能をバランスさせたパフォーマンスタイヤの「SPORT」や今回ご紹介する”ウルトラ”ハイパフォーマンスタイヤの「ASYMMRTRIC6」のほか、さらにパフォーマンスを上回る”ウルトラ×ウルトラ”ハイパフォーマンスタイヤの「SUPER SPORT」、グッドイヤー最強のグリップを誇るサーキット走行向き最強ハイグリップタイヤの「EAGLE RS SPORT S-SPEC」がある。参考までにSUVタイヤのシリーズのなかにもハイパフォーマンスモデルの「ASYMMETRIC3」がラインナップされている。

アシンメトリック6はグッドイヤーのスポーツタイヤ群の中でもスポーツ性が強く、しかし超スポーツ系タイヤというわけではない。一般道でも快適でスポーツ走行も可能な幅広いスポーツタイヤ派のユーザーに向いたプレミアムタイヤだ。ハイパフォーマンスカーに求められる運動性能や快適性、安全性を高い次元でバランスさせながら、新製品では従来製品を凌ぐドライ性能を実現しているという。

新製品の特徴として挙げられた4つの特徴はドライ性能、ウェット性能、そして低燃費性能に貢献する静粛性だった。非対称パターンを採用するアシンメトリック6のトレッド面が初見から安心感を抱くデザインだったのは日常のドライブをより重視したいと思う筆者の感想だ。ほどほどに溝があり、排水性に貢献する縦溝も太く、そこにまんべんなく横溝も入っているのだ。一方でショルダーのブロックも広く、接地面の多さからグリップ力などスポーツ性能の高さも期待させる。果たして、心理的なバランスがいい。もちろん見た目だけではないことは言うまでもない。

ドライ路面の走行性能はグッドイヤーの「Dry Contact Plus Technology(ドライコンタクトプラステクノロジー)」を採用。タイヤのプロファイル形状、サイド剛性、トレッド剛性、コンパウンドの堅さ、それらを上手くバランスさせドライ性能を最大限に発揮させるような接地面積、形状を実現している。走行中のシチュエーションのなかでタイヤは走る、曲がる、停まるを繰り返しているわけで、その度に変化/変動する接地面の負荷/形状を常に最適にし、性能を発揮。ドライブレーキ性能は従来製品比で4%向上したという。

ウェット性能「Wet Braking Pro Technology(ウェット ブレーキング プロ テクノロジー)を採用。その特徴は新樹脂を配合したコンパウンドの採用だ。トレッドゴムはしなやかになり、トレッド部分が路面の凹凸に食い込みやすくより追従しやすくなり、ウェット性能が向上している。従来製品との比較ではウェットブレーキは3%向上したそうだ。ちなみに、トレッド部が柔らかくなると聞くとハンドリングにはマイナスなのではないかと一瞬、頭をよぎったのだが、前述のドライ コンタクト プラス テクノロジーとの相乗効果で共に性能を高められているという。

静粛性はパターンノイズの低減が大きい。パターンノイズはセンターリブ部の横溝を従来品より細かくすることで共鳴音を減らし、また、ショルダー部にチャンファーと呼ばれる面取りを施すことで接地面とのたたき音を緩和。従来品に対し25%低減しているそうで、ここにはグッドイヤーの「Quiet Technology(クワイエットテクノロジー)」が採用されている。溝やサイプはウェット性能とのバランスも考慮されなければならず、新製品では溝の数や幅を狭めるなどの調整(計算された不均一な間隔)によってパターンノイズが軽減されている。

低燃費性には「Fuel Saving Technology(フューエル セービング テクノロジー)」を採用。これはタイヤの軽量化と新樹脂配合のコンパウンド+空気抵抗を減らす新たなサイドウォールのラウンド形状によって転がり抵抗を低減させるというものだ。

試乗は様々なシチュエーションで行った。ウェットブレーキはスバル レヴォーグで60km/hからのフルABSブレーキで新旧の制動距離を比較した。ABSフルブレーキの感触が想像よりもしなやかに安定感を保ちながら路面に食いつく感覚に”止めにいっている”感が得られ頼もしい。ちなみに計測器を使った制動距離は従来製品(3回計測の平均値)では15.82mだったのに対し新製品(2回計測の平均値)では15.31mだったのでマイナス51cmと、ほぼ3%の向上は確認できた。

ウェットコーナリングは低μハンドリング路を使いスカイライン400Rで旧タイヤを比較した。もっとも印象的だったのは大きめのS字コーナーの2つ目をややオーバースピード気味に入り、するとこの滑りやすさではフロントタイヤがススーッと外に逃げてしまうかと思いきや…、アンダーステアが出にくかったことだ。大きなカーブでアンダーステアをあえて作り比較をしたけれど結果は同じ。新製品はウェット路面でも横方向のグリップが多角保たれ、操舵感も抜けにくい。ちなみに先にハンドルを握った従来製品であっても決して性能が劣るという印象ではなく、むしろ車が400Rなだけにオーバーステアになった際のコントロールが面白いほど。

新製品のコントロール性の高さは先代譲りと言えそうだが、さらに応答性に優れドライバーが挙動の変化をわかりやすく、すると対応がしやすくなるから走りやすい。ESCの介入頻度も少なく、つまり安定性も高いと言えるだろう。

アバルト595という個性的なスポーツモデルで行ったドライ路面の100km/hの高速走行&ハンドリングでは、そもそもアバルト595のハンドリングがキビキビ系であり、そんな俊敏な動きを足下で支えられている安心感がある。また連続するタイトコーナーではタイヤの角の角までまるく滑らかに使ってグリップし、グリグリと曲がるような感覚が頼もしく、楽しかった。これはコーナリングが得意なアバルト595を何度もドライブした経験のある筆者としてアシンメトリック6を装着することで得られるドライブフィールならではではないかと思えた。

試乗の仕上げは一般道だ。ここで想定外だったのは直線よりもコーナーのフィーリングの良さだった。一般道レベルながらコーナリングはタイヤのトレッド面全体で路面を捉え、ラインをトレースしていく。しなやかなタッチでカッチリとグリップする感覚がいい。左右にハンドルを操作しながら走るワインディングの滑らかな質感もいい。ドライブフィールにカッチリとした印象のあるA200dにアシンメトリック6を装着したことで、スポーツ性を高めながら快適さを車とタイヤで補い合っているという感想を抱いた。

また比較的、路面のきれいなところではフラットな静粛さを、路面の所々にひび割れや未補修、補修箇所もあるような路面では、ザラザラ、ゴロゴロとした感触を手応えや足下の堅さで感じるたが、そのわりに静かで乗り心地もいい。ただロードノイズのような振動音はそれなりにある。が、個人的にはスポーツタイヤとしては気にならないレベルだ。

ちなみに今回試乗ができなかった高速道路については、グッドイヤーの方によれば「バタバタやロール、ピッチングが少なく目線の動きが少ないドライブをサポートできるだろう」とのことだ。

近年、車の性能は進化を続け、大型/重量級のモデルも増えている。衝突安全性、各種サポートデバイス、室内空間を広くとか、どんどん大きく重くなっている。ハイパフォーマンスカーのアジリティも向上している。電動車はハンドリング性能にこだわるモーター駆動のハンドリング、乗り心地を実現している。そんな車たちの進化も少し先まで見据えてパフォーマンスを足下から高め開発を行ってきたのがアシンメトリック6だ。

愛車の進化や熟成を求め、優れた性能や品質などのより高いパフォーマンスをサーキットのようなハイスピードの世界よりも日常に目線を向けて選ぶシューズとしてはバランスも満足度も高いタイヤと言えそうだ。

文:飯田裕子 写真:尾形和美

Words: Yuko IIDA Photography: Kazumi OGATA