放送作家・脚本家の小山薫堂とフリーアナウンサーの宇賀なつみがパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「日本郵便 SUNDAY’S POST」(毎週日曜15:00~15:50)。7月28日(日)の放送は、当番組の「サンポス」マイクが北海道の東川町(ひがしかわちょう)を訪れた模様をお届けしました。
◆「サンポス」マイクが“音”で伝える北海道・東川町の魅力
今回、「SUNDAY’S POST(サンポス)」のマイクが訪れたのは、高い空と真っ直ぐ続く長い道、小鳥のさえずりと山から吹いてくる風が心地よい北海道・東川町。豊かな天然水を活かした米づくりが盛んで、日本全国でトップクラスの家具製造や“写真の町”としても知られています。
まず話を伺ったのは、北海道・東川町と東京・杉並区で2拠点生活をしている梶さん。東川町の日本郵便で勤務している梶さんは、1ヵ月のうち3週間ぐらいを東川町で過ごし、残りは東京の家で過ごしているそう。
東川町は、旭川空港から車でおよそ10~15分と好アクセスなこともあり、双方を行き来するにも「非常に便利なところだと思います」と実感を語ります。この町では、梶さん以外にも2拠点生活をしている人が多く、東川町の人口およそ8,500人(2020年時点)の約半分は移住者が占めています。「例えば、二拠点生活をしながら東京でも活躍して東川町でも活動されている写真家さんもいますし、大学の研究者や東京のIT企業の方で(東川町で)テレワークしている方など、たくさんいます」と梶さん。
比較的、移住者が多いという土地柄もあって、「よそ者感がないというか、皆さん、外のものを受け入れる度量のある方が多いです」と実感を語ります。
東川町に引っ越して1年3ヵ月が過ぎた現在、「町に出れば『梶さん』と声かけてくれる方もたくさんいて。そういうのが不思議と自然とできる町」と言います。
そんな東川町の一番の魅力を聞かれると、梶さんが即答したのは「お水」。というのは、ここの水は旭岳(あさひだけ)から長い年月をかけて流れ出てきた雪解け水とあって、梶さんは“自然からのおすそ分け”と称していました。
続いて、話を伺ったのは、東川町役場 適疎(てきそ)推進課の窪田昭仁(くぼた・あきひと)さん。この町の最大の特徴として「北海道一高い山・旭岳の麓にあるということ。それから地下水で生活をしているということと、文化の東川ということで古くから文化があり、農村としても栄えてきた町で、隣町の旭川とはかなり大きな違いがあります」と話します。
これまで、大雪山、家具、写真といった3つの文化を軸に町づくりをおこなってきたという東川町。その3つのなかでも一番歴史が浅いのが写真文化で、「“写真の町”を宣言してから今年で40年を迎えるんですけれども、写真文化を軸にした町づくりを東川町として進めてきました」と振り返ります。
人口は一時期6,000人台に減少したものの、長きにわたって取り組んできたことが実を結び、8,000人台にまで回復。人口が増えた要因として、写真文化も一役買っているそうです。
「写真って、やっぱり記録として残したいものにレンズを向けると思うので、レンズを向けたくなるような人であったり、モノを作ったり、さまざまな取り組みや町づくりを進めてきたことが評価されて、転入者が増えてきたのかなと考えています」と推察していました。
続いてサンポスマイクが訪れたのは、東川町に古くからある写真館「アイハラ」です。御年77歳の店主・粟飯原順二(あいはら・じゅんじ)さんは、この町の方々の家族写真を最も多く撮ってきたひとり。
父の代に創業して70年以上になる「アイハラ」を守り続けてきた粟飯原さんが家族写真のシャッター切るときに意識していることは「真剣にというか、家族がその後も円満に営んでほしいなあと思って……そういう気持ちは強くあるつもりです」と言います。
“写真の町”を宣言して今年で40年になる東川町には、現在18人ものプロカメラマンが住んでいます。そのうちの1人で、アウトドアガイドとしても活躍している大塚友記憲(おおつか・ゆきのり)さんにも話を伺いました。
千葉県野田市出身ながら、20歳の頃に“いろんな世界を見てみたい”と北海道に漠然とした憧れを持っていたという大塚さん。たまたま、宿の住み込みアルバイト募集を目にして、その宿で働き始めたのが移住のきっかけでした。
当初は長く居るつもりはまったくなかったという大塚さんでしたが、「大量の雪が降る山奥で生活しているうちに、出身の地元とはまったく違う環境に段々と惹かれるようになって。ここにしか生息していない動物を発見したり、雄大な景色を見ていくうちに、この土地から離れられなくなったっていう感じですね」と話します。
大塚さんいわく、新緑の時期や初夏も魅力的ではあるものの、「冬がやっぱり一番好きです。一番寒いときは、1月などは町なかでもマイナス20度まで気温が下がることもあるんですけど、そういうときだからこそ朝のダイヤモンドダストが町なかで普通に見られたり、あとはスキーもできる町なので山のほうまで行っていろいろなエリアで滑ったり。町なかから20~30分行けば自然環境豊かなところで思いきりアウトドアを満喫できるのが魅力的だと思っています」と自身の思うこの町の魅力を語ってくれました。
また、アウトドアガイドとしても活動している大塚さんに、東川町イチ押しのフォトジェニックな場所に案内していただくことに。やって来たのは、旭岳源水が湧いている場所で、「ここは年間を通じて水温が7度ぐらいのところなので、ちょっと触っただけでもひんやりと冷たくて、実際に飲んでみてもおいしいんですよ」と大塚さん。
水温が低いため、真夏の早朝などに来ると幻想的なもやがかかることがあるそうで、「朝、少し歩くだけでも非常に気持ちいいので、ここはおすすめの癒しスポットですね」と太鼓判を押していました。
次に話を聞いた東川町役場 写真の町課の吉里演子(よしざわ・ひろこ)さんも写真がきっかけとなって東川町に移住してきたひとり。そのきっかけとなったのは、2005年の高校生だった頃。東川町で開催している高校生の全国大会「写真甲子園」に出場したことでした。
「『写真甲子園』は、高校生を対象にした全国大会のことで、写真作品を応募していただいて、勝ち残った高校生たちが東川町を中心とした北海道の撮影地で撮影をして、高校生カメラマンの日本一を決める大会となっています」と解説。
また、写真の町として子どもたちに対する取り組みもおこなっており、2013年に「写真少年団」を設立し、町内在住の小学3年生から中学3年生までの子どもを対象に活動しています。
現在、所属する子どもたちは設立以来最多となる30人超えという盛況ぶりで、吉里さんはここで子どもたちへの指導役として関わっています。「写真少年団」に所属する小中学生の子どもたちに、自身が撮った自慢の写真を見せてもらうと、プロ顔負けの写真の数々に、思わず小山が「この写真はすごい! プロの動物カメラマンが撮ったような……」と舌を巻くと、宇賀も「小学生が撮ったものとは思えない」とビックリ。
最後に、東川町役場 適疎推進課の窪田さんに、東川町のこれからについて伺うと「東川町の町づくりの方向性として、先人から託された自然景観をしっかりと保全していくこと。そして、東川町の素晴らしい自然景観や文化、そして人といったものを、次の世代にバトンを渡せるような町づくりに取り組んでいく必要があると思っています」と話します。さらには、「うちの課が適疎推進課ということで、“適疎”という言葉通りの町づくりも今後進めていきたい」とも。
「適疎という言葉は、過疎でもなく、過密でもなく、ゆとりのある生活ができる町を目指していきたいという意味。仲間、時間、空間、自分らしく生きることのできるゆとりのある生活、そこも今後進めていきたい町づくりのひとつです」と力を込めます。
その言葉に、宇賀は「確かに一番大事なことかもしれませんね。どうしても両極端になっているっていうか、そこを目指していくという発想自体があって、ちゃんと進めているということが素晴らしいですね」と感心しきり。
小山も「ゆとりのある生活ができる町を目指しているっていうのは、さっきの子どもたちの話を聞いただけで、実現されている感じがしますよね。町おこしを一生懸命頑張って、町が賑やかになるだけではなく、そこに暮らしている人たちがすごく豊かな心を持って生活しているんだなというのが伝わってきました」と大きくうなずいていました。
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<番組概要>
番組名:日本郵便 SUNDAY’S POST
放送日時:毎週日曜 15:00~15:50
パーソナリティ:小山薫堂、宇賀なつみ
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/post/