モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。8月1日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「パリから始まった“オリンピックAIアジェンダ”」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
◆選手のトレーニングにAIを活用
あらゆる分野でAI(人工知能)が活用されるようになっているなか、スポーツも例外ではありません。現在開催中のパリオリンピックでも、アスリートのトレーニングやチームスポーツの戦術、競技の判定、そして、競技だけでなく運営や観戦体験にもAIが取り入れられています。
ユージ:今回のパリオリンピックは、AIが本格的に活用された大会になっていると伺いました。
塚越:そうなんです。例えばオーストラリアは、競泳で現在(2024年8月1日)までに金メダル4つ、銀メダル5つ、銅メダル1つを獲得しています。オーストラリアは、撮影するだけで泳ぎの速度や入水角度などがわかるカメラをプールサイドや水中に設置して、選手の情報を収集しているんです。選手1人当たり、合計1,000近いデータをAIが読み込んで泳ぎの分析に活用しています。
この分析結果をトレーニングに取り入れているということで実際、オーストラリアは2021年の東京オリンピック・競泳女子4×100mメドレーリレーで金メダルを獲得していますが、この4人のメンバーを提案したのは、なんとAIでした。
人間ではなくAIに分析させることが功を奏したとも言えるということで、すでにAIを使って将来の金メダリストの卵を発掘しようという動きもあるとのことです。
ユージ:オーストラリアの取り組みも、AIの進歩もすごいですね!
◆AIが人間の審判を補助 体操競技では「採点支援システム」を導入
ユージ:メダリストのトレーニングにAIが活用されるのが当たり前の時代になっているということですか?
塚越:そうなんですよね。一方、採点する側もAIの活用が始まっています。日本男子が金メダルを獲得した体操競技では、選手の動作や技をAIが判断する採点支援システムが導入されています。オリンピックの男女全10種目でAIの支援が入るのは初めてということです。
昨今は技が高速化・高難度化しているので、人間が公平で正確な評価をするのは非常に難しいということで、審判員の負担を減らす狙いもあります。「AI審判」は、人間の主観が入らないという意味では、非常に“公平”かなとも思いますよね。
ユージ:トップ選手の集まりですから、オリンピックで審判をするとなると相当なプレッシャーがあると思うので、審判の方の負担が減るのはいいことだと思います。
塚越:他にも重要なところだと、「選手へのオンラインでの誹謗中傷対策」ということで、IOC(国際オリンピック委員会)は、選手へのSNSでの誹謗中傷などを防ぐための監視AIを導入しています。
また、選手がオリンピックの規則などで疑問があるときに、すぐに質問できるAIチャットサービスも導入しています。さらに、AIがハイライト映像を自動生成して多言語で放送する技術などもあります。
一方パリでは、交通機関などに設置された監視カメラの映像をAI活用することでセキュリティを高めるということですが、プライバシーの問題で反発の声もあったりしています。いずれにしても、パリオリンピックではAIの利用が注目されています。
◆スポーツ界のAI普及によって「格差」が拡大する懸念も
吉田:AIがオリンピックの盛り上げに貢献する時代になってきた気がしますが、IOCは開催に先駆けて今年の4月に「オリンピックAIアジェンダ」というものを発表していましたね。
塚越:はい。簡単に言うと、スポーツ界最大のイベントであるオリンピックが、AIとの向き合い方を示した指針が「オリンピックAIアジェンダ」です。IOCはAIを使っていく上でいくつかの原則を示していて、“AIを安全に使いましょう”とか、”リスクに関する知識を共有しましょう”とかいろいろあります。なかでも重要なのが“AIの利点を平等にアクセスできるようにしましょう”という点です。
どういうことかというと、先ほどのオーストラリアのように、AIの活用は今後も増えていくと思います。そうなると、AIを使える国と、そうでない国で選手の格差が広がっていく可能性があるということです。
AIは、例えばデータ収集・分析などには非常にお金がかかるので、現状でも国ごと・競技ごとにかけられるお金の差はあります。そうした「格差」が広がっていく可能性があるというのが1つの課題でもあります。
あとは、指導者がAIに頼りすぎて「AIがこう示しているんだからこうなんだ!」となると、人間関係にヒビが入ったりします。なので、AIを利用しつつも最終的には“人間が選んだ”、つまり、人間が責任を負えるようにする必要があるかなと思います。
実際、オーストラリアでは、AIが提案してきた練習メニューをコーチが却下したりしています。なので実際は、柔軟な使い方が必要ということですね。審判などにはAIをどんどん導入すべきだと思いますが、やはり最後は“人間がいるんだ”ということで、選手にとっても観客にとっても、そういうところを大事にすることが重要かなと思います。
ユージ:そうですよね。オリンピックの感動って、選手の努力もありますが、そこまで築いてきたチームだったり、監督・コーチとの関係性が見え隠れしたり、努力が実った瞬間が見えたりして感動するわけじゃないですか!
塚越さん:最後にコーチとかとワーッとなってね!
ユージ:そうです! ハグし合う瞬間とかに全ての物語が伝わってくるので! その魅力はこれからも絶対に必要なので、“AIとの共存”というのが今後、すごく重要なポイントかもしれないですね。
塚越:そうですね。どこまでAIを使うのか? あくまでも補助で使うのか? というのは、この辺の取り組みはアジェンダにもありますが、これからさらに進んでいくのかなと思いますよね。
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/