ラズベリーの育て方

ラズベリーは、バラ科キイチゴ属に属する低木、およびその果実です。フランボワーズやキイチゴとも呼ばれ、多くの品種があります。ラズベリーは果実の色によってレッドラズベリー、ブラックラズベリー、パープルラズベリーに分けられます。

ラズベリーの栽培は16~17世紀ごろにイギリスで始まりました。栽培が比較的簡単で、樹高が低く、土質を選ばないため、家庭でも手軽に育てることができます。

ラズベリーの種類

ラズベリーは長い歴史の中で、さまざまな種類が品種改良で生み出されてきました。
実の色によって大きく3種類にわけられるのですが、その中でもさらに、一季なり性と二季なり性の2種類に分類できます。

一季なり性は、1年に1度だけ果実をつける品種。6月から7月に収穫シーズンを迎えます。
二季なり性は、1年に2回、6月から7月・7月から10月に果実をつける品種です。

一季なり性の品種

◯超大王

甘みが強く酸味も少なく生食もでき、ケーキなどとも相性抜群。

◯とげなしラズベリー・グレンモイ

トゲがなく、栽培や収穫がしやすい。しっかりとした風味と甘みがあり生食でもおいしい。アブラムシの抵抗性もある品種。

二季なり性

◯ジョイゴールド

大粒の黄色い果実で、甘くゼリー質で食感よく生食向きの品種。

◯リサ(R)オレンジピコ

オレンジ色の珍しいラズベリーで、甘く風味のよい果実。生食のほかジャムや冷凍果にも。

◯ジョンスクエアー(R)

トゲがなく、育てやすいレッドラズベリー。収穫期間も長い人気品種。

ラズベリーの栽培暦

まず、収穫の時期ですが、一季なりラズベリーは6月から7月にかけて収穫します。一方、二季なりラズベリーは6月から7月、そして7月から10月の2回にわたって収穫できます。

次に、植え付けの時期ですが、地域によって異なります。関東以北では2月から3月にかけて植え付けを行い、関東以南では9月から11月にかけて植え付けを行います。

施肥については、2月から3月に元肥を与え、その後、5月から6月と8月から9月にかけて追肥を行います。

最後に、剪定の時期ですが、これは1月から2月に行います。このように適切な時期に作業を行うことで、ラズベリーを健康に育て、おいしい果実を収穫することができます。

ラズベリーの植え付け

ラズベリーの植え付け方法について、プランターの場合と地植えの場合をそれぞれ解説していきます。基本的に考え方ややり方はあまり変わりませんが、気をつけるポイントをいくつか押さえておきましょう。

植え付け時期

ラズベリーは基本的に、気温が低く植物が休眠する時期に植え付けるのが適しています。具体的には、関東以北の寒冷地では2月から3月にかけて植え付けを行います。一方、関東以西の暖かい地域では、9月から11月に植え付けを行います。

暖かい地域では、根がしっかりと活着(根が土に定着すること)しやすいため、秋ごろでも植え付けが可能です。

プランターの場合

◯用意するもの

・苗
・鉢植え(6号~)
・野菜用培養土
・園芸用支柱
・ネット
・鉢底ネット
・鉢底石
・すのこなど、プランターの土台になるもの

◯やり方

1.鉢に、鉢底ネットを敷き、鉢底石を設置します。
2.培養土を8割くらいまで入れます。
3.鉢を揺らして土をならします。
4.植え付け穴を作り、苗を植え付けます。このとき軽く根の先端をほぐすと良いでしょう。
5.水やりをします。必要であれば、農薬も散布しましょう。
6.最後に支柱をたて、主枝を誘引しましょう。

◯注意点

プランターを置くときは、すのこやブロックなどの上に置き、通気性を確保しましょう。エアコンの室外機などの近くには置かないようにしてください。

地植えの場合

◯必要なもの

・苗
・堆肥や腐葉土
・石灰
・緩効性肥料
・園芸用支柱

◯やり方

1.植え付けの2週間前に土作りをします。1平方メートルあたり堆肥2kgと緩効性肥料50g、石灰100gを入れ、よくすき込みましょう。堆肥や肥料を入れた直後に植え付けをすると、根がダメになってしまうことがあるため、時間をおきましょう。
2.植え穴を掘って苗を植えつけます。直径40cm、深さ30cmの植え穴を作りましょう。
3.植え付けたら支柱を立て、主枝を誘引します。
4.枝の3分の1を切り戻し、水やりをします。

◯注意点

株元に敷きわらなどを敷いて、乾燥対策と保温、雨の跳ね返り対策を行うとよいでしょう。
ビニールマルチでも良いですが、高温になりすぎないよう、シルバーや透明のマルチを使いましょう。

ラズベリーの管理

ラズベリーは病害虫に強く、とても栽培しやすい作物です。
栽培管理も難しいことはなく、次に紹介する四つのポイントを押さえておけば十分でしょう。

1.水やりについて
2.支柱・誘引について
3.施肥について
4.植え替えについて

それぞれわかりやすく解説していきます。

水やり

ラズベリーは比較的乾燥に強い作物ですが、適切な水やりが必要です。地植えの場合は、晴れの日が続き自然の降雨がないときに水をやります。頻繁に水やりをする必要はなく、土が乾いてきたときに適度に水を与えれば十分です。

プランターで育てている場合は、表面の土が乾いたらたっぷりと水をやります。特に夏の乾燥しやすい時期には、1日2回水をやるようにしましょう。いずれの場合でも、朝と夕方の涼しい時間帯に水をやることが大切です。

支柱・誘引

ラズベリーは樹高1~1.5mまで成長します。
そのため、支柱は2mくらいのものを用意すると良いでしょう。
誘引する際は、麻ひもなどの柔らかい素材のひもを使うようにしてください。

施肥

◯鉢植えの場合
鉢植えのラズベリーは、葉の色をチェックしながら適切なタイミングで肥料を与えます。芽が出はじめる前の3月に、粒状の肥料を1株あたり約3グラム与えます。同様に、5月から6月と8月から9月にも、同じ量の肥料を与えます。

◯地植えの場合
地植えのラズベリーの場合も、施肥のタイミングはほぼ同じです。ただし、与える肥料の量には注意が必要です。芽が出はじめる前の3月に、1株あたり約50グラムの粒状の肥料を与えます。5月から6月と8月から9月には、1株あたり約25グラムの肥料を与えます。株が成長するにつれて、肥料の量を少しずつ増やすことが大切です。

植え替え

鉢植えで育てているラズベリーは、根が成長して鉢の中でぎゅうぎゅうになり、これ以上成長しなくなることがあります。このような状態になると、ラズベリーの植え替えが必要になります。目安として、2~3年に1回植え替えを行うと良いでしょう。

植え替えの時期は、植え付けと同じく、11月から2月の落葉期に行います。この時期は植物が休眠状態にあるため、植え替えのストレスが少なくて済みます。

植え替えの手順は次の通りです。まず、ラズベリーの株を鉢から掘り出し、根を整えます。特に、傷んでいる部分や黒ずんでいる根はカットして取り除きます。そして、一回り大きい鉢に植え替えます。

ラズベリーの剪定

ラズベリーの剪定は、一季なり性と二季なり性の特性を考慮して行います。剪定の際には、込み入った部分の枝や枯れた枝、極端に細い枝をカットするのが基本です。ただし、春に伸びた新しい枝は翌シーズンに実をつけるため、誤って切らないように注意が必要です。

一季なりの場合

一季なり性のラズベリーは、6月から7月に剪定を行います。収穫が終わった枝は、冬までに枯れてしまうため、夏の間に剪定を行います。収穫が終わった枝は地際で切り取ります。これにより、植物が新しい枝を育てるスペースができ、次のシーズンに健康な果実をつけることができます。

二季なりの場合

二季なり性のラズベリーは、12月から3月を目安に剪定を行います。秋の収穫が終わるまでは剪定しないようにします。秋に実がついた枝には再び花芽がつくため、これらの枝はカットしないようにします。これにより、次のシーズンにも同じ枝から実を収穫することができます。

ラズベリーの収穫

一季なり性のラズベリーは、毎年1回の収穫時期があります。この収穫時期は、6月から7月にかけてです。果実が赤く熟し、簡単に取れる状態になったら収穫のタイミングです。

二季なり性のラズベリーは、年に2回収穫することができます。最初の収穫時期は6月から7月、そして2回目の収穫時期は7月から10月にかけてです。二季なり性のラズベリーは、夏と秋の二度にわたって果実をつけるため、長期間にわたって収穫を楽しむことができます。

ラズベリーの増やし方

ラズベリーの増やし方には、挿し木と株分けの2種類があります。

挿し木

「緑枝挿し」と「根挿し」の2種類があります。
緑枝挿しは、ラズベリーの新しい枝をカットして、そのまま土に植えて発根を待つ方法です。適した時期は6月から7月です。この時期に新しい枝を切り取り、挿し穂を作ります。挿し穂には、葉を2枚から3枚残しておくことが重要です。

根挿しは、2月から3月の休眠期に行う方法です。ラズベリーの地下茎に伸びている太い根の一部を切り取り、それを土に埋めて発根を待ちます。この方法は、緑枝挿しよりも時間がかかりますが、より多くの株を増やすことができます。

株分け

ラズベリーの株分けは、シュートと呼ばれる若い枝が株の中心部からたくさん出てきたときに行います。シュートが十分に育っている場合、地下茎を切り取って新しい株として利用できます。まず、地下茎を根が付いたままカットし、鉢などに植え付けます。この方法で新しい株を増やすことができます。

株分けの適期は5月から6月です。この時期に行うことで、株が十分に根を張り、成長しやすくなります。ただし、幼木からは株分けできるようなシュートが生じないため、少なくとも2年以上育てた株から株分けを行うことが重要です。

ラズベリーにつく病害虫

ラズベリーは他の果樹と比較しても病害虫に強い作物です。しかし、完全にゼロというわけではありません。ハダニ、ケムシ、ハマキムシの幼虫、コガネムシが発生することがあるので、見つけ次第早めに対処しましょう。

また、発生しやすい病気では灰色かび病が挙げられます。この病気は特に湿度が高い時期に発生しやすいので、6月から7月下旬にかけて枝葉の整理を行い、通気性を良くすることで発生をかなり防ぐことができます。

ラズベリーは家庭菜園入門にもおすすめ

ラズベリーは病害虫に強く栽培管理も難しくないので、家庭菜園の入門にぴったりです。また地植えだけではなく、鉢植えでも十分大きく育てることができるので、ベランダ菜園にも向いています。

ラズベリー栽培で少し手間取るのは剪定ですが、難しく考えすぎず、混み合ったところや枯れた枝からカットしていって、慣れてきたら樹形などを考えて剪定すると良いでしょう。
本記事を参考にして、ラズベリー栽培に挑戦してみてくださいね。