自動車雑誌ドライバーが過去に取り上げた記事が今に蘇る「DRアーカイブズ」。前回に続き1989年5-5号の「VW コラード」を振り返る。
◇◇◇以下、当時原文ママ◇◇◇
■洗練された走りを実感
コラードの走りをフルに引き出すために、筑波サーキットにコースイン。初めの2、3ラップは軽く流したつもりだったが、タイムは1分16秒台となかなかに速い。というのも、例のGラーダーは低中回転域でも十分な過給効果を表わし、4速ホールドのまま走らせてもトルク感が充実しているからだ。さらに、アクセル・レスポンスはゴルフGTI 16V用のツインカムエンジンに迫るほど鋭い。
ハンドリングも素直。フロントヘビー感がなく、ステアリング操作のとおりにクルマが向きを変えてくれる。逆に、素直すぎてさらに攻めたときの限界が大したことないのでは……と心配したほどだ。
だが、予想は見事に外れた。全開アタックを開始しても、ちゃんとそれにこたえるだけの足を持っていることが確かめられた。タイトコーナーの入り口で一気にステアリングを切り込んでも、腰くだけを起こしたりしない。ノーズがコーナーのインをズバッと指し、ステアリングからもしっかりした手ごたえが伝わってくる。
185/55R15サイズのコンチネンタル・スポーツコンタクトは、剛性感とグリップ感のバランスがちょうどいい。コーナリング中のロール感も少なく、アクセルを踏み始めても、過大なアンダーステアは見せない。
ねらったラインを正確にたどりながらコーナーを立ち上がるあたりの感覚は、とてもハイパワーなFFとは思えない。足まわりのレイアウトがゴルフ系と同じだけあり、ベース車の完成度の高さが生かされている。しかも、インリフトによりホイールスピンが発生することはなく、160馬力のパワーがムダなく路面へ伝わる。
コーナーから脱出するときのエンジンフィーリングは、きわめて洗練されている。パワーの上昇は直線的。ある回転域から力強さがモリモリとわき起こる感じはないが、吹き上がりはスムーズそのもの。荒っぽさがなく、6000回転プラスまで回る。
コラードは、ドイツ流のスポーツカーとして仕上げられたクルマだ。イタリア流のいかにもそれらしい刺激はないが、性能的にはスポーツカーそのもの。日本流にいえば、スペシャルティスポーツ的性格だ。
■フォルクスワーゲン コラード(5速MT)主要諸元
【寸法mm・重量kg】全長:4048 全幅:1674 全高:1318 ホイールベース:2470 トレッド:前1435/後1428 車両重量:1115 乗車定員:4名
【エンジン・性能】総排気量:1781cc ボア×ストローク:81.0mm×86.4mm 圧縮比:8.0 最高出力:160ps/5600rpm 最大トルク:22.9kgm/4000rpm 燃料供給装置:インジェクション 燃料タンク容量:55L
【動力伝達装置】変速比:1速3.78/2速2.11/3速1.34/4速0.97/5速0.80/最終減速比3.45
【走行装置】ステアリング:ラック&ピニオン(パワー) サスペンション:前ストラット/後トレーリングアーム ブレーキ:前Vディスク/後ディスク タイヤ:185/55R15V
〈文=萩原秀輝〉