藤井聡太竜王への挑戦権を争う第37期竜王戦(主催:読売新聞社)は、挑戦者決定三番勝負第1局の広瀬章人九段―佐々木勇気八段戦が7月29日(月)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、角換わり相腰掛け銀の研究合戦から抜け出した佐々木八段が89手で勝ってタイトル初挑戦まであと1勝としました。

角換わり研究合戦

振り駒で先手番を得た佐々木八段は得意の角換わり腰掛け銀へ誘導。左端の位を取ったのは持久戦に持ち込んで玉の広さを主張する狙いで、これに対して後手の広瀬九段は定跡化された銀ぶつけで対抗。8筋に銀を打ち込み、先に敵玉に嫌味をつけることに成功します。

水面下の研究合戦が激化するこの戦型らしく、昼食休憩の段階で手数はすでに54手を数えます。昼休憩明け、右辺で手にした金を自玉側の端に打ち付けたのは意外な方向性ながら佐々木八段の研究手。自玉の安全を確保して攻めに専念できるようになりました。

持ち時間2時間残す快勝

広い研究と深い読みを駆使してペースをつかんだ佐々木八段はその後も軽快な攻めで敵陣突破に成功。最後のひと勝負とばかりに広瀬九段が飛車を成り込んだとき、サッと玉を右辺に逃がしたのが読み切りの対応でした。先手玉にはギリギリ詰みが無く、対する後手玉には適当な受けがありません。

終局時刻は19時20分、自玉の受けなしを認めた広瀬九段が投了。敗れた広瀬九段は「(佐々木八段が端に金を打った手に)対応できませんでした、日頃の研究不足です」と自嘲気味に語りました。佐々木八段がタイトル初挑戦を決めるか、広瀬九段がタイに戻すか、注目の第2局は8月13日(火)に東京・将棋会館で行われます。

水留啓(将棋情報局)

  • 局後、佐々木八段は本局の展開について「やってみたい将棋だった」と明かした(写真は第30期竜王戦決勝トーナメントのもの 提供:日本将棋連盟)

    局後、佐々木八段は本局の展開について「やってみたい将棋だった」と明かした(写真は第30期竜王戦決勝トーナメントのもの 提供:日本将棋連盟)