原因は、遠くの台風から高温多湿な空気が日本に流れ込み、停滞していた梅雨前線を刺激、さらに上空の寒気が北日本にタイミング悪く流れてきていたことが、雨雲を発達させました。
なぜ予想を超えてしまったのか。
それには理由が2つ考えられます。
現在、7月前半までの猛暑の影響もあり、日本海の海水温が平年より2〜3℃も高く、大気への大量の水蒸気の流入があったこと。これが予想の計算にうまく反映されなかった可能性があります。
ちなみに、海水温は1年以上も高い状況が続いていますが、平年より2〜3℃も高いというのは異常なことです。
もう一つは、日本海に停滞していた梅雨前線上に低気圧が発生し、陸地へと進んできました。その際に、山形県や秋田県では同じような所で西風が収束し続け、発達した雨雲がかかり続けました。
もし、風の収束する場所が動いていれば、大雨のエリアも移動し、激しい雨が分散されるのですが、今回はそれが分散されず集中的に降ったことで、雨量が予想以上に多くなった所がありました。
この風の収束をピンポイントで、かつ、どれくらい収束し続け、どれほどの雨量になるかは、現在の予想技術でまだ満足いくものではありません。
2013年の特別警報運用開始以来初めてのことです。
気象庁が一度、特別警報を解除した理由は、大雨が峠を越えて、日本海に次にやってきそうな発達した雨雲がなかったからです。
ただ、その後、沿岸部で新たに雨雲が次々と発生し、線状降水帯によって狭いエリアで集中的にまた大雨が降ったので、特別警報を出すことになりました。
これは、気候変動のペースに気象予測モデルが追いついていないと考えられます。
気象の予想は、まず現在の大気の状態を観測する所から始まります。いくらコンピュータの計算が進化しても、地道な観測が強化されないと、いつまでたってもゲリラ豪雨はゲリラのままで、大雨被害が出た時にマスコミに気象警報が出てた、出てなかった、線状降水帯の精度は低いなどと気象庁が叩かれてしまうことになります。
国が国土強靭化と謳うのであれば、ただちに、日本周辺の海上の水蒸気観測を強化すべきだと思います。
いま、東シナ海に観測船を出したり、民間の船舶に観測の協力をしてもらう計画で進んでいますが、日本海、太平洋にも観測をもっと増やすべきかと思います。
僕も気象関係者の立場として、今回の大雨が前の日に伝えられなかったことが、大変悔しいです。
今、被害が出ている地域では、熱中症などの二次災害がないことを祈るばかりです。少しでも早い復旧と安全を祈ります。
今年の8月は、記録的な猛暑のおそれがあり、夏の終わりには台風が次々と発生する可能性もあります。
今後、フィリピンの東海上や沖縄の南海上の海水温が高く対流活動が活発になりやすい予想が出ています。
気温が高いと、空気中にたくさん水蒸気を含むことができます。高温多湿の空気が海から入ると、積乱雲が発達しやすいです。
今年のゲリラ雷雨は特に激しい感覚をすでに持たれていると思います。
猛暑、ゲリラ雷雨、台風の大雨、今年は特に厄介です。油断せずにこまめに天気予報で確認をしていただければと思います。