テレビ画面を注視していたかどうかがわかる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、21日に放送されたNHK大河ドラマ『光る君へ』第28話の視聴者分析をまとめた。

  • 『光る君へ』第28話より (C)NHK

    『光る君へ』第28話より (C)NHK

「よもすがら 契りしことを 忘れずは 恋ひむ涙の 色ぞゆかしき」

最も注目されたのは20時42分で、注目度77.2%。中宮・藤原定子(高畑充希)の逝去を知った一条天皇(塩野瑛久)が泣き崩れるシーンだ。

定子の兄・藤原伊周(三浦翔平)と、定子の弟・藤原隆家(竜星涼)は深い闇夜の中、定子の出産の報告を今か今かと待ちわびている。そんな2人のもとに清少納言(ファーストサマーウイカ)が姿を現した。「皇子様か?」伊周は清少納言に詰め寄ったが、清少納言のあまりにも憔悴しきった姿に伊周は嫌な予感を覚えた。「なんだ?」と恐る恐る尋ねる伊周は、最悪の事態を聞かされる。清少納言から到底受け入れられない報告を受けた伊周は、真偽を確かめるべく定子の寝所へと急いだ。しかし、そこには、目を閉じて冷たくなった定子のなきがらが、静かに横たわっていたのだった。定子は姫皇子を出産したあと、みまかっていた。「定子…」伊周は涙をにじませながら妹に話しかけるが、返事はない。

伊周のあとを追い、ぼう然と立ち尽くしたまま兄妹の様子を眺めていた清少納言は、ふと衣桁に紙が結ばれているのに気づく。清少納言は紙を手に取り、中を確かめると「伊周様、こちら…」と、紙を伊周に差し出した。紙には定子の詠んだ歌が記されていた。「こんなにも悲しい歌を…」伊周は深い悲しみの感情に包まれると同時に、強烈な怒りの炎を立ち昇らせた。「全て…あいつのせいだ!」と、強く憎悪をあらわにすると、「あいつ…」と、清少納言が聞き返す。伊周は「左大臣だ!」と叫び、「あいつが大事にしているものを、これから俺がことごとく奪ってやる!」と怒りをたぎらせた。

兄の怒り狂う姿を、寝所の外からうかがっていた弟・隆家は、兄とは対照的に表情も変えず冷静そのものだった。「あ~っ!」隆家の慟哭(どうこく)が響く。「よもすがら 契りしことを 忘れずは 恋ひむ涙の 色ぞゆかしき(夜通し愛を誓いあったことをお忘れではないですよね。私のことを思い泣いてくださるその涙の色とは、いったいどのようなものなのでしょうか)」一条天皇は、愛する定子がこの世を去ったと知ると、あまりの衝撃にひとり、悲しみの涙を流した。

  • 『光る君へ』第28話の毎分注視データ

“悲劇のヒロイン”と呼ぶにふさわしい定子

このシーンは、美貌と知性を兼ね備え、明るく思慮深い性格で一条天皇に愛された中宮・藤原定子の早すぎる死に、視聴者が大きな衝撃を受けたと考えられる。

数多くの障害を乗り越え、愛を育んできた定子と一条天皇の永遠の別れに涙した視聴者は多かったのではないか。X(Twitter)では、「定子様と清少納言の仲睦まじいやり取りが見れないのは寂しい」「定子様ロス…」「伊周が道長を恨むのも分かる」など、定子の早すぎる死を惜しんだコメントが数多く投稿された。ファーストサマーウイカも、X公式アカウントで定子への気持ちをつぶやいている。

平安時代の平均寿命は、一説では男性で「33歳」、女性で「27歳」程度だったといわれている。庶民には毎日の食事も行き届かず、医療も十分に発達していない時代のため、説得力のある数字だ。あくまでも全体の平均なので、良いものを食べていたと推測される貴族たちの平均寿命は、全体の平均よりも高かったと考えられる。定子は「24歳」で崩御したが、父である藤原道隆(井浦新)は「43歳」、叔父にあたる藤原道兼(玉置玲央)は「35歳」、兄・藤原伊周は「37歳」で亡くなる。祖父・藤原兼家(段田安則)は「62歳」まで生きたが、藤原道長の嫡妻・源倫子(享年90)の血族の面々と比べると、総じて兼家の血筋である藤原北家九条流は短命な人物が多いと言えそうだ。ちなみに倫子の父・源雅信(益岡徹)は「74歳」、母・藤原穆子(石野真子)が「86歳」、長女・藤原彰子が「87歳」まで、それぞれ生きた。

権謀術数が渦巻く内裏で、一族の繁栄を望むには多くの困難が伴う。定子は一条天皇の寵愛を一身に受けたが、同時に兄・伊周から次の天皇を産めというプレッシャーをかけられ、後宮では様々な心ないウワサや陰口に悩まされていた。定子は短命な血筋に生まれたかもしれないが、このような環境が定子の健康を大きく害したのは容易に想像ができる。やはり定子は悲劇のヒロインと呼ぶにふさわしいのではないか。