年々暑くなる一方の日本の夏。とくに今年は“10年に一度”と言われるほどの記録的な猛暑で、梅雨明け早々、最高気温が35度を超える日が続いています。もはやエアコンなしでは命の危険すら感じるほど。なかには、これを機にリビングや寝室以外の部屋にもエアコンを設置しようかと検討している人もいるのでは?
とはいえ、普段あまり使わない客間や、テレワークのときだけしか利用しない書斎など、わざわざ工事の手間や費用をかけてまでエアコンを置くほどでもない部屋もありますよね。また賃貸のように気軽にエアコンを取り付けられないことも……。エアコンはあるけど故障して修理待ちのため、一時的に代替できれば十分という場合もあるでしょう。
そんなときに役立ちそうなのが「スポットクーラー」です。室外機が不要なため工事なしですぐ使い始められ、設置場所の移動もしやすいのが大きな特徴。壁掛けエアコンにないメリットからここ最近注目を集めているアイテムですが、本当に実用になるのでしょうか。
今回は43,780円というリーズナブルな価格で販売されているドン・キホーテの「冷暖房機能付き どこでも置くだけエアコン(SC-DQ2442WH [WHITE])」をお借りして、実際に猛暑日に試してそのリアルな使い心地をチェックしてみました。
【お先に結論】ココがよかった! |
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●本当に工事不要ですぐ使える ●猛暑日でも十分な冷房性能 ●キャスター付きで設置場所を変更しやすい ●暖房・除湿機能付きで1年中使える |
【お先に結論】ココが惜しい! |
●窓のそばなど設置できる場所に制限がある ●風量が弱でも運転音が大きめ ●外出時の防犯対策がめんどう ●壁掛けエアコンより電気代は高め |
多少の手間は必要だけど工事不要で使い始められる
スポットクーラーというと、冷房機能だけを搭載した製品も少なくないのですが、ドン・キホーテの「冷暖房機能付き どこでも置くだけエアコン」は、その名の通り、冷房だけでなく除湿や暖房の機能をも備えています。といっても使い方は一般的なスポットクーラーと同じで、パッケージから製品を取り出して排気ホースなどを取り付けたら、電源コードをコンセントにさせばOK。
取り付けに必要なパーツは、すべて製品に同梱されています。使うときは、まず排気ホースの両端にジョイントとノズルをつけて、窓枠にパネルを設置。本体にジョイントを、窓枠用パネルにノズルを取り付ければ完了です。若干の手間は必要ですが、窓枠用パネルを含めパーツは工具なしで組み立てられるようになっているので、取説を参考にすれば比較的簡単に作業できるはずです。
窓枠用パネルは全部で4枚用意されており、組み合わせることでさまざまな窓枠の高さに対応できます。設置可能な窓枠は高さが89~117cm、および124~230cmの範囲で、ベランダに面した大きな窓などにも取り付けられるようになっています。ただしパネルを取り付けると窓の鍵をかけることができなくなるので、防犯対策上、外出時はその都度パネルを取り外すことになり少々めんどう……。
本体サイズは幅32.5×奥行29×高さ70cm、質量約21kgで、空気清浄機くらいのサイズ感です。本体底面にはキャスターが搭載されているため、設置したあとでも本体を簡単に移動させることが可能。ただし排気ホースがあるので、部屋のどこにでも移動できるわけではなく、可動範囲はある程度制限されてしまいます。取説では本体の周囲を壁や障害物から60cm以上離して運用することが推奨されており、思った以上に設置場所は限られるので注意が必要です。
とはいえ、室外機が必要なく工事が不要で、取り付けたらすぐに使いはじめられるのは壁掛けエアコンにはない特徴。また別の部屋に本体を移動して使うことができるのもメリットです。たとえば来客があったときは客間で使い、子どもが帰宅したら子ども部屋で、テレワークがあるときは書斎に設置して使うというように、時間帯や利用シーンに合わせて本製品を移動して使うことも可能です。
涼し~い! 運転音は大きめだが冷房性能は十分
実際に使ううえで気になるのが「ちゃんと冷えるの?」、「本当に実用になるの?」という点ではないでしょうか。そこで今回は気温が35度を超えた猛暑日に使用して試してみました。
運転をスタートするには、操作パネルまたはリモコンの「運転」ボタンを押せばOK。デフォルトでは運転モードが「自動」、設定温度が「23度」になっていますが、これらは操作パネルまたはリモコンで簡単に変更することが可能です。今回は運転モードを「自動」のまま、設定温度を「27度」にして運転することにしました。
実際に「運転」ボタンを押してみると、すぐ冷んやりとした風が吹き出してきます。首振りやスイングなどの機能はなく、風向きを変えたいときは吹き出し口の縦横のルーバー(細長い羽板)を直接手で動かす必要があります。
ちょうどいい角度に調節したあと、そのまま風にあたってみましたが、思った以上に涼しくて気持ちいい! 扇風機や冷風扇などとは比較にならないほど冷たい風で、ちゃんと“エアコン”なんだと実感することができました。
“スポット”クーラーなので、部屋全体を冷やすというよりは局所的に涼しくする使い方が向いているようですが、1時間も運転を続けていると部屋の大部分が冷やされてきます。今回は製品の冷房性能に合わせて10畳の部屋で使用してみましたが、設置場所からいちばん離れた場所でも28度を下回っており、部屋のどこでも快適に過ごすことができました。
壁掛けエアコンほどではないものの冷房性能は高く、猛暑日でこれなら十分実用的と言えるでしょう。サーキュレーターなどを組み合わせて使えば、より効率的に部屋全体を涼しくすることも難しくなさそうです。
使っていて気になったのは“音の大きさ”。風量は「強」と「弱」に切り替えられますが、「弱」にしてもかなりの音がします。運転音を測定してみたところ、次のようになりました。いずれも運転モードは「自動」で、設定温度は「27度」で比較しています。
運転音の大きさ | ||||
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エアコンのタイプ | 風量 | 運転音(1m) | 運転音(2m) | 運転音(3m) |
壁掛け | 自動 | 31dBA | 測定限界値以下 | 測定限界値以下 |
スポット(本製品) | 弱 | 52dBA | 48dBA | 46dBA |
スポット(本製品) | 強 | 54dBA | 51dBA | 48dBA |
壁掛けエアコンに比べるとかなり音が大きいことが分かります。身近な音にたとえると、いちばん近いのがキッチンなどの大型換気扇の音。耳障りな音ではないのでしばらくすると慣れてしまい、あまり気にならなくなりますが、ほかの部屋で家族が寝ている真夜中に使うのは憚られるくらいの音はします。いちおう、風量を切り替えられるようにはなっていますが、正直なところ風量が「弱」でも「強」でもあまり変わらない印象でした。
音に関して言えば、窓枠パネルを取り付けているとはいえ、窓を完全に閉め切った状態に比べると外音が入りやすいのも困りました。今回製品を試したのは近くに線路や大通りがあるマンションで、一般的な住居よりも気密性が高め。そのぶん、窓が開いていると外音が気になりやすいのですが、車や電車が走っているときは騒音レベルも4dBAほどアップし、風量が「弱」でも製品から1m離れた場所で56dBAほどになりました。
もっとも、音に関しては耳栓やノイズキャンセリング付きのイヤホン、ヘッドホンなどで対策をとることは可能。とくに逆位相の音でノイズを消すアクティブノイズキャンセリングとは相性がいいようで、同機能を搭載したワイヤレスイヤホンを耳につけていると涼しく静かな空間で快適な時間を送ることができました。
また、あらかじめ本製品で部屋を冷やしておいて、実際に部屋を使うときには停止する(必要なときに再びオンにする)といった使い方でも動作音を軽減できそうです。
気になる電気代は? ざっくり計算してみた
もうひとつ使っていて気になったのが電気代です。スペックを見ると冷房時の消費電力は東日本(電源周波数50Hz)で900W、西日本(同60Hz)で1,050Wとなっています。おおよそ1kWなので、地域によっても異なりますがだいたい1時間当たり31円ほどの電気代がかかる計算になります。
そこで、実際に数時間運転して1時間ごとにおおよその消費電力を割り出し、それを元に電気代を算出してみました。なお、1kWh当たりの電気料金は31円に設定して計算しています。
おおよその消費電力と電気代 | ||
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経過時間 | 電気代(1時間当たり) | 電気代(通算) |
1時間 | 24.18円 | 24.18円 |
2時間 | 23.25円 | 47.43円 |
3時間 | 24.18円 | 71.61円 |
1時間あたりの消費電力はおおよそ800Wで、電気代も24円程度と算出。1日8時間ほど使うと190円余りの計算になります。1カ月毎日8時間使うなら5,800円ほど。今回は最高気温が35度の猛暑日のピーク時に使用しているので、もう少し気温が低い日や時間帯に使用するときはこれより安くなる可能性はありますが、それでも一般的な壁掛けエアコンに比べると電気代は高くなる計算です。
本製品にも節電機能は搭載されていますが、時間ごとに少しずつ設定温度を上げていく(冷房の場合。暖房時は逆に設定温度が下がっていく)簡易的な機能なので節約効果は限定的。とはいえ、工事不要で設置でき、価格も43,780円と手頃で、扇風機とは比較にならないほど涼しく快適な空間を実現できるので、壁掛けエアコンが設置できない場合は検討してみる価値はあるでしょう。
ただその場合も、壁掛けエアコンのようにつけっぱなしで運用するというよりは、エアコンのない客間でお客さんに対応するときだけとか、エアコンのない部屋で仕事をするときだけのように、必要なとき必要なだけ使うのに向いているといえそうです。
なまけ者にうれしいリモコンやタイマー機能
スポットクーラーは、冷房の際に空気中に含まれる水分が冷やされて水滴(ドレン水)が発生し、排水が必要になる場合があります。
本製品の場合はその水滴を排気と一緒にダクトから排出する「ノンドレン式」を採用しており、ドレン水が溜まりにくくなっているのが特徴。それでも内部のタンクに排出しきれなかった水が溜まっていきますが、本体背面下部の排水キャップを外せば簡単に排水できます。長時間運転する場合でも、排水の手間が必要最小限ですむのは魅力的なポイントです。
このほか、リモコンが標準で付属し、離れた場所からでも簡単に操作できるのもいいところ。ディスプレイが搭載されておらず機能も必要最小限ですが、ちょっとだけ温度を下げたいときや運転を止めたいときなどに、いちいち本体まで近寄らなくてもいいのは、なまけ者には助かります。
ちなみにこのリモコンは本体天面の操作パネル上部にある「リモコン貼付位置」に置くとマグネットで吸着される仕組み。使わないときでも本体に固定しておけるので、なくしにくいのは気が利いていると思いました。
タイマーは、一定時間後に自動で運転を停止できるオフタイマー機能が搭載されており、1~11時間の範囲で1時間ごとに設定できます。指定時間に電源を入れるオンタイマーは搭載されていませんが、スポットクーラーの設置環境や使い方を考えるとなくても困らない機能ではあります。
ちなみに本製品には暖房機能が搭載されており、1年中使用できるのも特徴のひとつになっています。今回その機能も試してみようと思ったのですが、暖房運転できる部屋の温度は5~31度まで。今回は気温が高すぎるため温風は出ず、送風だけしかできませんでした……。ちょっと残念。機会があればまた試してみたいところです。
使い方次第で良い選択肢になるスポットクーラー
工事不要で設置でき、買ってきてすぐ使い始められるドン・キホーテの「冷暖房機能付き どこでも置くだけエアコン」。窓のある部屋にしか設置できなかったり、設置すると施錠ができないなどの制限はありますが、室外機が置けない部屋や、原状回復が必要な賃貸でも気軽にエアコンで部屋を冷やせるようになるのは大きなメリットです。
運転音や消費電力の大きさなど、今後の改善に期待したい部分もありますが、そうしたデメリットを理解した上で使えるなら良い選択肢だと言えます。
すでに壁掛けエアコンがあるワンルームのマンションなどには向きませんが、ファミリー向けマンションや戸建てなど、部屋数の多い住居にプラスアルファで設置するにはピッタリ。そうした住まいで暑さ寒さを凌ぎながら1年中快適に過ごしたい人は、一度検討してみてはいかがでしょうか。