第83期順位戦A級(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は2回戦がスタート。7月24日(水)には佐藤天彦九段―千田翔太八段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、四間飛車を用いた佐藤九段が109手で勝利。2連勝の好スタートで名人挑戦に向け一歩前進しました。
古色古香の木村美濃
ともに初戦を勝利で飾った二人。先手の佐藤九段が採用したのは角交換四間飛車と並んで主力としているクラシカルな四間飛車で、これを見た千田八段はトーチカ囲いを志向、盤上は持久戦に落ち着きました。木村美濃に組んだのが佐藤九段の温故知新の駒組みです。
先にペースをつかんだのは千田八段でした。先手が穴熊への移行を見せたタイミングで玉頭の歩を突っかけて桂を跳ねていったのが機敏な利かし。佐藤九段は銀を四段目に上がるよりなく、穴熊放棄を余儀なくされた形です。しかしここでの2筋の歩交換が終盤への伏線となっていました。
厳しかった桂打ち一閃
玉の堅さの主張点を得た千田八段は軽快な仕掛けで攻撃を開始しますが、直後に見損じがありました。飛車成りを受けず5筋に桂を打って角取りとしたのが佐藤九段の充実ぶりを示す好手。素直に応じると飛車金両取りの大技が待っており、千田八段は角を見捨てるよりありません。
主導権を奪った佐藤九段は完璧な指し回しで優位を拡大します。後手玉そばの銀にタタキの歩を放ったのが寄せの決め手。千田八段としては序盤でのさりげない歩交換により2筋に先手の歩が立つようになったのが祟っています。以降は佐藤九段の寄せを見るばかりとなりました。
天彦流振り飛車で連勝スタート
終局時刻は22時5分、最後は自玉の詰みを認めた千田八段が投了。感想戦では中盤、千田八段が単に飛車を走った手が佐藤九段から桂打ちの好手を誘発したと結論付けられました。局後のSNS上には「居飛車党の自分でさえ振り飛車指したくなってくる」などの賛辞が並びました。
一局を振り返ると佐藤九段の中盤の桂打ち一発で攻守が一気に逆転した構図に。これで勝った佐藤九段は第79期以来となるA級順位戦2連勝スタート。次戦では豊島将之九段と対戦します。敗れた千田八段は1勝1敗に。次戦では菅井竜也八段と顔を合わせます。
水留啓(将棋情報局)