日本航空は6月23日、JAL SKY MUSEUMにて小学生向けのイベント『JALこども未来開発本部』を開催。“サステナブルな未来の旅”をテーマに掲げ、JALの社員および現役パイロットが小学校3年生~6年生の19名と一緒に「環境問題」や「SDGs」について意見を出し合った。
■子どもたちのアイデアは?
今回の催しはサステナビリティについて考えるワークショップのほか、JAL SKY MUSEUMの見学、そして格納庫の見学もセットになっていた。一般募集は7月2日から2週間かけて行ったが、全国から600件を越える応募があったという。
ちなみにJAL SKY MUSEUMでは、キャビンアテンダントの制服の変遷(東亜国内航空、日本エアシステム時代を含む)がたどれるほか、ビートルズも来日時に羽織ったハッピコート、国際線ファーストクラスで配られていたフライトバックの東京オリンピックモデル、機内で土産として販売されていたスチュワーデスのコスチュームをまとったバービー人形などユニークな品々を展示。運航乗務員、航空整備士の仕事を紹介するコーナーもあった。
さてワークショップにおいて、子どもたちは4つのテーブルに分かれて意見を出し合った。その冒頭、日本航空の内田彪氏はイベントの趣旨について以下のように説明する。「JALはこれまで70年以上、安全・安心な空の旅をお届けしてきました。私たちは『移動』や『旅』に、人の人生や暮らしを豊かにする力があると信じています。今後も、たくさんの人が様々な場所を訪れて新しい人に出会い、色んな体験をするでしょう。そのために、いま私たちがすべきことはありますか? 未来を担う皆さんからアイデアをもらうため、今回、JALこども未来開発本部の子ども社員を募集しました」。
ここで現役パイロットの岡田哲也氏は「空から地球を見たとき、雪が少なくなっていることに気付くんです」と紹介。アラスカ半島の上空で撮影した2013年と2023年の写真を比較して、地球温暖化が進んでいる現状を伝えた。
持続可能な世の中にしないと、人々は旅行もできなくなってしまう――。では実際、航空会社は飛行機内や空港において、どんな取り組みを行っているのだろうか? ここからはJAL SKY MUSEUMの展示を見ながら「旅のなかでできるサステナビリティ」を考える時間となった。
岡田氏の「みんなにやさしい未来の飛行機は、どんな燃料で飛ぶでしょう?」という問いかけに、頭を悩ます子どもたち。答えは「家で使い終わった油」だった。いま世界では、使用済みの食用油、廃棄油などの原料から持続可能な航空燃料SAF(Sustainable Aviation Fuel)を精製する研究が進められているとのこと。
岡田氏は、JALの紙コップはティッシュペーパーなどにリサイクルしていること、飛行機の座席のカバーは捨てずにポーチやかばんにアップサイクルしていることなども紹介。また「航空券をモバイルチケットで発行することも環境負荷を減らす行動です」とする。
このあと、コックピットでは操縦方法を披露。「飛行機が着陸した後は、不必要なエンジンを止めることでCO2の削減にも貢献しています」と明かした。
部屋に戻った子どもたちは、これまで学んだことをベースに「飛行機や空港でできるサステナビリティ」について活発にアイデアを出し合った。そしてチームごとに発表。「管制塔で緑を育てる」といった意見もあれば「機内食にトウモロコシを出してバイオマス燃料をつくって飛行機の燃料にする」「飛行機の部品を海洋ごみからつくる」「機内食の容器は洗って使える食器に代える」などの発表もあり、JALの社員も大きくうなずいていた。
岡田氏は「皆さんのアイデアに圧倒されました。リサイクル、アップサイクル、ごみの分別、まだまだJALグループにできることはたくさんありそうです。私は運航乗務員という立場ですが、できることから実行していきたいと思いました」。
また日本航空 執行役員の崎原淳子氏は「皆さんの発表を聞いて、とても勉強になりました。大人の社員だけで話していると気付かない発想、思い浮かばないアイデアがあり、『そんな身近なところにもサステナビリティにつながるヒントがあったんだ』と教えてもらいました。これからJALのサービスに取り入れていきたいと思います。JALは今後とも、未来を担う皆さんと一緒にサステナビリティについて考え、行動していく機会をつくっていきますので、これからも是非、ご参加いただければ嬉しいです」と呼びかける。
最後に、内田氏は「今日は『みんなにやさしい未来の旅』について考えてもらいました。皆さんも、これから買い物をする、電車に乗る、ごはんを食べる、お風呂に入る、など日常生活の色んな場面で『みんなにやさしい未来の旅』について考えてみてください。お家の人や、学校で友だちにも話してもらえたら。社会全体でサステナビリティについて考えることで、持続可能な世の中を実現できたら良いなと思っています」とまとめた。
このあと、子どもと保護者は格納庫の見学へ。間近で見る飛行機の大きさに、子どもだけでなく大人も夢中になっていた。