帝国データバンクは7月22日、全国の花火大会の「有料席の導入状況」と「価格設定の推移」についての調査結果を発表した。調査は7~9月に開催される全国の花火大会のうち、動員客数が10万人以上(平年)の106大会を対象に行われた。(2020年~2022年はコロナ禍による大会中止が多いため対象外)
花火大会の有料席、半数超が今年「値上げ」
国内で7~9月に開催される主要な106の花火大会のうち、約7割にあたる79大会で観覧エリアに「有料席」を導入していることが分かった。2024年は新たに4大会で有料席の販売が開始されたことで、開催の中止などによる減少分を含め、前年開催時の77大会から2大会の純増となった。有料席を導入した花火大会の中には全席指定に踏み切ったケースもあり、花火大会の有料化が全国で広がっている。
2023年開催から有料席を導入した75大会のうち、56.0%にあたる42大会で、2024年の花火大会における有料席の「値上げ」が判明した。価格改定前後の有料席料金をみると、複数種類が用意された観覧席のうち、1区画(席)あたりの「最安値」平均は5162円だった。前年(4768円)に比べて8.3%・394円増加したほか、5年前の2019年(3676円)からは約4割・1486円増加した。一方、最前席や区画当たりの面積を広く確保したテーブル席、グランピングシート席など、多様な種類の観覧席が導入される最高額席の2024年平均は3万4064円だった。前年(3万2791円)に比べると3.9%・1273円の増加となり、最安値平均に比べると上昇率は緩やかだった。
2024年における花火大会の有料席は、最安値平均が初めて5000円を超えるなど、ベースグレードの料金設定を底上げする動きが目立ち、前年に比べて花火大会全体で有料席のプレミアム化・高価格化が進んだ。なお、有料席の設定がある79大会のうち、最も高額な有料席は「2024松江水郷祭湖上花火大会」(島根県松江市・8月3日~4日開催)で販売された「VIPテーブル席」(定員4名)の16万円(1席あたり4万円。専用トイレ、飲食、飲み放題付)。
花火大会では、運営費支出の多くを占める花火の打ち上げコストの増加が続いている。2024年(1~5月)の打ち上げ花火輸入価格は約2200円/kgと、コロナ前の2019年と比べて1.8倍に増加した。ロシアのウクライナ侵攻の影響を受け、原料となる火薬類が大幅に値上がりした2022年当時に比べると価格は低下したものの、依然として高止まりが続いている。また、安全対策に不可欠な会場設営費や警備費用も、7~9月は各地で祭り・花火大会など各種イベントが集中しやすいことに加え、従前からの人手不足も重なったことで大幅な予算増を余儀なくされたケースが多く、有料席の値上げや席数の拡充により運営費の増加分を工面する動きがみられた。
高額席で「売れる」「売れない」二極化が進行
値上げの動きが「モノ」から「サービス」へと広がるなか、テーマパークやイベントなどコト消費にも「一部有料化」や「高額化」の動きが急速に広がっている。夏祭りのイベントで高額な有料席の販売が浸透しつつあることを背景に、花火大会でも有料席の導入が近年急速に進んでいる。
今年は最安値でも5000円を超える価格設定が多くみられたほか、最高額で10万円を超える価格帯も設定され、花火大会全体で価格の引き上げが目立った。ただ、有料席の導入が本格化した2023年は知名度やアクセスの良さ、花火の打ち上げ規模などによって高額席の売れ行きに差がみられ、有料化や金額設定の成否については各大会で二極化も進んでいる。「単価の引き上げ」と「価格設定の妥当性」について、観覧者を含めたステークホルダーに受け入れられる土壌づくりが、花火大会の有料化やプレミアム化を普及・定着させるうえでの課題になるとみられる。