韓国の自動車メーカー・ヒョンデの日本法人であるHyundai Mobility Japanは、鹿児島県の屋久島でバスを運行する「いわさきグループ」に電気バス「ELEC CITY TOWN」5台を納入する。ヒョンデが日本で電気バスを受注したのは今回が初めて。今後も増えていくのだろうか?

  • ヒョンデの電気バス「ELEC CITY TOWN」

    ヒョンデが屋久島向けに受注した電気バス「ELEC CITY TOWN」

電気バスってどんなバス?

「ELEC CITY TOWN」(エレクシティタウン)はバッテリーとモーターで走る電気自動車(EV)タイプの中型バス。容量145kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載しており、一充電走行可能距離(ヒョンデが自社基準、定速60km/hで測定)は233kmだ。

バスといえばディーゼルエンジン搭載車が一般的だが、ヒョンデは2017年に電気バス「ELEC CITY」(エレクシティ)シリーズを韓国で発売し、その後もアップデートを重ねながらラインアップを増やしてきた。韓国では現在、水素を使う燃料電池自動車(FCEV)タイプも含め、電気で走るバスの市場が活況を呈している様子。Hyundai Mobility Japan代表取締役社長の趙源祥(チョ・ウォンサン)さんによれば「供給が足りていない」状態となっているそうだ。

日本でも電気バスの引き合いはきているそうだが、日本でどれだけ販売できるかは本国から何台の割り当てを獲得できるかにもよるという。ちなみに「ELEC CITY TOWN」については、4,700万円~5,000万円くらいの価格で販売していく。

  • ヒョンデの電気バス「ELEC CITY TOWN」
  • ヒョンデの電気バス「ELEC CITY TOWN」
  • ヒョンデの電気バス「ELEC CITY TOWN」
  • 「ELEC CITY TOWN」のボディサイズは全長8,995mm、全幅2,490mm、全高3,400mm、ホイールベースは4,420mm。乗員定員は55人。充電方式は「CHAdeMO」に対応。乗客乗下車時の死角地帯の障害物を感知する「SEW-Near」機能、各種センサーで車両の挙動を測定し、モーターの出力・ブレーキを制御することで悪天候や滑りやすい路面でも車両のコントロールを容易にする「VDC」(車両安定装置)など、路線バス運行で求められる各種安全装置は標準装備

なぜヒョンデのバスを選んだ?

いわさきグループの中核企業でヒョンデの正規販売店でもある岩崎産業代表取締役社長の岩崎芳太郎さんによると、同グループでは「屋久島のゼロエミッション」を目指しているという。電気バスの導入も、この目標を達成するためのプロセスのひとつだ。ヒョンデの電気バスを選んだ理由については、「韓国で約6,000台の納入実績があり品質が保証済み」であることを挙げた。国産の電気バスがあれば国産を選んでいたかもしれないと岩崎さんは話していたが、現状では選択肢に浮上しなかったそうだ。

屋久島に導入する5台のエレクシティタウンについては2024年末をめどに日本に持ってきて、許認可取得などを進めて2025年の早い段階で運行を開始する予定。まずは乗り合いバス(路線バス)として運行する。

電気バスの導入は「屋久島のゼロエミッション」に向けた施策の一環だが、この目標を達成できれば屋久島を訪れる人が増えるという見込みもあると岩崎さん。電気バスの価格は従来のバスより1.5倍ほど高価だが、屋久島観光の活性化に向けた投資という観点からも導入を決めたそうだ。購入に際しては国土交通省からの補助金が使えるという。

  • 左が岩崎産業の岩崎芳太郎さん、右がHyundai Mobility Japan代表取締役社長の趙源祥(チョ・ウォンサン)さん

    左が岩崎産業の岩崎芳太郎さん、右がHyundai Mobility Japan代表取締役社長の趙源祥(チョ・ウォンサン)さん

日本の電気バス市場でヒョンデのライバルとなるのは中国のBYDだ。価格の勝負ではBYDに分があるようだが、ヒョンデの電気バスは信頼性やバッテリー保証の充実ぶりなどに強みがあるとチョ社長は話す。バスは導入したら長く使うことになるから、イニシャルコストで多少は劣勢でも、品質勝負なら日本でシェアを伸ばしていくことは可能、ということなのだろう。