JR九州は、7月19日付で鉄道事業における旅客運賃・料金の上限変更認可申請を国土交通大臣宛に行ったと発表した。改定率は運賃・料金全体で15.0%。初乗り運賃は現行の170円から200円に値上げされる。実施予定日は2025年4月1日とされている。
同社は1996(平成8)年1月以降、消費税率の引上げによるものを除き改定を行わず、運賃を維持してきた。しかし、高速道路網の発達や全国平均を上回る九州地区の人口減少・高齢化に加え、新しい生活様式の定着に伴うさらなる利用減少により、輸送需要はコロナ禍前の水準に戻らないと見込んでいるという。コロナ禍前から固定費の削減と生産性向上にも努めてきたが、昨今の電気料金・物価高騰による経費の増加により、厳しい経営状況が継続することも見込んでいる。
こうした中、安全とサービスの維持向上、老朽化した車両・接続の更新と長寿命化、激甚化する災害やカーボンニュートラル等に対応する設備投資・修繕等に必要な資金を安定的に確保することが困難に。働き手を安定的に確保すべく、待遇と職場環境の改善を図ることも急務とされ、「当社のさらなる経営努力を前提として、今後も事業継続に必要な対応を着実に実施するにあたり、不足する費用の一部についてお客さまにご負担をお願いするため」改定を申請したと説明する。
普通旅客運賃は平均14.6%の改定を申請。初乗り運賃が現行の170円から200円(30円値上げ)となるほか、営業キロ4~6kmが現行の210円から240円(30円値上げ)、7~10kmが現行の230円から270円(40円値上げ)、11~15kmが現行の280円から340円(60円値上げ)、16~20kmが現行の380円から450円(70円値上げ)、21~25kmが現行の480円から560円(80円値上げ)、26~30kmが現行の570円から660円(90円値上げ)に。営業キロ300km以下の区間は賃率を引き上げる一方、301km以上の区間は賃率を据え置くという。
申請が認められた場合、博多駅から鹿児島本線(上り)の運賃は吉塚駅まで改定後200円、千早駅・香椎駅まで改定後270円、福工大前駅まで改定後340円、福間駅まで改定後560円、赤間駅まで改定後760円、折尾駅まで改定後1,090円。博多駅から福北ゆたか線の運賃は篠栗駅まで改定後340円、新飯塚駅まで改定後870円、直方駅まで改定後1,090円。博多駅から鹿児島本線(下り)の運賃は竹下駅まで改定後200円、南福岡駅まで改定後270円、二日市駅まで改定後340円、鳥栖駅まで改定後660円、久留米駅まで改定後870円となる。
なお、福岡市内から久留米市内の移動に関して、西鉄天神大牟田線の運賃は西鉄福岡(天神)~西鉄久留米間で現行640円。天神大牟田線が両市街地を結ぶ一方、鹿児島本線はとくに久留米駅が市街地から離れた場所にあり、JR九州の運賃改定で鹿児島本線の割高感が増すと考えられる。博多~大牟田間も、改定前の現時点で鹿児島本線の運賃(1,310円)より福岡市地下鉄と西鉄天神大牟田線を乗り継いだ運賃(1,260円)のほうが安くなっており、JR九州の運賃改定でその差がさらに拡大する。
定期旅客運賃についても、通勤定期は平均30.3%、通学定期は平均16.0%の改定を申請。通勤定期の割引率も見直す(通学定期の割引率は変更なし)。新幹線特急料金も平均12.4%の改定を申請し、例として九州新幹線の博多~熊本間は現行3,060円から改定後3,420円、博多~鹿児島中央間は現行5,030円から5,680円に。一部の隣接駅間等で自由席を利用する場合の特急料金や、西九州新幹線の特急料金は据え置く。在来線特急料金、グリーン料金、座席指定料金も据置きとする。