ロータスミーティングが終わって、ようやくパリに夏がやって来た。最高気温が30度を超えるような日がようやくやって来た。と思ったらそれは2、3日でまた肌寒い日に戻った。古い車には涼しい方がいい。今回レポートするのは、Losange Passion Internationalというイベントだ。Losangeとはフランス語で”菱形”の意味で、ルノーのロゴマークを表している。ルノーのイベントだ。これは50年以上の歴史のあるClub des Amateurs danciennes Renault(ルノー ヴィンテージ アマチュア クラブ)がルノーとアルピーヌと共に主催したイベントで、プライベートなオーナーズクラブとはひと味違う。今年はルノーの創設125周年を祝う年で、ルノーオーナーがサーキット走行するだけでなく、ルノーの歴史を作ったレコードブレイカーやレーシングマシンがモンレリ・サーキットを走ったのだ。
【画像】アルピーヌA110やルノー・アヴァンタイムなど、記事中で紹介しきれない写真もたくさん(写真44点)
開場前からルノークラシックはそのコレクションを走行の準備で大忙しだ。先月行われたヴィンテージリヴァイバルで走行したNervasport Record、Renault 40CV Recordの二台に加え、ルノーEtoile Filante(流星号)や1934年にこのモンレリで6時間の平均速度で111.466km/hの記録を出したセルタクアトル。アメリカで発売されたドーフィンから60年、そしてドーフィンがボンネビルで記録を出して60年。それを記念してボンネビルのCGC(クラシック ガス クーペ)クラスに挑戦するためにルノー・クラシックで整備されたドーフィン。アラン・プロストの息子ニコラ・プロストがドライブして76.541mphの平均速度を樹立した車両だ。また、750ccクラスで世界速度記録を目指すため作られたリファール・ルノーと呼ばれたTANK 4CVなどが走った。
そして、ルノー・アルピーヌA442。ドライブしたのはA210でルマン24時間を経験し、A441でヨーロッパ選手権で74年に優勝した後、このA442の開発やテストドライバーを務めたアラン・セルパジがステアリングを握った。今年85歳だが、まったく年齢を感じさせない走りをした。
会場にはルノー5マキシターボも登場。メインスタンド前でジムカーナのような走りでスタンドを沸かせた。それを自在に操ったのが2021年から開催されているAlpine Elf Rally Trophyの初代チャンピオンに輝いたジュリアン・ソニエ(Julien Saunier)。ジュリアンの走行が終わるとアラン・セルパジが駆け寄り会場を盛り上げた。
次に登場したのはR5 TURBO 3E。スポイラーを擦らないように慎重にピットロードへ進入すると、静寂の中で加速し、コースに出るとたちまちターンを始め、その巨大なトルクでリアタイヤから白煙を上げた。音はタイヤがアスファルトを擦る音だけ。会場は静まりかえった。走りは迫力があるのになぜか会場はシーンとしている不思議な時間だ。これをドライブしたのはWTCCで4度チャンピオンに輝いたイヴァン・ミュラー。静かに会場を湧かせたのだ。
そして、6台のルノーの歴代レコードチャレンジャーを先頭に参加車が一斉にコースに出るルノーパレードだ。ルノーのヒストリカルな車両と一緒に、その記録を作ったこともあるコースを自分の車で走れる喜びはルノーオーナーにとって大きな勲章となることだろう。
これが終わると7月。フランスは日本に比べて長いバカンスに入る。車のイベントも9月までバカンスに入るのだ。このルノーのイベントがバカンス前の最後のイベントとなるのだ。日本ではバカンス中に色々なイベントが開催されるが、こちらではバカンスは平等に皆に訪れるのだ。
写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI