「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクは7月17日、2023年度のふるさと納税の寄付動向を発表した。
2023年度ふるさと納税寄付動向
2023年度でもっとも顕著に寄付動向に変化が出たのは、昨年10月の告示改正を目前に控えた9月に起こった前倒し寄付の現象だったという。告示改正では、地場産品基準の厳格化や、自治体の募集に係る経費に関する規定の厳格化を受け、寄付者の中に9月以降は寄付金額が上がってしまうのではないかという懸念が広がったことで、毎年年末にかけて寄付をしている人が、前倒して寄付を行ったケースが多かったとみられる。
トラストバンク地域創生ラボが実施した調査では、約6割が駆け込み寄付を実際に行い、約4分の1が昨年9月に控除上限いっぱいまで寄付をしたと回答している。昨年9月に一部を前倒して寄付を行い、昨年12月に再度寄付をした人が多くいたため、2023年度は9月と12月に大きな寄付の山ができた。
漁業支援や災害支援など「共助の輪」広がる
日本の海産物を支援する動きから、昨年8月~9月はホタテへの寄付が急増。昨年8月下旬に地域の海産物事業者が困難な状況にあるという報道がされはじめ、昨年8月のホタテへの付が前年比約1.9倍となり、昨年9月は前年比約6.6 倍に増加、2023年度全体では約1.6倍の伸びとなった。地域の事業者・生産者を直接支援できる方法としてふるさと納税が定着してきていると考えられる。
1月1日に発生した能登半島地震を受け、「ふるさとチョイス災害支援」(原則お礼の品はなし)へ、20億円を超える寄付が集まり、過去最多の寄付額と寄付件数となった。さらに、被災していない自治体が被災した自治体の代わりに寄付を集める「代理寄付」を行う自治体数や「代理寄付」を通じた寄付も過去最多となり、自治体間の共助の輪が広がっている。
また、発災直後はお礼の品がある寄付を一時停止していた能登半島の自治体も、現在徐々にお礼の品のある寄付の受け入れを再開している。2023年4月~6月と2024年を比較すると、能登半島の12自治体への寄付が増加しており、ふるさと納税を通じて被災地域を応援するという方法が寄付者の間でも浸透していることがうかがえる。
加えて、元々わずかに上昇傾向にあった防災グッズをお礼の品としてもらう人が、能登半島地震をきっかけに増加傾向にあるという。 2024年1月以降に防災グッズへの寄付が急増し、2023年度の寄付件数は22年度の1.8倍となった。寄付者の防災意識も高まっていると考えられる。
関係・交流人口増に寄与する「体験型のお礼の品」
ふるさとチョイスでは「旅行」カテゴリーと「イベントやチケット」カテゴリーに含まれるお礼の品を「体験型のお礼の品」と呼び、寄付者が現地へ行くことを促すことで、地域の関係・交流人口増に寄与するお礼の品として注目してきた。そしてコロナ禍以降、寄付者の間でも新しいトレンドとして定着してきている。2023年度は特に、花火大会の観覧席などがもらえる「花火大会チケット」、アミューズメント施設などの入場券や優待券がもらえる「入場券・優待券」や、マラソン大会の出走権やクルージングの乗船券など様々な体験のチケットがもらえる「その他イベントやチケット」といったカテゴリーに人気が集まった。
生活防衛の日用品のトレンドは定着
昨今の物価高の影響を受け、生活防衛としてふるさと納税を活用する人が増え続けており、家庭用紙製品や洗剤などの日用品や、鮭といった毎日の食卓に並ぶ品の人気が高い状態が継続している。また、価格高騰や値上げなどが報じられた品に寄付が増加する傾向にあり、この傾向は2024年度に入ってからも継続している。2024年4月~6月では、5月に値上げがあったオリーブオイルへ寄付が集まった。