第37期竜王戦(主催:読売新聞社)は決勝トーナメントが進行中。7月17日(水)には久保利明九段―佐々木勇気八段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、終盤の競り合いで抜け出した佐々木八段が176手で勝利。難局をひっくり返して準決勝進出を決めています。
序盤はさばきがキーワード
1組3位の久保九段と2組優勝の佐々木八段という構図は4年前の決勝トーナメントと同一カード。佐々木八段はリベンジを目指します。久保九段の先手で始まった対局は四間飛車対居飛車急戦に進展。佐々木八段は中央の位を取って振り飛車の大駒のさばきを封じる構えです。
左辺で駒の取り合いが行われて中盤戦たけなわ。角銀交換の駒損を受け入れた久保九段は飛車の活用を代償に得て互角の競り合いが続きます。一足先に竜を作った久保九段はこの竜を角と刺し違えるさばきを披露。美濃囲いの堅さを背景に、攻めに専念できる形を得ました。
勝敗分けた受けの勝負手
リードを許した佐々木八段も勝負手で迫って相手に楽をさせません。急所に居座る角の態度を決めさせるために遊び駒の銀を立ったのが実戦的な好手。持ち時間切迫を告げる秒読みが迫るなか、一つしかない正着を続けるのはさすがの久保九段をもってしても至難の業でした。
息を吹き返した佐々木八段は丁寧な受けでリードを拡大します。馬を引き付けて自玉の詰み筋を消してから金底の歩を打ったのが決め手。反撃を急がずとも先手の攻め筋を摘んでおけば形勢は自然と傾いてきます。終局時刻は23時11分、詰みを認めた久保九段が投了。
一局を振り返ると久保九段が得意のさばきでリードを奪いつつも、両者一分将棋に入る前後で佐々木八段が繰り出した受けの勝負手が奏功した格好に。逆転で初戦を制した佐々木八段はベスト4一番乗りを決めています。
水留啓(将棋情報局)