空想と妄想。「頭の中で想像する」という意味合いからすると似たような意味を持つ言葉ですが、この2つには明確な違いがあります。その違いを理解せず日常会話やビジネスシーンで使用すると、思わぬ誤解を生んでしまうかもしれません。
本記事では、空想と妄想のそれぞれの言葉の意味や具体的な違い、例文や英語表現などを詳しく解説します。
空想の意味とは
空想とは、現実には存在しない事柄や状況を想像し、心の中で描く行為を指します。これは子どもの頃に夢見た未来の職業や、日常生活の中での楽しいシチュエーションをイメージすることが典型的な例です。
空想は創造力の源泉になるという観点から、特にクリエイティブな仕事をする人たちらにとって重要なものと考えられています。創造力は問題解決や新しいアイデアを生み出す能力を高めることでき、空想はその想像力を養うための練習となるからです。
既成概念にとらわれない空想をする時間を持てば、創造的な思考や自由な視点で物事を考える習慣が身につき、結果として仕事や生活に役立つ新しいアイデアを生みだせるかもしれません。
また、実際に存在しない理想的な世界や楽しい出来事を思い描けば、日常のストレスや不安を一時的に忘れられるでしょう。
妄想の意味とは
妄想とは、現実には存在しないけれども、自身の頭の中で確信を持っているイメージや観念を指します。このイメージや概念というのはとても強固で、周囲の人の説得や説明をもってしても覆せないようです。
妄想は一般的に個人の信念や願望に基づき、現実世界とは異なるストーリーを構築してしまいます。妄想は時に、誤解や誤った情報が原因で生じることもあります。
厚生労働省によると、妄想にはさまざまな種類が存在します。一例は以下の通りです。
関係妄想……何でも「自分に関係がある」と思い込んでしまうこと。
被害妄想……周囲の人が「自分を陥れようとしている」と思い込んでしまうこと。
注察妄想……「自分は見張られている」と思い込んでしまうこと。
妄想は、精神的健康の面で問題を引き起こすこともあります。例えば、統合失調症などの精神疾患では、現実とフィクションの区別がつかなくなることがあります。このため、専門家による早期の対処が重要になります。
空想と妄想の具体的な違い
空想と妄想は似たような言葉ですが、明確な違いがあります。それは「想像の世界と現実の世界を別のものとしてはっきり認識できているか否か」という点です。
例えば、未来の技術やファンタジーの物語を思い浮かべることは空想に該当します。特にクリエイティブ業界では、新たなモノやサービスを開発するにあたり、このような創造的な活動は重要になってきます。
ただ、そのような「未来の技術やファンタジーの物語」は、現実には存在しないということを理解していることが大前提です。「現実にはない」からこそ、「こんなことができたら便利だな」「こんなサービスがあったらいいな」とアイディアや知恵を絞って、そのような「未来の技術やファンタジーの物語」を実現させようとするのです。
一方、妄想は現実感を失ってしまうほどに非現実的な考えに囚われてしまい、自分が頭の中で考えている世界と現実世界を混同して考えてしまうようになります。妄想はしばしばネガティブな意味合いを持ち、精神的な健康に影響を及ぼすことがあります。
このように、空想は現実と想像の境界を自由に行き来することができるポジティブな行為であるのに対し、妄想は現実から逸脱し、自己や他者に害を及ぼすリスクがあるネガティブな状態です。
妄想をしてしまう人の特徴
妄想は統合失調症の代表的な症状として考えられています。厚生労働省は、妄想を陽性症状とする統合失調症の人に見られる認知・行動の特徴として以下を挙げています。
■考えがまとまりにくく、何が言いたいのかわからなくなる
■相手の話の内容がつかめず、周囲にうまく合わせることができない
自身の考えをまとめることや、相手が話している内容を整理して理解することが苦手だと、どうしても周囲とのコミュニケーションが億劫になりがちです。友人や家族との関係性が薄れ、外部からの刺激が少なくなってしまったとしたら、自分だけの内面の世界に閉じこもるようになってしまいます。
その結果、自己完結的な考え方が強まってしまう……という事態につながってしまうのかもしれません。
空想と妄想の使い方
ここからは空想と妄想を用いた実際の例文を紹介します。
空想の例文
私はこのつらい夏合宿から解放された後の日々についていろいろと空想にふけった
この映画には空想上の生き物がたくさん登場する
妄想の例文
警察は男性の被害妄想だと断定したが、そうではなかった
私にはある種の妄想癖がある
空想と妄想の英語表現
空想と妄想を英語で表現する際、それぞれ異なる単語が用いられます。ここからはこの2つの言葉の英語表現を詳しく紹介します。
空想の英語表現
空想を英語で表現する際に最も一般的な単語は「imagination」や「fantasy」です。これらの単語は日常会話や文学、映画などさまざまな文脈で使われます。具体例として「use your imagination」(空想を働かせて)や「escape into a fantasy world」(空想の世界に逃げる)などがあります。
妄想の英語表現
妄想を意味する英語表現で最も一般的なのは「delusion」です。これは、現実と反する誤った信念や考えを指します。
空想と妄想を理解して日常生活に役立てよう
本記事では空想と妄想の言葉の意味の違いを中心に、それぞれの例文や英語表現などを解説してきました。
似たような意味を持つ言葉を適切なシーンで使い分けることで、コミュニケーションスキルも向上し、他者との関係も良好になります。本記事で得た知識を活用して、より充実した日常生活を送りましょう。