「クールジャパン」赤字356億円から戦略改訂で“再起動”…これまで効果はあったのか? 専門家が解説
モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。7月11日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「クールジャパン戦略5年ぶりに改定」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。


※写真はイメージです



◆そもそも「クールジャパン戦略」とは?

政府は今年6月、アニメや漫画といったコンテンツなどを海外に売り込む「クールジャパン戦略」を5年ぶりに改定しました。コンテンツ産業の海外展開規模を2033年までに現在の4倍以上の20兆円に引き上げると発表しています。

ユージ:塚越さん、クールジャパン戦略について一時期よく聞きましたが、どんな戦略でしたか?

塚越:よく聞きましたよね。クールジャパンの取り組みがスタートしたのが2010年頃です。その後2012年クールジャパン戦略担当大臣が設置され、2015年には戦略を策定したり、情報共有をおこなったりする「クールジャパン官民連携プラットフォーム」が設立しました。官民一体となってクールジャパンを推し進める体制が構築され、2019年には「クールジャパン戦略」が策定され、取り組むべき方向性も示されました。

その上でこれまでにコンテンツの海外展開とクリエイターの支援や、インバウンド誘致や海外への情報発信、また農林水産物や食品の輸出といった取り組みをおこなってきました。ユージさんは先週アメリカに行ったそうですが、クールジャパン的なもの何か感じましたか?

ユージ:外国で日本の物を見かけることが、とても多かったです。吉田さんに、お土産でアニメ「呪術廻戦」のアメリカバージョンのフィギュアをあげましたよ。日本の食文化も「こんなに当たり前にあるんだ!」と思うくらい、アメリカでは当たり前に見かけるようになっています。

◆果たして効果はあったのか?

吉田:塚越さん、クールジャパン戦略について効果はあったと見ていいですか?

塚越:内閣府によれば、アニメやゲームといったコンテンツの海外展開規模は2022年時点で4.7兆円。この10年でおよそ3倍になっています。ただ、クールジャパン戦略の効果だったと言い切ることはできません。

とはいえ、コロナ禍で日本のゲームやアニメがこれまで以上に人気になり、2020年に日本で大ヒットした「鬼滅の刃」の映画(劇場版「鬼滅の刃』無限列車編)は45の国と地域で公開され、コロナ禍とはいえ海外でも大ヒット。また去年8月にNetflixで配信された実写ドラマ版「ワンピース」は世界46カ国で初登場1位。93カ国でトップ10入りしました。

また日本食の関心も高く、寿司や天ぷらなど従来から知られたものだけでなく、カレーやラーメン、おにぎりなどを求めて日本に来る観光客も増えました。日本政府観光局が今年6月に発表した情報によれば、今年5月に日本を訪れた外国人観光客は推計304万人で、このペースでいけば年間訪日外国人旅行者数は3,500万人を超えます。去年がおよそ2,500万人で、コロナ前の2019年が3,188万人なので、コロナ禍を超えて観光客は増えるかなというところです。

とはいえ、旗振り役として2013年に設置された、官民ファンドの「海外需要開拓支援機構(通称:クールジャパン機構)」は、去年3月時点で投資先の業績不振などが続き、累積赤字が356億円となりました。近年は統廃合が議論されていました。そのため日本のコンテンツが成長するなかで、クールジャパン戦略は失敗しているのではないかと言われています。

ユージ:そういった状況も踏まえたなかで、今回5年ぶりの改定ということですね。

塚越:今回のクールジャパン戦略は50ページを超える資料で、アフターコロナ時代の新たなフェーズについて書かれています。リセットではなく「リブート(再起動)」と定義して、アニメやゲームといった伸びているコンテンツをさらに加速させるということです。今後はアニメやマンガ、食、インバウンドなどを分野横断で推進して、特にコンテンツ産業の海外展開規模を現在の4.7兆円から2033年にはおよそ4倍の20兆円に引き上げましょうと言っています。

政府は「赤字を出していても波及効果や呼び水になるなど無駄ではない。(クールジャパン戦略に)一定の効果はある」と述べていますが、356億円の赤字を出しているわけなので、きっちり検証してから見解を述べてほしいです。

今回の資料には「リサーチ不足や課題があった」と触れていますが、あまり検証という感じではないので、実際にまたクールジャパン戦略にお金を使うとなると、ちょっとどうなのだろうという感じはします。

◆あくまで求められるのは「後方支援」か

ユージ:塚越さんは、今回のクールジャパン戦略の再起動(リブート)をどう見ていますか?

塚越:日本は外に魅力を売る「ブランディング」が上手ではないと言われています。広報戦略は重要だなと思います。韓国なども20年くらい前に政府が資金を出し、コンテンツの輸出に力を入れた結果、「韓流」という言葉が広がりました。

日本の場合は、勝手に伸びるというか、アニメが伸びている状態です。そのため投資するのであれば後方支援に回って、今伸びているものをそのまま伸ばしていくことが大事です。積極的に何か新しく誘致するよりは、そのほうが良いでしょう。そのあたりのお金の使い方をもう1回考えないといけませんし、検証が重要だと思います。


吉田明世、塚越健司さん、ユージ



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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/