ASUSから、「Zenfone 11 Ultra」が登場しました。前モデル「Zenfone 10」はコンパクトなハイエンドスマートフォンでしたが、新モデルは「Ultra」とあるとおり、大画面のハイエンドスマートフォンとなっています。流行のAI機能もふんだんに取り入れたこの新型「Zenfone」をチェックしました。

  • ASUS Zenfone 11 Ultra

    ASUS Zenfone 11 Ultra

ゲーミングとノーマル、選べるハイエンドスマホ

ASUSのスマートフォンは、現在この「Zenfone」とゲーミングスマホの「ROG Phone」の2シリーズを展開。いずれもハイエンドの製品となっています。

それぞれの最新モデルのスペックを比較すると、以下のようになります。

項目 Zenfone 11 Ultra ROG Phone 8
画面サイズ 6.78型 LTPO AMOLEDディスプレイ 6.78型 LTPO AMOLEDディスプレイ
本体サイズ H163.8×W76.8×D8.9mm H163.8×W76.8×D8.9mm
重さ 225g 225g
カメラスペック アウトカメラ: 5,000万画素 広角カメラ (35mm換算:23.8mm相当/F値1.9)、1,300万画素 超広角カメラ (35mm換算:12.7mm相当/F値2.2)、3,200万画素 望遠カメラ (35mm換算:65.3mm相当/F値2.4)、インカメラ: 3,200万画素カメラ (35mm換算:22mm相当/F値2.05) アウトカメラ: 5,000万画素 広角カメラ (35mm換算:23.8mm相当/F値1.9)、1,300万画素 超広角カメラ (35mm換算:12.7mm相当/F値2.2)、3,200万画素 望遠カメラ (35mm換算:65.3mm相当/F値2.4)、インカメラ: 3,200万画素カメラ (35mm換算:22mm相当/F値2.05)
CPU Qualcomm Snapdragon 8 Gen 3 Qualcomm Snapdragon 8 Gen 3
メモリ 12GB/16GB LPDDR5X 16GB LPDDR5X

画面サイズや本体サイズが変わらず、カメラのスペックも同じ。強いて言えば「Zenfone 11 Ultra」にはメモリ容量で12GBモデルがあるほか、ディスプレイのリフレッシュレートが最大144Hzの「Zenfone 11 Ultra」に対して「ROG Phone 8」は最大165Hzという違いはあるものの、基本的に同等のスペックと考えていいでしょう。今回の「Zenfone」と「ROG Phone」は、ゲーム関連機能の有無でどちらかを選ぶ、という形になっているようです。

というわけで「Zenfone 11 Ultra」です。新型となって、デザインも変更されています。「Zenfone 10」は比較的ポップなデザインでしたが、「Zenfone 11 Ultra」ではシャープさもあるデザインに。「ROG Phone 8」と比較すると、カメラ周りのカーブやカラーリングはポップなのですが、背面に施されたラインがシャープさを醸し出しています。

  • 大画面化した「Zenfone 11 Ultra」

    大画面化した「Zenfone 11 Ultra」

  • 背面カラーは全体的にポップですが、シャープなラインが特徴的

    背面カラーは全体的にポップですが、シャープなラインが特徴的

従来はレンズごとに分かれていたカメラ周りのデザインは、カメラ全体を一体とする形状に変更。ASUSのロゴの「A」を模した背面デザインはなかなかかっこいいと思います。

  • 本体背面

    光の加減で浮かび上がる「A」

  • 右側面

    本体右側面にはボリュームキーと電源ボタン

  • 左側面

    反対の左側面はフラット。ハイエンドながらミリ波に対応していない点は残念

  • 天面

    天面はフラット

  • 底面

    底面にはUSB端子、イヤホン端子、SIMスロットが集合。USB端子が向かって左にずれているのはROG Phone 8と同じ内部構造だからでしょう

「コンパクトハイエンド」ではなくなってしまった点は残念ですが、画面が大きくなって各種コンテンツの視聴やゲーム、Webサイトの閲覧など、使い勝手はよくなります。このあたりはサイズ感とのトレードオフなので、賛否の分かれるところではあるでしょう。ただ、「ROG Phone 8」との共通化や大画面のニーズなど、ビジネス的には効果がありそうです。

Snapdragon 8 Gen 3でハイエンドなパフォーマンス

SoCにはSnapdragon 8 Gen 3を搭載。ハイエンドチップを搭載しているので、パフォーマンスは十分。「ROG Phone 8」も同じSoCで、ハイエンドゲーミングスマホと同レベルのパフォーマンスで、様々な用途で十分な性能を発揮してくれそうです。

「ROG Phone 8」との比較でいうと、ゲームのL/Rボタンなどとして利用できる側面の感圧ボタン「AirTriggers」がない、外付けクーラーの「AeroActive Cooler」がないなど、「長時間にわたってハイパフォーマンスを維持してゲームに適した機能がない」といったところが差別化のポイントになっています。

ただし「Zenfone 11 Ultra」でも、ゲーミング機能として、パフォーマンスなどを管理する常駐アプリ「GAME GENIE」を搭載しています。ゲームプレイ時にリフレッシュレートの設定や着信拒否、サイレントモード、パフォーマンスの設定、画面録画などに加え、マクロを設定しての自動処理も可能になっています。

パフォーマンスをチェックするため、ベンチマークテストを行ってみました。

Zenfone 11 Ultra
SoC Snapdragon 8 Gen 3
3Dmark Wild Life Extreme 5,221
Solar Bay 8,722
Steel Nomad Light 1,725
PCMark Work 3.0 20,876
GeekBench Single-Core 2,274
Multi-Core 6,993
GPU(OpenCL) 14,777
GPU(Vulkan) 16,526
GFXBench マンハッタン3.1 7,448
マンハッタン3.1オフスクリーン 16,862
Aztec Ruins OpenGL High Tier 7,140
Aztec Ruins Vulkan High Tier 7,544

例えばグラフィックス性能を測定する3DmarkではWild Life Extremeが5,221、新しいテストであるSolar Bayが1,725、Steel Nomad Lightが1,725でした。同じくグラフィックステストのGFXBenchは、マンハッタン3.1が7,448、同オフスクリーンが16,862と言う結果です。

  • 3Dmarkのテスト結果

    3Dmarkのテスト結果

  • GFXBenchのテスト結果

    GFXBenchのテスト結果

CPU性能を見るGeekBenchだと、シングルコアが2,274、マルチコアが6,993。様々なアプリの動作からパフォーマンスを測定するPCMarkのWork 3.0テストは20,876という結果でした。

順当なパフォーマンス向上を果たしており、性能面での問題はまったく感じません。実際のゲームとしては『原神』も試してみましたが、動作に問題はなく、タッチの反応も違和感はありませんでした。

  • GAME GENIE

    ゲーム機能としては「GAME GENIE」を搭載。ゲームプレイ時に常駐し、各種設定やパフォーマンス設定を簡単に実行できる

リアルタイムの音声テキスト化も通話の通訳もできるAI機能

今回、新たに搭載されたのがさまざまなAI機能です。

まずはレコーダー機能。「Google Pixel」や「Galaxy」にも搭載されている、録音された音声を認識してテキスト化する機能が搭載されています。

  • レコーダー機能

    「Zenfone 11 Ultra」に搭載されたAI機能。「AI文字起こし」はまだベータ版ですが、強力なのが「リアルタイム処理」という点。「Galaxy」は録音停止後に変換作業を行いますが、今回の「Zenfone 11 Ultra」は、音声録音しながらほぼリアルタイムにテキスト変換の結果が表示されます

「ほぼ」というのは、「Google Pixel」ほどはリアルタイムではないということで、一息に話している間は変換されず、わずかに言葉が止まったときに一気に変換される、というイメージ。あらかじめ、AIテキストキット(約3.16GB)をダウンロードしてオンデバイスで変換するので、ネット接続がない状態でもテキスト化してくれます。

  • 文字起こしの結果

    AI文字起こしをした結果。「文字起こし」を見るとリアルタイムに文字起こしが行われています

何度か試してみたところ、ネットに繋がっている方が精度は高い印象がありましたが、これはたまたまかもしれません。いずれにしても、変換精度はそれほど悪くはなく、実用的なレベルだと感じました。

要約機能もあり、録音後のテキストを要約してくれるのですが、これは要約までの時間がちょっと長く、要約と言うよりも「整形」という印象で、冗長な言葉を削って読みやすくしてくれるという感じです。ただ、結果としては非常に読みやすくなるので、時間のあるときに要約をしておくと便利そうです。

  • 要約の結果

    要約の結果。要約とはいえ極端に内容をカットするわけではなく、概要が分かりやすいので便利。ただ、約20分の音声の要約に7分を要しており、それなりに時間はかかります

同様に「AI通話翻訳」も搭載します。これは、音声通話において相互に音声をリアルタイム翻訳してくれる機能です。こちらも事前にAI通話翻訳キットで変換のための言語をダウンロードして実行します。

  • AI通話翻訳の言語選択

    AI通話翻訳を利用する場合、着信側/発信側の言語を設定する必要があります。「レストランの予約電話をする」という場合、発信側(自分)が日本語で着信側(レストラン)が英語などになる形です

  • 「冒頭のフレーズ」設定

    相手が出たときにAI通話翻訳をオンにすると、冒頭にAIが翻訳している旨の音声メッセージが相手に流れる、というのが「冒頭のフレーズ」設定

発着信の場合、いずれでも相手との通話が繋がったら「AI通話翻訳」をタッチします。設定次第ですが、相手側にはAIによる音声翻訳が行われる旨が伝えられ、以降はお互いで話した言葉がそれぞれ通訳されます。

  • 着信画面

    これが「Zenfone 11 Ultra」の着信画面。電話を受けた後にAI通話翻訳ボタンを押すと翻訳が開始されます

  • リアルタイム翻訳の様子

    リアルタイム翻訳の模様。英語できたメッセージに対して日本語で返しています。それぞれの言語を音声認識してテキスト化。それをGoogle翻訳で翻訳して読み上げているようです

こちらが話した言葉はAIが通訳して相手側の言語のAI音声で話されます。相手が話した言葉も同様に通訳されてAI音声で聞こえます。同時に、「Zenfone 11 Ultra」の画面上には認識した音声のテキストと翻訳の双方が表示されます。

実際に試してみると、音声認識で失敗することもあって、その場合に翻訳がおかしくなります。英語の方が正確に認識している印象でしたが、完全に認識が間違った場合、翻訳も当然間違えるため、少し難しいところではあります。これは、同様の機能を備えるSamsungのGalaxy AIの場合でも同様ですが、設定で元の音声と翻訳した音声の双方が聞こえるようにすれば、知っている言語であれば多少は間違いを補正できるかもしれません。

とはいえ、例えばレストランの予約のような、ある程度定型の会話で成立する通話で活用するのであれば、間違いが少ないかもしれません。

  • 通話中の音声設定

    それぞれの音声が流れずに翻訳音声だけが流れる設定と、両方の声と翻訳の双方が流れる設定ができます

他には、AIを使った画像の検索機能である「写真のスマート検索」機能も搭載。「AIイメージキット」をダウンロードすることで撮影した画像を日本語で検索できます。「ラーメン」「猫」「青空」など、被写体やシーンを検出してくれるようで、これまで『Googleフォト』の独壇場だった画像検索が快適に行えます。

  • 画像管理のギャラリーアプリで日本語による検索をしたところ。他にも「夕焼け」「先月」といったキーワードでも検索できます

「AI壁紙」は、「抽象的」「都市」「自然」「SF」などのイメージを選んで、背景/トーン/インスピレーションの3項目を選択すると、それに合わせて生成AIが壁紙を作成してくれるというもの。少し不思議なデザインで、独特なイメージのオリジナル壁紙になります。

  • AI壁紙の設定1

    AI壁紙。まずはスタイルを選びます

  • AI壁紙の設定2

    背景やトーン、インスピレーションの各項目を選択していきます

  • AI壁紙の設定3

    できあがった壁紙

こうしたAI機能は、Googleが一歩先んじていましたが、Galaxy AIに引き続き、ASUSも目立たないながらなかなか優秀なAI機能を搭載してきました。特に、音声録音のリアルタイムテキスト化と写真の検索は便利そうでした。今後も継続的なアップデートで精度向上や機能向上を期待したいところです。

手ブレにも強いカメラ性能

「Zenfone 11 Ultra」はハイエンドスマートフォンとして、当然カメラもハイエンドの性能になっています。

カメラはトリプルカメラで、メインが有効画素数5,000万画素センサーを搭載。レンズは35mm判換算23.8mm相当/F1.9。超広角は1,300万画素センサーでレンズが12.7mm相当/F2.2。前モデルにはなかった望遠カメラは3,200万画素/65.3mm相当/F2.4というスペックとなっています。前述のとおり、「ROG Phone 8」と同じスペックです。

  • カメラ部

    カメラは3つ。メイン/超広角/望遠と並んでいます

  • カメラ部の出っ張り

    カメラ部はそれなりに出っ張っています

メインカメラのセンサーはソニー製のIMX890。ピクセルビニングによって4つのピクセルを1ピクセルとして使うことで画像のノイズ低減やダイナミックレンジ拡大を図っています。記録画素数は1,250万画素になります。

  • 東京駅の撮影例

    雰囲気までよく写しとった描写。細部も問題なくバランスのよい描写となっています

  • マクロの撮影例

    マクロ性能はあまり高くないようですが、色味は自然で安定した描写

画質は細部までよく描写しており、HDRも過剰にならずによく効いています。描写のバランスはよく、シャープネスも適切。昼間の描写には特に問題がありません。超広角カメラや望遠カメラもよく描写されています。特に望遠カメラは32,00万画素をピクセルビニングによって800万画素で記録するため、画質面では有利。望遠カメラはレンズ性能を高めるのが難しく、ピクセルビニングで画質向上を図るのはひとつの手でしょう。

  • 超広角の撮影例

    超広角カメラで撮影。ピクセルビニングではないのですが、明るいシーンでの描写は十分

  • 望遠カメラの撮影例

    望遠カメラで撮影。スマホの望遠カメラとしては優秀な描写です

  • デジタル10倍ズームの撮影例

    意外に実用的なデジタルズーム10倍

  • 夕景の撮影例

    かなり無理のあるシーンでしたが、よく描写してくれました

カメラとしては、「ライトトレイル」機能が珍しい機能。これは夜景撮影時の車のテールランプや花火、川の流れといった、長時間露光での撮影機能をまとめたものです。手持ちで長時間露光のような撮影ができるので楽しい機能です。

  • 通常モードで川の流れを撮影

    通常のカメラモードで川の流れを撮影

  • ライトトレイルモードで川の流れを撮影

    ライトトレイルモードで撮影すると、いわゆるシルキーの表現になりました

  • ライトトレイルモードの用途

    ライトトレイルモードは夜景や花火などのシーンでも役立ちます

  • 細部までくっきりとクリアに描写されています

  • 50MPでの記録も可能。細部の描写はピクセルビニングに劣りますが、健闘しています

「Zenfone」といえば、カメラへのスタビライザー内蔵も特徴ですが、「Zenfone 11 Ultra」も当然のように6軸ジンバルスタビライザー 3.0を搭載。静止画撮影中も効果的ですが、前述のライトトレイルや動画撮影の際に特に威力を発揮します。

  • スタビライザーガイド

    中央のドットを円の中に収めるようにして撮影すると手ブレが抑えられます

  • 静止画でスタビライザーを利用

    動画と静止画の双方で動作します

EIS(電子式手ブレ補正)とスタビライザーを併用する「HyperSteady」を利用することで動画撮影時の強力な手ブレ補正が可能ですが、この場合はフルHD動画までしか対応できません。スタイライザーは8K動画まで利用でき、EISほどの効果ではないのですが画角が狭くならずに撮影できるメリットもあります。

手持ちでパンをする、といったぐらいであればスタビライザーのみでも手ブレが抑えられるので、用途に応じて使い分けると良さそうです。

  • 動画の設定画面

    動画の設定画面。手ブレ補正を「HyperSteady」にすると手ブレ補正は強力になりますが、フルHD/60fpsまで(HDRにすると30fpsまで)の動画になります。「Adaptive」は弱めのEISとの組み合わせなのでバランスのよい補正になります。手ブレ補正オフだとスタビライザーのみになります

全体的にカメラ性能は高く、軽快に撮影できて十分な機能を備えています。ハイエンドスマホとして必要十分なカメラ性能を備えていると言えそうです。

コスパに優れたハイエンドスマホ

「Zenfone 11 Ultra」はハイエンドスマホとしては比較的購入しやすい価格を実現しています。例えばメモリ12GB、ストレージ256GBモデルのASUSストアにおける価格は139,800円で、10万円台後半のハイエンドスマホも増えている中、比較的購入しやすい価格帯です。

コンパクトハイエンドから大画面ハイエンドになったことには残念な気持ちもあります(前モデルの「Zenfone 10」も執筆時点では併売しているようです)が、大画面でコストパフォーマンスに優れたハイエンドスマホとしては十分魅力的な製品だと感じました。