第50期棋王戦コナミグループ杯(共同通信社と観戦記掲載の21新聞社、日本将棋連盟主催)は挑戦者決定トーナメントが進行中。7月16日(火)には羽生善治九段―菅井竜也八段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、菅井流四間飛車を139手で撃破した羽生九段が3回戦進出を決めています。

菅井八段の模索

振り駒が行われた本局は、後手となった菅井八段が角道を止める四間飛車を採用。意表の作戦選択に注目が集まるなか、ミレニアム囲いの応用で独特の囲いを築いたのが手探りの構想でした。金銀の連結がよい点、左銀の活用先をギリギリまで保留できる点がその主張です。

独自の振り飛車陣を見た先手の羽生九段ですが、局面の急所を見抜くのにそう長くはかかりませんでした。自らもミレニアム囲いの堅陣に組んでから角を右辺に転換したのが後手陣中央の弱点を突く揺さぶり。手番を握って角を好位置につければ万全の仕掛けが目前です。

堅陣生かした居飛車の快勝

首尾よく局面の打開に成功した羽生九段は金銀四枚の堅陣を背景に連続パンチを繰り出します。菅井八段の粘りに手を焼きながらも玉側の端攻めを手抜いて右辺の攻め駒をさばいたのが盤面を広く見た好着想。懸案だった右桂がさばけたことで攻めが切れなくなりました。

菅井八段も怪しげな勝負手を連発して勝負を迫りますが、優位に立った羽生九段の指し手に逆転を許すスキはありませんでした。攻めが一段落したところで放った自陣の底歩が決め手で後手の攻めは切れ模様に。終局時刻は20時3分、形勢の開きを認めた菅井八段が投了。

一局を振り返ると、菅井八段が練り上げたオリジナルの振り飛車戦略を羽生九段が緩急自在の指し回しで打ち破った格好。勝った羽生九段は次戦でベスト8入りを懸けて梶浦宏孝七段と顔を合わせます。

水留啓(将棋情報局)

  • 羽生九段は今季8勝1敗と絶好調をキープ(未放映のテレビ対局を除く)(写真は第72期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグのもの 提供:日本将棋連盟)

    羽生九段は今季8勝1敗と絶好調をキープ(未放映のテレビ対局を除く)(写真は第72期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグのもの 提供:日本将棋連盟)