鳥取県境港市にて7月13日、「第2回 内航船員就職セミナー in 境港」が開催された。中国地区内航船員対策協議会が主催するイベントで、昨年と同様、今年も多数の高校生が参加している。
■内航海運業界を知る良い機会に
参加したのは、隠岐水産高等学校、境港総合技術高等学校、浜田水産高等学校のあわせて50名弱の生徒、および保護者と教職員。会場には、西日本(島根県、広島県、岡山県、山口県、福岡県など)に本社を構える内航海運事業者を中心に、30あまりの企業がブースを出展した。
企業の事業紹介が行われるセミナーで、就職には直接は結びつかない。そんな背景から、会場には1~2年生の姿も目立った。保護者が同伴できる、というのも本セミナーのユニークな点。あるブースでは、企業担当者との間で「海に出ると息子さんは3か月、家に帰れなくなりますが大丈夫ですか」「はい。是非、鍛えてやって下さい」といったやり取りが行われていた。
イベントの挨拶に訪れた境港市長の伊達憲太郎氏に話を聞くことができた。「境港は県内でも有数の漁港であり、内航船の貨物の出入りもあります。境港と神戸港を結ぶ国際フィーダー船も定期運航しています」と伊達市長。
船員を志す若者を増やすヒントはあるだろうか。そんな問いかけには「小さい頃から海に親しむことが、大人になって海の仕事に興味を持つきっかけのひとつになるのではと思っています。境港は三方を海に囲まれた立地にありますが、それでも最近の子たちは忙しくて、あまり海で遊ばなくなってしまいました」と話す。
現在、境港市では環境問題を重点政策のひとつとして取り組んでいる。モーダルシフトに貢献する内航海運業界とは、そんな側面からも親和性が高い。
「いま全国には1,718の市町村がありますが、港、の文字を使う町って境港市のほかにないんですね。この地域の港は、豊かな海の恵みとともに発展してきました。だから海を大事にし、海で働く人たちを大事にしています。モーダルシフトを含め、物流の安定、港の発展など、内航海運業界に対する期待は大きいです。海に携わる若い担い手がしっかり育ってくれることを願っています」(伊達市長)
会場では、隠岐水産高等学校の生徒を引率する大門伸之先生にも話を聞いた。「親御さん同伴で会社見学に行くことはありますが、こうして親子で参加できる就職セミナーは珍しいです。会社を探している段階から親子で同席して、担当者から詳しい話を聞けるのはとても有意義に思います」と大門先生。保護者からも好評です、と笑顔を見せる。
「生徒の多くは、まだ海の仕事に対する憧れだけでこのセミナーに来ています。でも実際に現場で働いている先輩たちから話を聞くことで、具体的な未来像が描けるようになるし、今後、資格取得などの勉強にもやる気が出るでしょう。その意欲が将来の進路にも良い影響をおよぼしてくれたらと思います」(大門先生)
就職に際しては憧れだけで企業を決めず、必ず「やっていけるだろうか」と不安を感じてほしい、とも話す。「仕事する姿がかっこいい、お給料が良い、お休みが長い、といった良い面だけにとらわれずに『悪い話も聞きなさい』ということですね。もしかしたら辛い業務、危険な業務があるかも知れない。ブースで悪い話を聞いたうえで、それでもそこに就職したいと思えるのなら、入社後のミスマッチもなくなり、離職のリスクも低くなるでしょう」と大門先生。生徒たちの、その先の人生を思いやった。