なぜ梅雨明け後の手入れが大事なのか

梅雨時期は雨が続き、野菜の病気が発生しやすかったり、雑草は伸びやすかったりと、野菜にとっては過酷な環境になりやすいです。にもかかわらず、雨のせいで畑の手入れがおろそかになることも多く、野菜の変化への対応が遅れがちです。また、急激な湿度や気温の変化も野菜にとっては大きな負担になるので、この環境の変化にも対応していく必要があります。対応次第で後々の畑の手入れが楽になるだけでなく、秋冬野菜の出来にまで関係してきますので、梅雨明け後早めの時期の手入れをオススメしています。

1)水の流れを整える

雨の後は畑のどこに水がたまりやすいか観察する良い機会になる

梅雨時期に自分の畑の中で、どこに水がたまりやすいのか、植物が腐りやすい箇所や生育の悪い箇所はどこなのかなどをヒントに、土の中の水の流れを把握しておき、梅雨明け後に畑周囲の水路整備を行っておくとよいかと思います。すでに溝を掘っているという人も、きちんと水が流れているか、答え合わせとして確認しておくとよいでしょう。

特に元田んぼの畑など、もともと水はけの悪い土地では、どうしても水がたまりやすい条件にあり、水が動かない環境を作ってしまうと野菜の病気や生育障害が起こりやすくなります。ですから、少しずつでも良いので、水が動いていくような環境を作っておくことが大事になってきます。

基本的には、その土地の一番低い地点に水が流れていくように少しずつ傾斜をつけながら、畑の周囲四辺に溝を掘っていきます。ただし、傾斜地の畑などは、水が勢いよく流れすぎても、逆に土の流出を招くことになりますので、緩やかな傾斜で流れていくように気をつけるとよいかと思います。

2)病気になった野菜の手入れ・片付け

病気の症状が出ているキュウリの葉

梅雨時期に病気になった野菜や腐敗してしまった野菜は、そのままにしておくと、さらに病気が広がったり、病原菌の温床になってしまったりすることがあるので、早めに対応しておくことが必要です。

まず、野菜に病気の症状が出たけれども、まだ野菜が生きている場合には、病気の症状が出た葉のみ、取り除くかどうかを検討します。注意しなければいけないのは、病気の症状が少しでも出たからといって、むやみに除去してはいけないということです。特にうどん粉病やベト病などのカビの病気は、初期症状であれば木酢液などを散布することで回復するか、もしくは病状の進行が止まることがあります。それなのにむやみに葉を取り除きすぎると、光合成によって作り出すエネルギーが枯渇し、余計に弱ってしまいかねないからです。病気の種類や野菜の健康状態によっても対応が変わりますが、基本的には葉の半分以上が枯れるか腐っている場合にのみ、取り除くようにするとよいかと思います。

また、すでに株ごと枯れたり、株全体に病気の症状が出てしまったりしている場合には、諦めて片付けていきます。病気になった野菜残渣(ざんさ)をそのまま土壌にすき込んでしまうと、土壌伝染性の病原体であった場合に余計に病気を広げてしまう可能性があります。最も無難でオススメな処理方法は堆肥(たいひ)化させることです。50〜60度まで温度を上げればほとんどの病原菌は死滅すると言われていますので、安心して土に返すことができ、同時に土づくりを行うことができます。僕の畑では堆肥枠を作っておき、野菜残渣はいつでもそこに入れられるようにしています。

残渣の量が少ない場合には、病気になった株もそのまま土の上に刻んで、野菜から離れた場所に敷いたりすることもあります。十分に土づくりが進んでいて土壌微生物が多く、腐敗しにくい環境であれば、その方法でも問題ないと考えています。

3)地温上昇や乾燥を防ぐ

イネ科雑草でマルチングしている様子。地温上昇も防げて、雑草抑制、土づくり効果もあるのでオススメ

梅雨明け後は日射が強くなってきます。黒いビニールマルチをしていたり、土が裸の状態になっていたりすると、地温が上昇しすぎることによって、野菜の生育に障害が出ることや、地表面付近が乾燥してアブラムシなどの害虫が発生しやすい環境になってしまうことがあります。稲わらや雑草、落ち葉などの有機物資材を用いたマルチングであれば、地温が上がりにくい環境を作れます。雑草を敷く場合は、特にイネ科雑草ですと分解が遅く、長期間安定して土の保湿を行ってくれるのでオススメです。

また、生きた植物も土壌表面に日陰を作るだけでなく、朝露を発生させるなどして土を保湿する機能が高いです。梅雨明け後に野菜の周りの草を刈りすぎてしまうと、土の乾燥が一気に進むことがあります。野菜の根元付近は風通しと日当たりを良くしておく必要はもちろんありますが、野菜の生育に邪魔にならない程度であれば、生きた草をそのまま残しておいたり、根元だけ残しておいたりする方が野菜の生育が良いことがありますので、意識してみてください。

4)秋に向けての土づくり

畝の上に雑草や野菜残渣を積み重ねておくだけで土づくりになる

梅雨明け後の時点で、野菜が枯れてしまったり、収穫が終わるなどして、何も野菜を栽培していない畝も出てくるかと思います。その際に土が裸の状態のままですと、土は太陽光と雨風にさらされてどんどん風化していきます。せっかく土づくりしたのに、土の中の有機物が分解されて鉱物だけの状態に戻ってしまうわけです。土づくりというと資材を足すことだけに意識が向きがちですが、このロスしてしまう分を見落としている人はとても多いのではないかと思います。

そこでオススメなのが、その空いている畝の上に刈り取った雑草や野菜残渣を積み上げておくことです。さらにそこに米ぬかも混ぜておくとより発酵が進みます。こうすることによって、土の風化を防ぎつつも堆肥づくり、土づくりが同時にできるわけです。秋野菜を植える1カ月以上前にこれをしておくだけでも、かなり土づくりが進みます。
注意点としては、野菜残渣だけですと、水分量が多すぎて腐敗してしまうことがあります。その際は身近にあるイネ科雑草や落ち葉、もみ殻くん炭などを合わせた状態で敷き重ねておくことで、空気層が保ちやすくなり、腐敗を防ぐことができます。

結果を受け入れて、次につなげる準備をしていきましょう

梅雨明け後の時期は、良くも悪くも今までの手入れの結果が表れてきやすい時期です。病気になったり、雑草に負けてうまく育たなかったりすることもあるでしょう。暑い中での作業の大変さも相まって、この時期に心が折れてしまう家庭菜園初心者は多いように感じます。しかし、畑づくりに失敗はつきものであり、失敗したときこそ、畑の状況や課題が分かる絶好の機会ですので、失敗した部分は今後の糧にして、秋冬の栽培に備えてできることを少しずつしていきましょう。