ダイキンはこのほど、エアコンの節電実験を実施。その結果をもとに、節電につながる上手なエアコンの使い方を公開した。
「熱中症」の救急搬送者の4割以上は"住居"で発症
7月に入り、最高気温が30度を超える日が続いている。消防庁が昨年行った調査では、7月上旬時点で熱中症による救急搬送者数が増加し、8月に入る直前が最も搬送者数が多くなっている。熱中症というと、屋外の炎天下での発症をイメージすることが多いが、実は救急搬送者の4割以上は住居で発症をしていることが分かっており、「室内熱中症」のリスクも注意が必要だという。
外出を控え、室内で過ごしていれば、エアコンを使わなくても「室内熱中症」にならないと思うかもしれないが、高齢者は体が暑さを感じにくいため特に注意が必要。もう1つ、夏場にエアコンを使用していない人の理由として考えられるのが「電気代」。物価高などの影響から、できるだけ生活費を抑えようと、我慢できる日はエアコンを使用しないという選択をとっている生活者もいるかもしれないが、室内熱中症対策のためにも今の時期はエアコンをつけることが重要となる。そこで今回、ダイキンがエアコンの節電実験を実施し、節電につながる上手なエアコンの使い方を公開した。
検証1・エアコン冷房の風量設定は「弱」と「自動」でどちらが節電?
エアコン冷房の風量設定「弱」と「自動」それぞれで、日中11時間(8:00~19:00)つけっぱなしにして消費電力量を計測し、1カ月あたりの電気料金の違いを調査した。(同じ条件の日が30日(1カ月)続いたと仮定した場合の金額となる)
エアコン冷房の風量「弱」と風量「自動」の消費電力量を比較した結果、風量「弱」が3.85kWh、「自動」が2.79kWhとなり、風量「自動」の方が消費電力量が約3割少ないという結果となった。1カ月換算では、風量「自動」は「弱」と比べて電気代が約990円の差になる。吹出口からの気流が弱い風量「弱」の方が節電につながりそうに思えるが、今回の調査では、風量「自動」の方が節電につながる結果となった。
このような結果になる理由は、風量「弱」にすると、室内機の中にある冷たくなった熱交換器を通過する空気の量が減り、部屋の中を涼しくするのに時間がかかるからだという。そのため、風量「自動」に比べて風量「弱」の方が、圧縮機の運転にかかる負荷が増加し、より多くの電気を使ってしまうことに。
検証2・エアコン冷房の風向設定は「ななめ下」と「水平」でどちらが節電?
エアコン冷房の風向設定「ななめ下」と「水平」それぞれで、日中11時間(8:00~19:00)つけっぱなしにして消費電力量を計測し、1カ月あたりの電気料金の違いを調査した。(同じ条件の日が30日(1カ月)続いたと仮定した場合の金額となる)
エアコンの冷房運転時の風向「ななめ下」と「水平」の消費電力量を比較した結果、「ななめ下」が3.76kWh、「水平」が2.77kWhとなり、風向「水平」の方が消費電力量が約3割少ないという結果に。1カ月換算では風向「水平」は「ななめ下」と比べて電気代が約930円の差になる。人がいる場所に冷たい風を直接送る「ななめ下」の方が節電につながりそうに思えるが、今回の調査では、風向「水平」の方が節電につながる結果となった。
このような結果になる理由は、冷たい空気は重く、床付近にたまる性質があるからだという。風向を「ななめ下」にすると床付近に冷たい空気がたまる一方で、天井付近には暖気がたまりる。一般的なエアコンは、高い位置にある室内機内部の温度センサーで室温を判断する。天井に暖気がたまっていると、床付近が十分涼しくなっていても、エアコンはさらに部屋を涼しくしようと必要以上に運転してしまう。風向を「水平」にすると、冷たい風が天井付近から床方向に自然に下りていくので、余計な電力消費を抑えながら、部屋全体を涼しくすることができるという。
検証3・設定温度を「1度下げる」のと、風量設定を「強」にするのとでは、どちらが節電?
エアコン冷房を使っていても暑く感じることがある真夏の日中(13時~15時)、設定温度を1度下げるのと、風量設定を「強」にするのとでは、どちらが節電になるのか、消費電力量を計測し、電気料金の違いを調査した。
エアコンの冷房を使っていても暑さを感じる時、設定温度を下げるのが一般的だが、実は、風量を「強」にすることでも涼しさを感じることができる。設定温度を1度下げた場合と風量を「強」にした場合の消費電力量を比較した結果、設定温度を「1度下げる」と1.13kWh、風量「強」にすると0.52kWhとなり、風量「強」は、設定温度を「1度下げる」場合と比べて消費電力量が約半分になった。
このような結果になる理由は、設定温度を下げたとき、エアコンは室内の空気中からより多くの熱を集めるため、圧縮機の運転を強めるからだという。一方で、風量を「強」にすると室内機のファンの音が大きくなり、電気をたくさん使っているように感じるが、ファンが使う電力は、圧縮機が消費する電力と比べるとわずか。人の体感温度は、室温だけでなく、湿度や気流によっても変化する。室温を下げる代わりに風量を強くすることで体感温度が下がり、涼しく感じられるという。
検証4・室外機の上に濡れタオルは、「あり」と「なし」でどちらが節電?
エアコンの室外機に濡れタオルを被せると節電になるかどうかを検証した。室外機の上の濡れタオル「あり」と「なし」それぞれで、日中11時間(8:00~19:00)つけっぱなしにして消費電力量を計測し、1カ月あたりの電気料金の違いを実験した。(同じ条件の日が30日(1カ月)続いたと仮定した場合の金額となる)
室外機の上の濡れタオル「あり」と「なし」で比べたところ、消費電力量は濡れタオルを被せた「あり」の場合3.87kWh、「なし」が2.77kWhとなり、今回の濡れタオルの被せ方の場合、濡れタオルが無い方が消費電力量は約3割少ない結果になった。1カ月換算では、電気代が約1,020円の差になる。
このような結果になる理由は、濡れタオルが室外機側面の吸込口や吹出口の一部に垂れ下がり、空気の通り道をふさいでしまったためと考えられる。エアコンは、室外機の吸込口や吹出口の空気の流れを妨げられると運転効率が落ち、その分余計に電力を使ってしまう。室外機の上に置いたタオルが乾いて室外機側面に大きく垂れ下がると、吸込口や吹出口のより多くの範囲をふさいでしまい、さらに効率が低下してしまうので注意が必要だという。また、室外機に物を載せると、落下の危険や、重さによっては室外機の変形や故障などにつながる場合もある。
エアコンは、室外機周辺の空気の温度や、室外機の側面や背面にある熱交換器の温度が下がれば、効率的な運転につながる。そのため、室外機に日陰を作ったり、室外機周辺に打ち水をしたりすると節電効果が期待できる。
なお、今回の調査結果は、室外機の上に設置した濡れタオルが室外機の吸込口や吹出口の風の流れを妨げたことで運転効率が低下した可能性を示唆するもので、室外機の上に濡れタオルを設置すると必ず消費電力量が増加することを示すものではない。
検証5・夏の睡眠時のエアコンは「切タイマー運転」と「つけっぱなし運転」どちらがおすすめ?
夏場の睡眠時にエアコンを使う際のおすすめは「切タイマー運転」(就寝後3時間でエアコンOFF)か、朝まで「つけっぱなし運転」か調査した。
睡眠時にエアコンを「つけっぱなし運転」にすることに抵抗を感じて「切タイマー運転」を使う人は多いかもしれない。今回の調査では、朝までエアコンをつけっぱなしにする「つけっぱなし運転」と切タイマーを使って就寝3時間後にエアコンを切る「切タイマー運転」それぞれで室内のWBGTの変化を計測しました。「つけっぱなし運転」ではWBGTに大きな上昇は見られなかったのに対して、「切タイマー運転」の場合はエアコン停止後にWBGTが徐々に高まる結果となった。
就寝中にエアコンがオフになると、明け方にはWBGTが熱中症への警戒が必要とされる値まで達する可能性がある。気温や湿度の高い日は適度な温度設定で、朝まで「つけっぱなし」にした方が快適な睡眠につながるといえそうだ。
なお、今回の調査結果はあくまでもひとつの目安。住環境や気温などによって結果は変化する。