藤井聡太王位に渡辺明九段が挑戦する伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦七番勝負(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は、藤井王位先勝で迎えた第2局が7月17日(水)・18日(木)に北海道函館市の「湯元 啄木亭」で行われます。注目の対局を前に見どころをおさらいします。
先手番は渡辺九段の土俵
ともに第1局以降初となる対局。藤井王位の投了間近の場面で渡辺九段が詰みを逃すという衝撃の逆転劇になった前局ですが、その内容では渡辺九段にも手ごたえがあったはず。後手番で左美濃の秘策を打ち出し藤井王位得意の早繰り銀の速攻を許さなかったのがその始まりです。
首尾よく千日手に持ち込んだ渡辺九段、指し直し局では持ち時間のリードを生かして先攻します。前例の無い桂跳ねの研究手から先手番らしい攻め将棋を展開したのが十八番の展開で、再度渡辺九段先手で迎える第2局でも深い研究に基づいた積極的な指し回しが予想されます。
終盤のドラマは過去にも
両者の勝負を語るうえで欠かせないのは昨年の第81期名人戦七番勝負(藤井が奪取)。唯一の勝局となった第3局も渡辺九段の先手番でした。矢倉対雁木の持久戦に進んだ対局は渡辺九段が自陣の堅さを生かして快勝。藤井王位の攻め急ぎをとがめたのが勝因となりました。
また、このふた月前に行われた第48期棋王戦五番勝負(藤井が奪取)の第3局では藤井王位が珍しく詰みを逃して敗れる一幕も見られました。もっともこれは渡辺九段が局面をリードしながら着地寸前に一瞬のスキを許したもの。一分将棋のドラマは最後まで目が離せません。
戦型は相掛かり系か
最後に戦型について触れておくと、渡辺九段の直近の先手番作戦は相掛かりと(青野流を除く)横歩取りが主軸。後手から急戦を仕掛けられる矢倉や研究合戦が過熱する角換わり腰掛け銀は回避されるものと見られます。ただし角換わりでも早繰り銀は一考の余地があるのかもしれません。
このように第2局では、渡辺九段の研究に基づく相掛かり先攻策と激戦の終盤という二つのテーマが大きな見どころとして見込まれます。藤井王位が2連勝を飾るか、渡辺九段がタイに戻すか。注目の対局は森内俊之九段の立会のもと7月17日(水)9時に開始されます。
水留啓(将棋情報局)