俳優で歌手のディーン・フジオカが2004年に香港で芸能活動をスタートさせてから今年で20周年。2013年に日本での活動を開始してからは11年となる。現在は日本を拠点に、引き続き海外でも活動を続けており、6月21日から配信されたNetflix台湾ドラマ『次の被害者』シーズン2では、検察官の張耿浩(チャン・ゲェンハウ)役を全編中国語セリフで演じ、エンディングテーマに起用された新曲「In Truth」を6月28日に配信リリースした。この楽曲について「1つのターニングポイントになった」と語るディーンは、音楽活動において新たなフェーズに踏み出そうとしている。

  • ディーン・フジオカ

    ディーン・フジオカ 撮影:辰根東醐

最初はまず俳優として『次の被害者』のオファーを受け、その撮影期間中に出しどころを考えず純粋に作っていた曲が、結果的にエンディングテーマになったという。

「俳優として撮影している日々の中で、空き時間にホテルでラップトップとスマホを使ってデモを作っていて、それが後に『In Truth』という曲に。主題歌をオファーされ、デモを聞いてもらったときに『In Truth』がハマるのではないかという話になり、そこから作品により合うような形でアレンジを詰めて仕上げました」

『次の被害者』の撮影中に作った曲だったため、自然と作品と合致するものになっていたのではないかとディーンは語る。

「主題歌のオファーをもらう前の段階で歌詞もメロディもできていて、ほぼそのまんまです。もちろんアレンジは全然違いますが、曲の構造や歌詞の世界観、メロディはほぼ変わっていません。無意識に影響を受けて作品に寄ったものになっていたのだと思います」

本当の自分と向き合う大切さなどが込められた「In Truth」。ディーン自身、自分と向き合いながら曲を作ったという。

「撮影期間の2カ月ずっとホテル滞在で、もちろん撮影の時は外に出ますが、それ以外はずっとホテルの中にいる生活でした。ホテルの中は必要最低限のものしかないから、バスルームとかで鏡に映る自分以外、他人がいない。だから、自分と鏡に映っている自分の対話というようなテーマで曲を作り始めました」

  • 『次の被害者』シーズン2で検察官の張耿浩役を演じたディーン・フジオカ

日本での音楽活動10周年を迎えた昨年は、自身初のベストアルバムをリリースし、日本武道館ライブも開催したが、「In Truth」を作っていた期間はちょうどベストアルバムの曲順を考えていたタイミングだったという。

「2枚組で全28曲。選曲して並び替えて、メビウスの輪みたいな星座の物語が作れたらいいなと思ってやっていましたが、音楽活動を振り返るいいきっかけに。なんで今まで苦しい思いをしながら音楽を続けてきたのか。もちろんやりたいからやっていて、やらないわけにはいかない衝動や渇望があるからやっているわけですが、これから自分の音楽とどう向き合っていくんだろうと考えさせられ、『In Truth』はそういう時に作った曲だったので、自分と対話するというコンセプトも含めて、すごくいい再構築の期間になったと思います」

そして、「In Truth」を作り終えて、音楽活動に対する思いに明確な変化があったと明かす。

「それまでは楽曲を作ることに必ず携わるようにしていました。自分でやることもあれば、誰かとコライトすることもあれば、いろんな作り方を試してきましたが、『In Truth』を作った時に、こういうものを作りたいと思ったものが、それに近い形でスムーズに表現できて、もしかして作ることにこだわらなくてもいいのかなと思えたんです。音楽を作る自分なりのパレット……道具のセットみたいなものが出来上がった感覚になり、1つのチャプターが終わった感じがしました」

音楽活動の集大成とも言える楽曲が完成したことで、作詞作曲に対する執着がなくなり、歌い手に集中したいと思うように。

「自分が作詞作曲に関わるのではなく、歌い手として何ができるんだろうと、歌い手としての自我が初めて芽生えました。今まで何十曲もリリースし、ベストアルバムを新曲を入れる形で作り、全曲何かしら制作過程に必ず自分が関わっていたので、そこに対する執着を手放してもいいぐらい何か自分に対して証明できたのではないかなと。これからは歌うことにもっと特化していきたいと心から思えるようになり、そういう意味でも『In Truth』は1つのターニングポイントになった曲だなと思います」

  • ディーン・フジオカ

歌うことに特化することで、新たな可能性が広がるのではないかと期待している。

「誰かが自分のために作ってくれた曲を歌い手として表現することで、自分が制作に関わってきた曲とはまた違う表現で、さらに可能性を膨らますことができるかもしれないなとワクワクするように。さらに作詞作曲について掘り下げてくというキャリアもあると思いますが、自分はそれよりも歌い手としてもっと大きく成長していきたい。今まで気づけなかった何か新しい可能性があるのかもしれないと思えたんです」

新たな自分が引き出されることを期待するディーン。歌い手としてどのようになっていきたいか尋ねると、「まだざっくりしていますが、もっとバラードを歌いたいという思いがあります」と答え、「歌い手としての表現が求められるような楽曲を今後たくさんやっていけたらいいなと思います」と語った。