欧州連合(EU)の欧州委員会は、米Appleが自社のモバイル決済技術(NFCアクセス)を欧州で今後10年間にわたり、無料で競合他社に開放することを承認したと現地時間7月11日に発表した。
Appleは、店舗でのiPhoneによる非接触型決済に使われる近距離無線通信(NFC)技術をサードパーティーのモバイルウォレット開発者へ開放し、NFC入力(NFC input)に無料でアクセスできるようにすることを約束。ホストカードエミュレーションモード(HCE)でNFCへのアクセスを有効にすることや、iOSが備えるFace IDやTouch IDといった認証ツールの関連機能を利用可能にすること、ユーザーがデフォルトの支払いアプリを簡単にサードパーティのウォレットへ設定できるようにするという提案も盛り込まれている。
欧州委員会はこれを、Appleに対して法的拘束力のあるものにすることを決定。欧州経済領域(EEA: European Economic Area)に拠点を置くすべてのサードパーティのモバイルアプリ開発者と、EEAに登録されたApple IDを持つすべてのiOSユーザー(一時的にEEA外に旅行している場合も含む)に適用する。
通常、iPhoneユーザーはApple Pay(Appleのモバイル決済サービス)を利用して店舗やオンラインでさまざまな商品・サービスの代金を支払える。
iPhoneと決済端末の間で用いられるNFC技術(iPhoneにおける“tap and go”技術)を、Appleがサードパーティのモバイル ウォレット開発者に提供していなかったとして、欧州委員会は2020年6月にAppleの行為に関する独占禁止法調査を開始。
2022年5月にはAppleに異議申立書を送付しており、同委員会は「Appleが、iOS上のNFC入力(NFC input)をApple Payのみに留め、競合他社に提供することを拒んだことは、支配的地位の乱用にあたる」と暫定的に結論付けていた。
欧州委員会の競争上の懸念に対処するため、Appleは本件に関する複数の約束を委員会に提示。委員会は、市場テストを行ってこの懸念が解消されるか確認し、その結果を踏まえてAppleが当初の提案を修正した約束をあらためて提示した。
欧州委員会は、Appleが出した最終コミットメントにより、サードパーティのモバイルウォレット開発者に対してNFC決済へのアクセスをAppleが制限していることについて、競争上の懸念を解消するものと結論づけ、調査を終了した。この取り決めは10年間有効で、EEA全体に適用。実施状況はAppleが任命した監視受託者によって監視され、同期間にわたって委員会に報告される。