アマゾンが7月9日に発表した、ディスプレイ付きのスマートスピーカー「Echo Spot(2024年発売)」。プライム会員であれば発売記念セール価格の5,980円(48%オフ)で購入できるということで、さっそく入手して半日ほど使い勝手を試してみた。
Echo Spotといえば、丸いディスプレイを搭載した同名製品が2017年に海外発表され、国内でも翌2018年に発売されている。当時は丸型ディスプレイを載せたスマートスピーカーが珍しかったこともあって、発表会で注目を集めていたと記憶しているが、個人的には実機を見て「UIがこなれていなくて使いにくそうだな」という感想を抱いたのも確かだ。実際、Echo Spotはシリーズ化することもなく、しばらくして姿を消した。
あれから6年ほど月日が流れて“復活”を果たした「Echo Spot(2024年発売)」は、アレクサスマートスピーカーのエントリー機として2023年に登場した「Echo Pop」とよく似た佇まいだ。球体を斜めにカットしたような半球型デザインを継承しており、カラーバリエーションはブラック、グレーシャーホワイト、オーシャンブルーの3色展開。今回はさわやかなオーシャンブルーを買ってみたが、発表・発売開始したその日の夜にはもう実機が手元に到着。アマゾン配送網の威力にあらためて驚かされた(筆者の自宅の最寄りにアマゾンの大型倉庫があることも影響しているとは思う)。
さっそく開梱してみると、中身はEcho Spot本体と、付属品の15W電源アダプターだけとじつにシンプルな製品構成。本体前面はツヤありの黒いパネルとスピーカーの音を通すパンチングメタルで構成されていて、角度を変えながらディスプレイ部を見てみると、小さな四角いタッチパネルが埋め込まれているのがうっすら見えた。
上面には音量調整ボタンとマイクミュートボタンを備え、エンボス(凹凸)加工が施されているので、目をつぶってもどのボタンを操作しているか分かりやすい。デザインもそうだが、操作系もいたってシンプルだ。本体サイズと重さは113×103×111mm(幅×奥行き×高さ)/405g。
IEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠の無線LAN(2.4/5GHz対応)とBluetooth機能を備え、スマートホームデバイスの標準規格「Matter」もサポート。プライバシー配慮として、マイクのオン/オフボタンや音声録音の削除機能などを装備する。カメラは非搭載だ。
なお、Fire TVシリーズやKindleシリーズなどAmazonデバイスをすでにホームネットワークに接続していて、ネットワーク認証情報をアマゾンアカウントに保存している場合、Echo Spotを自動的にそのネットワークに接続してセットアップを自動で進められる。「フラストレーションフリーセットアップ」と呼称されている仕組みで、Echo Spotの使い始めのハードルが低いのはうれしいポイント。
これを有効にするのに特に難しいことはなく、アマゾンで製品をカートに入れるときに「デバイスをAmazonアカウントにリンクする」にチェックをいれるだけでよい。ただこの項目、「カートに入れる」ボタンのすぐ近くにあるとはいえ案外目立たないので、決済時にも再度同じ項目にチェックが入っているか確認できるようにしてもらえれば、さらに親切になると思う。
せっかくなので、新しいEcho Spotを手元にあるEcho Popとも並べてみた。Echo Spotは、Echo Popよりもひとまわりほど大きなサイズ感で、卓上に置くと存在感がある(それでも、四角いEcho Showシリーズよりはコンパクトだが)。
Echo Spotのいいところは、アレクサとさまざまな会話をするときにアニメーションを画面表示してくれる点。その日の天気をたずねると、太陽や雲のアイコンとともに最高気温・最低気温をなめらかな動きでスッと見せてくれるし、「ありがとう」と話しかけると音声だけでなく、画面上でもリアクションを返してくれる(この場合はハートマークを返してくれた)。何気ない反応ではあるが、アレクサとの会話に彩りを添えてくれる良い機能だと思う。
ディスプレイの解像度は、スペック表によると2.83型/320×240ドット。かつてのQVGA液晶を搭載したフィーチャーフォンレベルの表示クオリティではあるが、なめらかなアニメーション表示のおかげもあり、画質に不満はない。アニメーション表示はセットアップ時にも登場し、“使い始めまで待たされている感”がそれほどなかったのも良かった。
欲を言えば、この画面で「Ring」シリーズのドアベルが押されたときにカメラ映像をチェックできたらよかったが、残念ながら「Echo Spotはカメラ表示には対応していない」とアレクサに断られてしまった。
アマゾンではEcho Spotを置き時計のような“スマートアラームクロック”としてアピールしている。目覚まし時計として使えるアラーム機能を備えており、アラーム音は通常のものに加えて「オーロラ」、「デイブレイク」、「エンデバー」、「フラッター」という4つの新しい音を追加。アラーム音が鳴ってももう少し眠っていたいときは、Echo Spotの上部をタップしてスヌーズできる。アラーム機能はまだじっくり使えていないので、今後試してみたい。
ちなみに、時計の文字表示は好みに合わせてカスタマイズでき、6種類の表示パターンと6つのカラー(オレンジ、バイオレット、マゼンタ、ライム、ティール、ブルー)から好きなものを選べる。明るさも調整可能だ。
サウンド面も十分に満足できるクオリティだ。1.73インチの前面放射型フルレンジスピーカーを搭載しており、Amazon Musicからいくつか曲をかけてみると、どんなジャンルでもそつなくならしてくれる印象。特にボーカルや人の声が聞き取りやすく、情報量もこのサイズのスピーカーとしては十分だと感じる。ラジオ番組的なコンテンツや、ポッドキャストを“ながら聞き”するのにもちょうど良いだろう。
アルバムアートと再生コンテンツの名前を画面に表示してくれるので、オススメプレイリストを流してるときなど「この曲なんだっけ?」と気になったときにすぐチェックでき、「別の曲までスキップしたいな」と思ったときも画面をタップして操作すれば良いだけなので、いちいちスマホを開かなくてすむ。便利でよい。
しばらく聞いてみたが、手元のEcho Popと比べると、Echo Spotはやや低音を誇張するクセがあるように思う。このあたりはユーザーや使用環境によっても印象や評価が分かれると思うが、アレクサアプリにはイコライザー機能があるので、サウンドを調整したい人はぜひ試してみてほしい。筆者は中高域を少しだけ持ち上げる設定に変えてみたところ、しっくりくるサウンドになった。
Echo Spotは、アレクサ対応のスマートホーム製品を操作する小さな窓口としても役に立つ。スマートフォンを使ってアレクサアプリから定型アクションをあらかじめ設定する必要はあるが、好きな音楽と照明の光で朝の目覚めをうながしたり、就寝時間にあわせて照明の明るさやエアコンの温度を調整しつつ音楽を聴く……といった設定もできる。
最後に、Echoシリーズの個人的オススメ設定も紹介しておきたい。
まず、アレクサに声をかけたときと操作終了時の“リクエスト音”を鳴らす設定は、どちらもオンにしておいたほうがよい。アレクサが会話できる状態/会話を終えた状態になっていることを耳で確認できるし、なによりも話しかけたときに反応が返ってくるのは心理的な安心につながる。
アレクサの音声は2023年から、女声(標準)と男声(新着)が選べるようになっているが、これは好みで切り替えると良いだろう。柔和な女声もいいが、ハキハキと反応してくれる男声もなかなかいいものだ。アレクサの話す速度も調整でき、アレクサの声の速さについて行けない……という向きに優しい設定だと思う。そして、「アレクサ」と一度呼びかければ以降はウェイクワードを省略して話せる会話継続モードをオンにしておくことも大事だ。
本体サイズが小さいのでベッドサイドでもさほど場所をとらず、画面もまぶしいほどの明るさというわけでもない(周囲の照明を落とせばさらに暗くなる)ので、ニーズにマッチすれば結構役に立ちそうだ。個人的には昨年のEcho Popに続き、今回のEcho Spotもいい買い物をしたと思っている。
11,480円という価格をどう考えるかは難しいところだが、7月17日23時59分までは半額に近い5,980円で買えてしまうので、“気になったら即買い”できてしまう絶妙な値付けだと思う。毎日アレクサと話したい筆者としても「プライム会員なら48%オフか、なら買うか」と即決してしまった。プライムデーが終わった後も、アマゾンの大規模セールの定番商品として今後入ってくると思われるので、今すぐ購入に踏み切れないという人も、カートに入れて様子を見ておくと良いのではないだろうか。