モトローラ・モビリティ・ジャパンから7月12日に発売予定のAndroidスマートフォン「motorola edge 50 pro」を一足先にお借りして試用しました。
ソフトバンクからも「motorola edge 50s pro」として登場予定の本機種は、Qualcomm Snapdragon 7 Gen 3を搭載するミドルハイレンジの5G対応スマートフォンです。125Wの急速充電が可能で、おサイフケータイやIP68防塵・防水にもしっかり対応。
十分な基本性能と充実した機能を備えながら、直販サイト「moto store」の価格で79,800円と、昨今のハイエンドスマートフォンと比べればグッと手の届きやすいバランスに優れた機種となっています。
まずは外観からチェックしていきましょう。
画面サイズは6.7インチで、左右の端をカーブさせたいわゆるエッジディスプレイを採用。背面パネルも逆方向にカーブしているため両サイドが薄く絞り込まれており、しっとりとした手触りのヴィーガンレザーを用いた背面の質感と相まって、持ちやすく手に馴染みます。
全体のフォルムや素材の組み合わせは先代のedge 40シリーズから大きく変わっていませんが、カメラ周りの突起部が滑らかで一体感のある形状に代わり、もう一歩洗練されたように感じました。
試用機のカラーは「ブラックビューティ」で、このほかに「リュクスラベンダー」があります。また、edge 50s proではソフトバンク限定色として「バニラクリーム」が加わります。
サンドブラスト仕上げ(つや消し)のアルミフレームとヴィーガンレザーを組み合わせた質感の高さは各色同様ですが、最近のモトローラ製スマートフォンに多用されている“ヴィーガンレザー”は言ってしまえば「革っぽいシボ加工が施されたラバー調の樹脂」で、シワ模様があまり深くないこともあって長期使用時の劣化は気がかりなところ。
先代のedge 40を1年前の発売直後から使っている友人がいるのですが、やはり端の方から擦れて模様が消えたりテカりが出てきてしまっているのが気になる様子。長くきれいに使いたい人はケース装着推奨です。
スペックの評価に入る前に、ネーミングが少し複雑なので整理しておきます。2023年モデルのedge 40シリーズではedge 40(無印)とedge 40 neoが日本向けに投入され、2024年のedge 50シリーズではedge 50 proが投入されました。一見、昨年よりワンランク上の機種が投入されたように見えてしまうのですが、実際にはedge 50 proはedge 40の後継機といえます。
日本未発売の最上位機種として、Snapdragon 8 Gen 2搭載の「edge 40 pro」やSnapdragon 8s Gen 3搭載の「edge 50 ultra」が存在しており、edge 40とedge 50 proはいずれもナンバー2にあたるミドルハイ相当の機種です。
edge 50 proの主な仕様は以下の通りです。
- OS:Android 14
- SoC:Qualcomm Snapdragon 7 Gen 3
- メモリ(RAM):12GB
- 内部ストレージ(ROM):256GB
- 外部ストレージ:非対応
- ディスプレイ:6.7インチ pOLED 2,712×1,220(20:9)リフレッシュレート144Hz
- アウトカメラ:約5,000万画素 F1.4 OIS PDAF(広角)+約1,300万画素 F2.2(120°超広角/マクロ)+約1,000万画素 F2.0(望遠3倍)
- インカメラ:約5,000万画素 F1.9
- 対応バンド(5G):n1/n3/n5/n8/n28/n41/n66/n77/n78
- 対応バンド(4G):1/2/3/4/5/7/8/11/12/17/18/19/26/28/38/39/40/41/42/66
- SIM:nanoSIM+eSIM(DSDV対応)
- Wi-Fi:IEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax(6GHz対応)
- Bluetooth:5.4
- バッテリー:4,500mAh
- 急速充電:有線125W/無線15W
- 外部端子:USB Type-C(USB 3.1、DP 1.4)
- 防水/防塵:IPX8/IP6X
- 生体認証:画面内指紋認証、顔認証
- その他の機能:NFC/FeliCa対応
- サイズ:約161.23×72.4×8.19mm
- 重量:約186g
- カラー:ブラックビューティ、リュクスラベンダー
edge 40ではMediaTek Dimensity 8020を採用していましたが、edge 50 proではQualcomm Snapdragon 7 Gen 3を採用。CPU/GPU性能の向上もさることながら、モデム性能やカメラの仕上がりに影響するDSP性能、ゲームなどコンテンツ側の最適化の問題など多角的に見て、コストをかけてでもQualcomm製SoCに戻してきたのはプレミアム路線の機種としては歓迎したいところです。
メモリ容量は、オープンマーケット向けのedge 50 proが12GB、ソフトバンク版のedge 50s proが8GBと差が付けられています。ストレージはどちらも256GBです。以下のベンチマーク結果はメモリ12GBのedge 50 proを用いたものとなります。CPU/GPUともにハイエンドでいえば2世代前のSnapdragon 8 Gen 1より少し低いぐらいの結果で、設定次第ではゲームも十分遊べるラインでしょう。
スペックでの注目ポイントはやはり急速充電。付属の充電器を用いて、最大125W(20V 6.25A)の急速充電が可能です。4,500mAhのバッテリーを1%から100%まで最短19分で充電できるということで、朝の支度中などちょっとした時間で済ませられるのはやはりありがたいですね。
また、各社独自の規格で競う100Wオーバーの急速充電を売りにする機種には、専用充電器では高速でも汎用のUSB PDでは18Wや30W止まりという機種も少なくなく、外出時にモバイルバッテリーで充電したい時などには意外な落とし穴があったりするのですが、本機はUSB PDでも100W(20V 5A)まで出せるそう(発表会場にて担当者に確認)。手持ちの市販充電器やテスターでも実際にUSB PDによる60W充電を確認できました。
ソフトウェアにもいくつかの変化が見られます。まず、モトローラのスマートフォンといえば素のAndroidに近いメーカー独自のカスタマイズが少なめのユーザーインターフェースを長らく採用していましたが、この世代からは見栄えに若干手が加えられています。
機能面では、端末の振り方に応じてカメラやライトをクイック起動できるジェスチャー機能や、デスクトップモード「Ready For」などを引き続き搭載。PC連携機能も「Smart Connect」と名付けて強化されました。
独自の新機能のなかで一風変わった面白い試みとしては、「Moto Unplugged」という機能が挙げられます。他社でも夜間の通知を止めるようなモードはよく見られますが、Moto Unpluggedを起動すると専用のホーム画面に切り替わり、通知どころかあらかじめ選択した必要最低限のアプリ以外は開くこともできなくなるという徹底ぶり。現代社会に疲れた人のデジタルデトックスのためのモードです。
また、昨今の競争軸となっているAI機能のアピールも欠かせません。「moto ai」というAI機能が各所に盛り込まれており、カメラの白飛びや手ぶれをマルチショットで補正するといった縁の下の力持ち的機能もあれば、「服などの柄を撮って、それを元に壁紙を生成する」といった遊び心のある機能も用意されています。
最後にカメラ性能をチェック。edge 50 proの背面には3つのカメラが搭載されており、メインカメラは約5,000万画素 1/1.55インチ F1.4で光学手ぶれ補正(OIS)やPDAFに対応。超広角カメラは約1,300万画素F2.2でマクロ用を兼ね、望遠は約1,000万画素F2.0でOIS対応の光学3倍相当となっています。インカメラは約5,000万画素F1.9です。
超広角(0.5倍)+メイン(1倍)+望遠(3倍)というカメラ構成のため、料理などのテーブルフォトに使いやすい2倍周辺はメインカメラのデジタルズームで対応することになります。画素数・センサーサイズともに余裕があるため、そのゾーンでの画質劣化は気になりませんでした。また、望遠カメラもOISやレンズの明るさなど十分なスペックを持っており使いやすかったです。
本機種では端末本体のカラーだけでなくカメラの色彩にもPANTONEが携わっているそう。写りの傾向としては見たままの忠実な色合いになるのだろうかと予想していましたが、どちらかというと明るく鮮やかな仕上がりになる場面が多く、特に緑色の鮮やかさが印象的でした。
撮影画面で選べるスタイル設定として「自動補正」「ナチュラル」の2種類があり、自動補正のほうには「撮影時間が長くなります」という注釈が付いていますが、ナチュラルでも撮影後すぐギャラリーに移動してみると数秒は処理中になっており、撮影時のプレビューで見るのとは少し違う色味になっていることから、どちらでも非リアルタイムの補正をかけてはいて強弱が違うといったところでしょうか。
通常のカメラアプリ内で本格的な書類取り込みができる「スキャン」モードはかなり優秀。技術的には「Adobe Scan」を採用しており、紙の四隅の検知などが賢く、ほぼカメラを向けるだけで取り込めるストレスフリーな使い勝手でした。
撮影機能としては、特定の色だけを際立たせて他をモノクロにする「スポットカラー」、光の軌跡や水の流れなどを表現できる「長時間露光」、インカメラとアウトカメラで撮った写真をセットで残せる「デュアル撮影」、背景にぼかしをかけてミニチュアのように見せられる「ティルトシフト」などユニークなものが揃っています。基本性能もクラス相応にあり、機能が充実していて遊べるカメラです。