阪急電鉄は8日、京都線に導入する座席指定サービス「PRiVACE」の試乗会(報道関係者向け)を実施した。試乗会の当日、「PRiVACE」車両を連結した新型特急車両2300系は正雀車庫から正雀駅に入線し、その後、京都本線の桂駅まで往復した。

  • 「PRiVACE」の車内。横3列のリクライニングシートが並ぶ

同社初という座席指定サービス「PRiVACE」は、京都線の特急車両(2300系および9300系の一部編成)に専用車両を1両連結し、7月21日から京都線の特急・通勤特急・準特急でサービスを開始する。サービス開始の時点で1時間あたり2~3本の頻度でサービスを提供する予定。その後も「PRiVACE」を順次増備し、2025年度に1時間あたり4~6本の頻度になるという。

「PRiVACE」の利用にあたり、区間運賃に加えて座席指定料金500円が必要。購入は専用のウェブサイト経由になるが、車内でもアテンダントから購入できる。「PRiVACE」車両は中央の出入口を境に2ブロックに分けられ、それぞれ横3列(1列+2列)のリクライニングシートを基本としている。

  • 新型特急車両2300系に連結された「PRiVACE」車両

  • 「PRiVACE」では専属アテンダントが乗務する

  • 試乗会にて、座席が回転する様子も公開された

  • 「PRiVACE」の座席。肘掛けのパーテンションが目立つ

試乗会での走行中、筆者も2列席の窓側座席に座ってみた。車内全体は阪急らしさを感じさせる木目調の内装で、シックな雰囲気。観光列車のような「ワクワク感」とは異なり、書斎にいるような落ち着いた感じがあった。座席の色に阪急伝統のゴールデンオリーブ色を採用しているため、もともと阪急ユーザーの筆者は違和感なく「PRiVACE」を受け入れられた。

リクライニングすると、座面が連動して動き、座席に包み込まれるような感覚となる。「PRiVACE」車両の側窓は座席ごとに配置され、リクライニングすることで座席と窓が完全に一致する。これにより、窓側座席であれば窓を独り占めするような感覚になる。

  • 2列席のコンセントと読書灯スイッチは中央にある

  • 耳を覆う部分に読書灯がある

  • 座席の背面に設置されたマガジンラック

顔を覆うような座席上部のデザインも生かされている。リクライニングすると隣席に座る乗客の顔が見えづらくなり、座席でありながらプライベート感がある。総合して考えるなら、「PRiVACE」は座席をリクライニングさせたほうが魅力を堪能できる車両といえよう。

座席の背面にマガジンラックがあり、雑誌や本を入れられる。足もとは広々としており、フットレストがなくてもまったく問題はない。一方、気になる点として、肘掛けから出す収納式テーブルの大きさが、ノートパソコンを使用するには小さいように思えた。とはいえ、大阪梅田~京都河原町間の所要時間が準特急でも1時間かからないことを考慮すると、「PRiVACE」は仕事よりも車内でリラックスすることを主眼に置いた車両ということだろう。

  • 収納式テーブルを広げた状態

  • こども用ポータブルチェアも用意される

  • 通路扉の上部に案内表示器がある

試乗会の列車が正雀駅を発車した後、阪急電鉄の車内自動放送を担当する下間都代子氏による「PRiVACE」の解説放送が流れた。放送の中で、下間氏は「PRiVACE」の感想を「上質な空間でリラックスできた」とコメントしていた。正雀駅から桂駅まで、試乗会の列車は90分ほどかけて往復したが、車内の静寂性もあいまって、じつに快適に過ごすことができた。

7月21日の運行開始に先立ち、「PRiVACE」の専用ウェブサイトにて7月9日13時から予約がスタート。7月13・14日に一般向けの特別試乗会(募集はすでに終了)も予定されている。