前回の記事「英語力が伸びる人・伸びない人のたった1つの違い」では、英語学習のモチベーションを保つ上での、「テストを受ける」ことの重要性をお伝えしました。今回は具体的に、どのようなテストを受けるべきか、また、その理由をお話しいたします。
社会人が英語学習のモチベーションを保ち、また、英語力を向上させていくことを目指したときに、ベストなテストは「TOEIC」だと考えています。
■受けるべきは「TOEIC」! どんなテスト?
はじめに「TOEIC」について簡単に説明すると、リスニングとリーディングの2つのセクションがあり、それぞれ100問ずつの合計200問で構成されています。試験時間はリスニング45分、リーディング75分の120分です。リスニングとリーディングのスコアはそれぞれ5点から495点で、2つ合わせた合計スコアは10点から990点となります。
また、別日程でスピーキングとライティングのテストも実施されており、より総合的な英語力を測定できます。
■なぜTOEICなのか
次に、社会人の英語学習者には「TOEIC」がベストな理由です。
1. 受験者数の多さ
2023年度のTOEICテスト(リスニング・ライティングテストのみ、以下同様)の受験者はおよそ192万人でした。この数字についてですが、例えば、大学進学希望者の大半が受験する「大学入学共通テスト」の受験者数は50万人程度です。この数字を考えると、TOEICがいかに多くの人に受験されているかが分かると思います。
受験者数が多いということは、それだけ大きな市場が生まれるということです。つまり、TOEICの学習者向けの書籍やアプリが豊富に生まれることにつながるのです。
実際に大型書店の英語学習書コーナーには、TOEICの専用コーナーが設けられていますし、学習用のアプリなども数え切れないほど多くの種類があります。このことにより、学習者は自分のレベルに合った教材を利用しやすくなります。また、自分が使いやすいと感じる教材を選びやすくもなるのです。
この市場の大きさは、出版社や英語講師の間で良い意味での競争を生み出します。そしてその競争により、より質の高い教材やアプリが生み出されることにもなり、これは英語学習者にとってより良い学習環境につながります。
2. 実用的な英語に触れられる
TOEICの英語は"ビジネス英語"と考えている人がいますが、それは全くの誤解です。
もう少し掘り下げれば、TOEICテストが日本で実施され始めた1980年代はビジネスに特化した出題が多かったようです。しかし、この10年ほどは確かにビジネス関連のシーンも含まれてはいるものの、ビジネスに特化しているということは全くありません。少なくとも、テストのスコアを上げるために、ビジネスに特化した語彙(ごい)や知識を覚える必要はありません。
TOEICの場面設定は「スーパーの閉店時間変更のアナウンス」「交通事故による高速道路閉鎖のニュース」「図書館による週末のボランティアの募集」「レストランの予約変更の電話」など、日常生活の一部が題材になっています。つまり、TOEICを通した英語学習は、まさに日常生活で利用できる実用英語の習得に非常に向いているのです。
3. 高いスコアの信ぴょう性
TOEICのスコアの算出方法は非公開ですが、スコアの一貫性は保証されています。例えば、10カ月前のスコアが650点で、今回も650点であれば、今の英語力は10カ月前の英語力と同じだということです。これは当然のことのように思えますが、実際には特筆されるべきことなのです。
冒頭で話題にしました「大学入学共通テスト」を例に出します。大学進学を希望する多くの高校生がこのテストを目指して勉強します。普段から練習問題を解いたり、大手予備校の模擬試験を受けたりします。
しかし、共通テストは毎年、難易度も平均点も大きく変動してしまうので、受験者は自分の目標点を設定するのに苦労します。つまり、自分の得点が30点アップしたとしても平均点が30点アップしていたら、自分の英語力は伸びはなかったことになります。TOEICとは異なり、10点の得点アップ=英語力の向上とは言い切れないのです。
一方、TOEICでは5点刻みとなっているスコアの中で、自分の得点が30点アップすれば、30点分英語力が上がったことが保証されます。こうすることで自分の目標とするスコアを設定して、そのスコアに目指した英語学習が可能になるのです。
最後に、受験頻度についてお伝えします。一年おき? 半年おき? 3カ月おき? などと考えてしまう人も少なくないはずです。もちろん自分のおかれている状況にもよりますが、私は「できるだけ多く」がいいと思います。テストを受けることで学習モチベーションは間違いなく上がります。ですので、時間が許す限りテストを受験して学習モチベーションを高い状態で維持するのがよいでしょう。