フォルクスワーゲン「ゴルフ」のマイナーチェンジモデルが日本で発売となる。予約受け付け開始は2024年9月、出荷開始は2025年1月の予定だ。今回の改良では、エンジンのラインアップが変わるなど大きな変更点がある。できるだけ低予算でゴルフを買うなら、という視点でも考えてみた。
新型ゴルフは何が変わる?
フォルクスワーゲンの代名詞として知られるゴルフの初代が登場したのは1974年のこと。今年で50周年を迎えるロングセラーモデルだ。現行型は8世代目であることから「ゴルフ8」(ゴルフエイト)と呼ばれる。
その優れた性能や機能から、歴代モデルが世界中の自動車メーカーに実用車のベンチマークとして研究されてきたことも有名だ。また、基本となる仕様が前輪駆動のハッチバックという点も、初代のころから変わらない伝統となっている。
日本でも長年、定番モデルとして、輸入車初心者からベテランまで幅広いユーザーに愛されてきた歴史がある。その累計販売台数は世界で3,700万台以上、日本でも100万台以上となっているほどだ。
今回の新型はゴルフ8(日本導入は2021年)のマイナーチェンジモデルだ。ボディタイプは5ドアハッチバックと5ドアステーションワゴン(ゴルフヴァリアント)の2タイプを用意。主力となるのはガソリン仕様のマイルドハイブリッド車(MHEV)だが、発表会の会場には改良型のスポーツハッチバック「GTI」が展示してあった。
ゴルフ8のモデルライフが後半戦に差し掛かったことを意味する大きなマイナーチェンジだけに、大幅に手が加えられている。
デザインでは前後のマスクを変更。現行型のイメージを崩さない範囲内ではあるものの、ライト周りのデザインにまで手を加え、先進感をアップデートした。フロントマスクは、ライトとバンパー形状の変更で、より精悍な顔つきに。その顔に、日本初採用の光る「VW」エンブレムを採用したのも大きな特徴だ。リヤはテールランプの内部が立体的なデザインとなった。ランプ点灯時の表示も同様だ。
インテリアで最も大きく進化しているのが、運転席周りのダッシュボードだ。年々、存在感と活用の幅が広がっているインフォテインメントシステムのディスプレイを一気に大型化した。サイズは改良前の10インチから12.9インチまで拡大している。デザインはこれまでのデジタルメーターとの一体感を演出したスタイルから、よりセンターディスプレイを強調する雰囲気に変化。搭載するシステムは最新の「MIB4」となり、性能は向上し、「IDAボイスアシスタント」という新たな音声操作機能も追加となったことで操作性も高まっている。
マイルドハイブリッドは1.5Lに一本化
ガソリンエンジンもアップデート。最新のマイルドハイブリッド仕様「eTSI」では1.5Lエンジンを採用した。現行モデルの「eTSI」は1.0Lの3気筒ターボと1.5Lの4気筒ターボの2本立てだったが、改良型では1.5Lの4気筒ターボに一本化される。
同じ排気量のエンジンだが、最高出力85kW(116ps)/最大トルク220Nmと同110kW(150ps)/250Nmの2種類の仕様がある。前者は1.0L 3気筒エンジンの後継となるが、馬力とトルクが向上した上、4気筒化でエンジンの静粛性もより高まるなどのメリットがある。
それ以外のエンジンラインアップとしては、長距離ドライブ派に人気の2.0L直4クリーンディーゼルターボ「TDI」と、高性能モデルとして2.0L直4ターボエンジンを搭載する「GTI」の投入を発表。本国では、最上位の高性能4WDモデル「R」のマイナーチェンジも発表されているので、そのうち日本でも追加されるはずだ。
あえて改良前のモデルを選ぶのもあり?
グレード構成は現行型に準ずるが、価格は現時点で未公表。今は本社と価格交渉を進めている真っ只中にあるそうだ。9月に予約の受け付けを開始するとしているから、その際に、少なくとも新車ディーラーの店頭では価格を知ることができるだろう。正式発表は来年1月の予定だ。
同じくマイナーチェンジが発表された「Tクロス」の動向が、ゴルフ改良モデルの価格を考えるためのヒントとなりそうだ。Tクロスの改良型は、価格こそ若干値上がりしたものの、装備を値上げ分以上に充実させることでコスパを高めている。新ゴルフも同様の流れとなるはずだ。
そこで注目したいのは、現行型ゴルフで1.0Lエンジンを搭載するマイルドハイブリッド仕様の「eTSI Active Basic」と「eTSI Active」だ。これらのグレードは改良型でも継続となるが、エンジンの性能と質感が向上することで、ベーシックなゴルフを狙う人には、より魅力が増すことになるからだ。
特に「eTSI Active Basic」は、基本的な装備を押さえたエントリーグレードとなるので、できるだけ低予算でゴルフを狙いたい人には注目してほしい。同グレードには純正ナビのオプション設定がないものの、スマホナビで十分という人には魅力的な選択肢となるはずだ。
現行型(マイナーチェンジ前)のゴルフは在庫限りとなるので、今回のアップデートに大きな魅力を感じなければ在庫車の好きなグレードを狙うのもありだ。値引きが期待できるし、新車なので保証もしっかりついてくる。また1.0Lの「eTSI」ならば、他のゴルフよりも排気量が小さいので、自動車税や自動車保険で有利となることも付け加えておきたい。
世界の実用車のベンチマークと称えられてきたゴルフだけに、マイナーチェンジによってより良いクルマに生まれ変わっているのは間違いない。あえて現行型を狙うならば、その点も踏まえて後悔のないゴルフ選びを楽しんでほしい。