ダイキン工業は7月5日、「熱帯夜の睡眠時の熱中症対策とエアコン使用に関する意識調査」の結果を発表した。調査は2024年6月6日~6月8日、全国の20代~60代の男女530名を対象にインターネットで行われた。
熱帯夜の睡眠時や起床時に「体の不調を感じることがある」は7割
熱中症にはさまざまな初期症状がある。帝京大学医学部附属病院 高度救命救急センター長・三宅康史氏は、「熱帯夜、体調に違和感なく入眠したにもかかわらず睡眠時や起床時に体の不調を感じた場合、軽い熱中症の可能性も疑ってみてほしい」と話す。
今回、熱中症の初期に見られる症状を9つ挙げ、熱帯夜の睡眠時や起床時にこれらの症状を感じたことがあるかを質問すると、半数近くが「倦怠感」(45.7%)を感じており、「異常な発汗」(18.3%)や「体温の上昇」(16.8%)、「頭痛」(15.5%)や「立ち眩み」(9.2%)など、全体のうち約7割(69.2%)の人が何らかの不調を感じたことがあるという結果となった。
三宅氏は「特に倦怠感は、熱中症の初期症状以外でも様々な要因で感じることがある」としながらも、夏期には熱中症の初期症状として最も多いのも事実と話す。この結果からは、熱帯夜の影響で多くの人が軽度なものを含め熱中症を発症していた可能性があることがうかがえる。
3人に1人は熱帯夜に積極的な「熱中症対策」をせず、理由は?
熱帯夜の影響で多くの人が軽度なものを含めた熱中症を発症していた可能性があることを受けて、熱帯夜に熱中症対策を行っているかどうかを確認すると、今回の調査では約3人に1人(33.7%)が「対策をしていない」と回答した。熱帯夜に熱中症対策をしていない人に理由を尋ねたところ、「危険を感じたことがないから」(43.0%)が最も多く、続いて「睡眠時の熱中症対策が具体的にわからないから」(26.8%)、「夜間や睡眠中に熱中症になるリスクがあることを知らなかったから」(16.8%)という結果に。
三宅氏は、「住まいの風通しの良さなど、熱帯夜を過ごす環境は人それぞれだが、熱中症の危険性をあまり意識していなかったり、熱中症対策の仕方を知らなかったりして何も対策をしないと、今後の熱中症リスクにつながる恐れもある」としたうえで、熱中症リスクを意識するとともに、特にエアコンの使い方を工夫したり就寝前に水分補給したりするなどの対策に取り組む重要性を指摘している。
熱帯夜の暑さは多くの人の睡眠の妨げになっている可能性
「夏場の熱帯夜の睡眠時のお悩み」について尋ねたところ、特に悩みが無い人は23.8%に留まり、約4人に3人(76.2%)が何らかの悩みを持つことがわかった。それらの悩みのうち、最も多かったのは「暑くて目が覚める」(45.5%)で、次に「なかなか寝付けない」(33.0%)が挙げられた。多くの人にとって、暑さが睡眠の妨げになっていることがうかがえる。
熱帯夜の睡眠時、8割がエアコンを使用
全体のうちで熱帯夜の睡眠時にエアコンを使っている人の割合を調査したところ約8割(81.6%)という結果となった。積極的に熱中症対策に取り組む人が少ない一方で、熱帯夜の暑さへの悩みを持つ人が多い実態を踏まえると、熱中症対策への意識の有無に関わらず多くの人がエアコンを使用しているようだ。
続いて、熱帯夜にエアコンを使っている人の使い方について調査した。「朝までつけっぱなし」(46.1%)と「タイマー設定をして、寝ている途中で切れるようにしている」(43.5%)が、どちらも4割を超え、ほぼ同数という結果に。今回の調査では、「つけっぱなし運転派」と「切タイマー運転派」には節電意識や睡眠時の困りごとに対する大きな差は無く、習慣の違いと言えそうだ。
熱帯夜の睡眠時、「暑さ指数(WBGT)」の上昇に要注意
熱中症対策への意識の違いによるエアコンの使い方についても調査した。その結果、熱中症対策に取り組んでいる人ほど熱帯夜にエアコンを使用する傾向があることがわかった。また、「よくしている」と回答した熱中症対策に積極的に取り組んでいる人は、朝まで「つけっぱなし」にしている割合が高い結果にもなった。
夏の睡眠時、エアコンをつけていないと室内の温度や湿度が徐々に上昇し、熱中症への警戒が必要な環境になることがある。こうした熱中症のリスクの評価には「暑さ指数(WBGT)」と呼ばれる指標が用いられる。エアコンを朝まで「つけっぱなし」にしておくと、一般的に熱中症の危険性が少ないといわれる程度のWBGTに抑えることも可能。気温や湿度が高い日は、エアコンをタイマーで切るよりも朝まで「つけっぱなし」にした方が、快適な睡眠にもつながると考えられる。
蒸し暑い熱帯夜、熱中症を防ぐには?
熱帯夜、体調に違和感なく入眠したにもかかわらず、朝起きた時に倦怠感などの体の不調を感じた場合は「軽い熱中症の可能性」も疑った方が良いと三宅氏は話す。寝室が暑かったり、就寝時に十分に水分補給ができていなかったりすると、体の脱水が夜中に進んでしまい、熱中症になってしまうリスクも。特に熱帯夜は扇風機をつけたり、窓を開けたりするだけでは十分に涼しい環境を作り出せない可能性がある。エアコンを使用するなどして寝室環境を快適にし、寝る前にしっかりと水分補給を行うことが重要だという。
熱中症を予防するためには、睡眠をしっかりとって体を回復させることが大切。熱帯夜の暑さで目が覚めてしまったり、寝付けなくなったりすると、「睡眠の質」が低下して体を十分に回復させられなくなってしまうことも。「翌日に疲労と熱中症リスクを持ち越さないためにも、過ごしやすい睡眠環境づくりを意識して、質の良い睡眠がとれるように心がけましょう」と三宅氏は述べている。
また、熱中症リスクを考えるうえで見落とされがちなのが「湿度」。室内の室温が高く、汗が蒸発しづらくなると体の熱をうまく逃がせなくなり、体の中に熱がこもりやすくなってしまうという。三宅氏は「蒸し暑い夜にはエアコンで冷房や除湿をするなど、温度や湿度管理にも注意をしてみてください」とアドバイスしている。
熱帯夜にも役立つ上手なエアコンの使い方のヒント
快適な空間づくりには「温度」だけでなく「湿度」を調節することも大切だという。湿度が20%変われば体感温度は約4度変わるといわれている。ダイキンが試験室で行ったサーモグラフィによる可視化検証試験では、温度28度、湿度85%の環境で皮膚温度の上昇を確認した後、温度は変えずに湿度を60%にすると、被験者12名のうち10名の手部や顔部の皮膚温度が顕著に低下する結果となった。
室内の温度や湿度が上昇すると、熱中症への警戒が必要なWBGTに達する場合がある。室温が高く湿度も気になる場合には、エアコンを使って温度や湿度をコントロールすることが大切。
夏場の睡眠時のエアコン、ダイキンは朝まで「つけっぱなし運転」を推奨
睡眠時にエアコンをつけっぱなしにすることへの抵抗感から切タイマーを使う人は多いかもしれない。そこでダイキンは、神奈川県横浜市にある一般の住宅において、朝までエアコンをつけっぱなしにする「つけっぱなし運転」と切タイマーを使って就寝3時間後にエアコンを切る「切タイマー運転」それぞれで室内のWBGTの変化を計測した。「つけっぱなし運転」ではWBGTに大きな上昇は見られなかったのに対して、「切タイマー運転」の場合はエアコン停止後にWBGTが徐々に高まる結果となった。(調査結果はあくまでもひとつの目安。住環境や気温などによって結果は変わる)
就寝中にエアコンがオフになると、明け方にはWBGTが熱中症への警戒が必要とされる値まで達する可能性がある。気温や湿度の高い日は適度な温度設定で、朝まで「つけっぱなし」にした方が快適な睡眠につながるといえそうだ。