藤井聡太王座への挑戦権を争う第72期王座戦(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)は挑戦者決定トーナメントが大詰め。7月4日(木)には準決勝の羽生善治九段―広瀬章人九段戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、相掛かりの熱戦から抜け出した羽生九段が118手で勝利。挑戦者決定戦へとコマを進めています。
ここ一番の相掛かり
挑戦まであと2勝と迫った両者。振り駒で先手番を得た広瀬九段は得意の相掛かりの作戦を選択、対する後手の羽生九段は6筋の歩を取らせる力戦志向を打ち出します。先手は一歩得を、後手は金銀の動きで手得している点を主張して中盤のねじり合いが始まりました。
後手が歩損を解消したところ、広瀬九段は決断の一手で局面を打開します。棒銀の要領で右銀を金にぶつけたのは後手から飛車頭を叩く反発が見えているだけに大胆。しかしもちろん両者読み筋、激しい駒の取り合いののち局面は形勢不明のまま寄せ合いに突入します。
27度目の王座戦登場に向け前進
先手が二枚角の猛攻をかければ羽生九段は玉の早逃げで応戦。後手の二枚飛車に広瀬九段は底歩で対応してどちらも崩れません。最終盤、羽生九段が飛車切りの猛攻で先手玉に迫った局面が本局最大の山場でした。羽生玉はさらにもう一枚駒を渡しても詰まない形です。
タダのところに金を捨てて敵玉を危険地帯におびき寄せたのが送りの手筋の決め手。これで羽生九段が一歩抜け出しました。これを見た広瀬九段は30分以上手を止め対応を考慮しますが自玉は受けなし。一方の後手玉は綱渡りの受けでギリギリ詰みを逃れています。
終局時刻は21時33分、最後は自玉の詰みを認めた広瀬九段が投了。感想戦で先手は金のタダ捨てが生じる数手前、銀の代わりに歩を打って自陣を補強する手が優ったと結論付けられました。勝った羽生九段は次局、挑戦権を懸けて鈴木大介九段―永瀬拓矢九段戦の勝者と戦います。
水留啓(将棋情報局)