伊藤園は、「氷水出し緑茶と睡眠に関するセミナー」を7月1日に開催した。本セミナーは、氷水出し緑茶の普及を通じて、日本人の睡眠の質を向上させる活動の一環として実施されたもので、睡眠の専門家である医療法人RESM理事長の白濱龍太郎氏と、お茶の専門家である大妻女子大学名誉教授の大森正司氏が登壇。氷水出し緑茶が睡眠にどのような影響を与えるかが紹介された様子をレポートしよう。

■不眠傾向の日本人、その理由は?

今年2月に「健康づくりのための睡眠ガイド2023」が、約10年ぶりの睡眠に関するガイドラインとして策定され、4月からは「健康日本21(第三次)」がスタート。「健康日本21(第三次)」では、睡眠時間に関する目標の追加が新たな特長となっている。そして現在、スリープテックなスリープツーリズムといった睡眠サポート関連の国内市場も年々伸長している。

その一方で、日本人は不眠傾向があり、OECD諸国の中でも一日の睡眠時間は最低、さらに、ほぼすべての世代において睡眠による休息・休養が十分に取れていない割合が増加傾向になっていると、医療法人RESM理事長 白濱龍太郎氏は語る。白濱氏からは不眠の背景と、夏の快眠ルーティンについて紹介が行われた。

  • 医療法人RESM理事長 白濱龍太郎氏

今年も暑い夏が予想されるが、夏は睡眠時間が短くなる傾向がある。その理由は、睡眠をコントロールするホルモン「メラトニン」が、光の影響を受けると分泌が抑制されることだそう。実際、季節ごとの平均睡眠時間をみると、日照時間が長くなる夏場は冬期と比較して10分から40分前後、睡眠時間が短くなることが明らかとなっている。またメラトニンは光、特にブルーライトと呼ばれるスマートフォンや液晶テレビなどから発せられる光によっても分泌が抑制される。特に精神的な背景がなかったとしても、現代人はブルーライトに照射される量が増え、相対的に睡眠の悩みも増えていると考えられる。

「睡眠の質」という点については、なるべく深いノンレム睡眠がしっかりと取れているうえで、途中で目が覚める「中途覚醒」や早く目が覚める「早朝覚醒」が少ない状態を、「質の高い睡眠」と定義。睡眠の質を高めるためには、なるべく自律神経系の交感神経を刺激せず、睡眠ホルモンが抑制されるような行動を控え、副交感神経を優位にするような行動が求められる。

「我々の脳は非常に、良い意味で騙されやすい」という白濱氏は、睡眠前にストレッチなどのルーティンを作ることによって、脳が副交感神経優位に切り替わりやすくなるとし、さらにリラックス作用のある食品、「テアニン」や「GABA」を接種することもプラスに作用するとの見解を示す。

■質の良い睡眠のカギ「テアニン」

「テアニン」は、緑茶特有のアミノ酸成分で、脳の興奮を抑えたり、神経を沈静化させるなどのリラックス効果があると考えられており、睡眠市場でも注目され始めている。テアニンを摂取することによって、寝付きや中途覚醒の改善が見られるほか、摂取後30分以降からは、リラックス状態のときに発せられる「アルファ波」が強く検出されることも明らかになっていることから、睡眠の質を高めるためには、テアニンを摂取し、リラックスした状態で入眠することが重要であると白濱氏はあらためて強調した。

  • 大妻女子大学名誉教授 大森正司氏

お茶の専門家である大森氏は、「テアニンはお茶の中でも非常に特殊なアミノ酸で、うま味という点では弱い」と指摘。お茶の中のアミノ酸の半分を占めるほど量が含まれているものの、かつてはあまり注目されていなかったが、精神安定や睡眠などに効果があることが分かり、最近では注目度が非常に高まっている。

お茶に含まれる主成分として「テアニン」などのアミノ酸のほかに「カテキン」や「カフェイン」などが挙げられる。これらの成分は湯温によって抽出量が異なると大森氏。アミノ酸は低い温度でも溶け出しやすいが、カフェインやカテキンは温度が高くなるにつれて溶け出しやすくなる特徴がある。つまり、「氷水出し緑茶」の場合、アミノ酸以外はほとんど溶け出さないため、うま味成分の濃いお茶をいれることができるのだ。

実際、「氷水出し緑茶」と、90度の熱湯でいれた緑茶を飲み比べてみると、アミノ酸成分が強い「氷水出し緑茶」に対し、熱湯でいれた緑茶はうま味成分だけでなく、カテキンの渋みやカフェインの苦みが強く感じられる。

睡眠の質を高めるテアニンが豊富で、カフェイン成分の少ない「氷水出し緑茶」を睡眠前に飲むことを推奨する白濱氏は、氷水出し緑茶を作る5分間で、腹式呼吸やストレッチをして、副交感神経を優位にする「夏の快眠ルーティン」を紹介し実演した。

■夏の快眠ルーティン

  1. 氷水出し緑茶をいれる。
  2. スマートフォンは見ずに副交感神経を優位にする腹式呼吸やストレッチを行う。
  3. 氷水出し緑茶を飲む。
  4. 電気を消し、布団に入る。

大森氏は、「氷水出し緑茶」のいれ方を実演するとともに、氷水出しでアミノ酸(テアニン)、ぬるま湯出しでカテキン、熱湯出しでカフェインが豊富な緑茶を順に作り、残った茶殻を料理などに活用する「お茶のフルコース」を紹介した。

■氷水出し緑茶のいれ方

使うお茶の種類は玉露や一番茶を多く含む上級煎茶など、うま味成分を豊富に含む茶葉を推奨。以下、紹介する分量は1人分。

  1. 急須に茶葉をティースプーン2杯分(約4g)入れる。茶葉の目安量はお湯だしで使う量の2倍。
  2. 水を約90ml注ぐ。
  3. 氷を2~3個急須に入れる。
  4. 約5分間抽出する。

※急須がない場合は、大きのカップとティーバッグの組み合わせでも代用できる。