第18回朝日杯将棋オープン戦(主催:朝日新聞社・日本将棋連盟)は一次予選が進行中。7月3日(水)には計14局が行われました。このうち、東京・将棋会館で行われた第5ブロックの黒沢怜生六段―斎藤明日斗五段戦は100手で黒沢六段が勝利。苦戦の中盤を乗り切って2回戦進出を決めています。
親交深い両者の対戦
本一次予選は10名程度からなるブロックを勝ち抜いた16名が二次予選に進むもの。両対局者は勝ち抜きまでに3連勝が必要です。振り駒が行われた本局は後手の黒沢六段がノーマル四間飛車を採用、斎藤五段の天守閣美濃作戦を受けて振り飛車穴熊の姿勢を表明します。
間合いの計り合いののち斎藤五段が動きます。4筋で手にした歩を玉側の端攻めに用いたのは実戦的な穴熊崩し。先に敵陣に手をつけ指しやすさを手にしました。敵陣に竜を作ったところまでは順調でしたが、本局はここから黒沢六段による粘りの指し回しが光りました。
受けの勝負手に凱歌
金取りに角を打ち込まれた局面、玉みずからが穴熊を抜け出し陣頭指揮に出たのが黒沢六段渾身の勝負手。「玉を上がられて手が見えなかった」と振り返った斎藤五段は迫りくる秒読みのなかで攻め急ぎが出ます。銀取りに桂を打ったのは一気の決着を求める手ですが、黒沢六段が正確な対応を見せ、逆に斎藤五段の攻め駒が次々と黒沢六段の駒台に乗ることに。
受けを基調にペースをつかんだ黒沢六段は斎藤五段の攻め急ぎに乗じて優位を拡大します。「金底の桂」を打って二枚飛車の勢いをシャットアウトしたのが決め手で先手の追撃がないのを見越しています。手番を得た黒沢六段は持ち駒を生かして悠々反撃に乗り出しました。
終局時刻は11時57分(持ち時間各40分)、最後は攻防ともに見込みなしと認めた斎藤五段の投了で黒沢六段の勝利が決まりました。勝った黒沢六段は一次予選突破まであと2勝としています。
水留啓(将棋情報局)