俳優の眞栄田郷敦が主演を務める、映画『ブルーピリオド』(8月9日公開)の撮影現場レポートが3日、公開された。
同作は山口つばさ氏による人気漫画の実写化作。からっぽだった高校生・矢口八虎(眞栄田郷敦)が、1枚の絵をきっかけに美術の世界に本気で挑み、国内最難関の美術大学を目指して奮闘していく物語。美術の経験も才能もない素人が天才的な画力を持つライバル達や、答えのないアートという壁に苦悩しながらも、情熱だけを武器に圧倒的努力で困難を乗り越えていく。好きなことに出会えた高揚感、その先に訪れる葛藤をもリアルに描いている。
■映画『ブルーピリオド』、美術室シーンの撮影現場レポートが到着
今回公開されたのは、美術室シーンの撮影現場レポート。2023年6月下旬に、八虎(眞栄田)、“ユカちゃん”鮎川龍二(高橋文哉)、佐伯昌子(薬師丸ひろ子)が美術室で正対するシーンの撮影が都内の廃校を利用して行われた。
授業で描くことになった1枚の絵をきっかけに絵を描くことの楽しさに目覚めた八虎は、倍率200倍ともいわれる最難関の国公立・東京藝術大学の存在を知る。同シーンは八虎が藝大を第一志望として、美大受験に挑戦することを決意する物語が大きく動く起点となる重要な場面だ。
「単なるコスプレにはしたくない」という製作陣の強い思いから念入りな衣装合わせを経て生まれた八虎の制服姿のビジュアルは実在感たっぷりの仕上がりに。脱色したかのような髪色のヘアスタイルはウィッグとは思えぬ見た目と質感が表現されている。
八虎の目の前に佇むのは、美術部顧問・佐伯昌子役の薬師丸。モニターを覗く萩原健太郎監督も思わず「ずっとこうだったかのように自然……」と唸るほど、ナチュラルなオーラを放っている。一方、眞栄田は八虎の心の揺れ動きを動作でも表すべく、ズボンのポケットに手を入れたり、セリフのどの時点で薬師丸に近づくのがベストなのかを探ったりと、萩原監督と入念なディスカッションを重ねて撮影本番に臨んだ。
真剣な眼差しの寄りのショットを撮り終えた眞栄田が、モニターで確認する萩原監督に「僕、芸大目指しそうですか?」と聞くと「うん、受かりそう」と満面の笑みで萩原監督が答えるなど、緊張感ある撮影の中にも和気あいあいとした雰囲気が垣間見えた。
そんな二人を見守りつつ、美術室で自身の導線と入りのタイミングを確認しているのはユカちゃん役の高橋。高橋は龍二の中性的な魅力を表すために約8キロの減量に挑戦しており、学ランとセーラー服をジョイントしたかのような個性的な制服は、原作のデザインを参考に高橋の体形にフィットする形で縫製されたという。
製作陣が「クランクインしたばかりということもあるし、八虎とユカちゃんという相対するキャラクター性もあって、お2人はあえて距離を詰め過ぎないようにしている雰囲気がある。先々の撮影に向けて緊張感を高めているようだ」と指摘するように、カメラの外で眞栄田と高橋がベタベタと慣れ合う様子は皆無。小休憩の時間になると、眞栄田は楽屋を離れて美術室へ。教室全体を俯瞰して見渡せる教卓にもたれながら口笛を吹くなど、各々が自分のペースで撮影という時間を無理なく共有していた。
また、「代役ではやらない」という製作陣の意向を受けて、キャスト陣はクランクイン前から絵の練習をスタート。2022年末から新宿美術学院(現ena美術)のレジェンド講師・海老澤功氏のもとで基礎から絵を学んだ眞栄田は、海老澤氏から「八虎のように受験すれば合格するぐらいの力はある」と太鼓判を押されるほどに上達したそう。
エキストラの生徒も交えて美術室で八虎たちがキャンバスに向き合うシーンの撮影では、そんな持ち前のセンスが思わぬ壁に。絵を描き始めて間もない八虎の様子を捉えるカットでは、鉛筆を握る眞栄田の手元や画用紙に向かう姿勢が絵を描き慣れている人のように見えすぎるという問題が起こり、静物画のデッサンに向き合う眞栄田の鋭い視線に対して萩原監督は「目線からして絵がうまそうだな……」と苦笑い。撮影に帯同する海老澤氏も「一度絵を描くことに慣れてしまうと、下手に描くことが逆に難しくなる」と悩まし気に話した。
眞栄田もモニターの前に現れて、絵を描く自分の所作を確認しながら、海老澤氏と「どうすれば素人っぽく見えるか」を相談。鉛筆の持ち方を直角に変えたり、海老澤氏から「絵を見るのではなく描くことに集中するような様子で」とアドバイスをもらいながら、カットを重ねていた。
機材準備を待つ間、眞栄田はごく当たり前のように鉛筆をカッターの刃で削るなど、画材一式は小道具でありながらも、愛着を持っていることを覗かせていた。
(C)山口つばさ/講談社 (C)2024映画「ブルーピリオド」製作委員会
【編集部MEMO】
『ブルーピリオド』原作は2017年6月より月刊アフタヌーンで連載され、「TSUTAYAコミック大賞」「このマンガがすごい!」など国内の主要漫画賞にノミネート、「マンガ大賞2020」を受賞。アニメ版も好評を博し、舞台化もされている。