自動車雑誌ドライバーが過去に取り上げた記事が今に蘇る「DRアーカイブズ」。今回は1989年3-20号の「ホンダ NS-X」プレビューを振り返る。
◇◇◇以下、当時原文ママ◇◇◇
シカゴ・オートショーで、国内3メーカーがスポーツカーを発表した。1990年代は本格的スポーツカー時代の到来か!? 衝撃プレビュー“国産スポーツカー・ビッグ3”の詳細解説第1弾は、ホンダ・ミッドシップのNS-Xだ。
■1990年代のニュー・スポーツ
ホンダ・ミッドシップ・スポーツ(コードネーム・NS-X)が、ついに姿を現した。NSはニュー・スポーツ、Xは究極——1990年代を展望してホンダが放つ究極のミドルウエイトスポーツカーだ。
今回、シカゴで発表されたのはNS-Xのプロトタイプ(日本では1/1モックアップモデルが姿を見せた)。だが、全長4315㎜×全幅1800㎜×全高1170㎜の低く身構えたボディは、オールアルミ・モノコック構造。デザインはホンダ・オリジナル。CD値は現状で0.31と、スポーツカーとしてはさほど高いレベルではないが、これは居住性、視界などの実用性能を考慮したことが影響しているとみていいだろう。
室内空間は広い。大きく傾斜した前後ガラスを持つラウンドキャノピーは、従来の狭苦しいスポーツカーのコクピットではなく、広い視界と快適な居住性が与えられている。というのも、NS-Xは、単に速いだけ、よく曲がるだけのスパルタンスポーツではなく、優れた視界や扱いやすい操作系、快適な居住空間、安全性への配慮(SRSエアバッグシステムも装着)など、すべての面で洗練された“新時代のスポーツカー”を目指しているからだ。
ホイールベースは2500㎜、トレッドは前1510㎜/後1525㎜。3L V6・24バルブのNAエンジンは、キャビンと後車軸間に横置きされ、トラクションコントロールシステムを介して後輪を駆動する。
■最高速250㎞/h以上!
最高出力は250馬力以上。バルブ駆動方式は明らかにされていないが、DOHC、OHCいずれのエンジンでテストしても、性能に大差はないという。1カム4バルブを得意とするホンダの面目躍如といえるだろう。最高出力回転数は不明だが、タコメーターに記されたレッドゾーンは7500回転から。これから推測すると、ピークパワーは7000回転あたりか。
車重は1300㎏以下。このパワーユニットとの組み合わせでは、パワーウエイトレシオ0.52㎏/㎰の優れた値をマーク。事実、最高速度250㎞/h、0→400m加速14.0秒以下、0→100㎞/h・6秒以下のすばらしいスペックが公表されている。
サスペンションは、オールアルミの4輪ダブルウイッシュボーン。基本的に優れた特性を持つダブルウイッシュボーンと、バネ下重量を徹底して切り詰めたアルミサスパーツの組み合わせは文句なしに魅力だが、さらに開発にあたっては、ヨー特性を重視し、いかに俊敏な運動性能を盛り込むかに力を注いだという。“曲がる”性能に関しても折り紙付きといっていいだろう。
ハイレベルの動力性能を生かし、優れたフットワークをサポートするブレーキは、もちろん4輪ベンチレーテッドディスクで、アンチロックブレーキシステムALBが装備される。タイヤは前:205-50Z R15/後:225-50Z R16が組み合わされている。
この魅力満載のNS-X、アメリカでは“アキュラ”チャンネルで発売される予定だが、日本国内にも当然、投入される。その時期は90年代末を目指しているという。今から、その日が待ち遠しい。
〈まとめ=ドライバーWeb編集部〉