自動車雑誌ドライバーが過去に取り上げた記事が今に蘇る「DRアーカイブズ」。前回に続き、1989年3-20号の「シカゴ・オートショー」を振り返る。
◇◇◇以下、当時原文ママ◇◇◇
■注目のミッドシップに熱い視線
プレス・コンフェレンスにおける久米社長、下島セニア・マネージング・ダイレクターのあいさつが、とても長く感じられた。その背後のカーテンの奥に、ホンダ・ミッドシップスポーツ、NS-Xがあるのだ。早くその姿を見たい。
昨年7月。本誌はいち早くこのクルマの存在をキャッチし、イラストでその姿をお伝えした。長い長い時間をかけた取材だった。情報の正確さには自信があった。それでも実車を見るまでは、やはりコワイ。まさかシカゴまでやってきて、実車を見ることになるとは思いもしなかった。しかし、とにかくもう目の前にクルマがある。待つだけだ。
拍手が沸いた。我に返った。カーテンが開いた。低くて美しいプロフィールが現れた。NS-Xの実車だ。思ったよりも長い。見覚えのある姿ではあった。しかし、ホッとしたのもつかの間。ヘッドライト、フロントフード、リヤランプなど、イラストと全然違う部分に次々と気がつく。やれやれだ。
クルマはとてもキレイに仕上がっていた。ルーフ&ピラーのブラック塗装が、キャノピー感覚のグリーンハウスをコンパクトに見せる。ワイド感も、低い車高も申し分ない。狙いは重量級のスポーツカーではないと、下島氏は強調していた。しかし、これは誰が見てもフェラーリ328あたりがライバルだろう。動力性能を占う、エンジン関係の詳細スペックがないのが残念だ。
プレスデーに展示車の前で立っていると、「What is this!?」という声とともに、若い男たちが足をとめた。そのあと何を話していたのか、ボクの語学力では聞き取れなかった。が、NS-Xが彼らにとってとても魅力的に映ったことだけは確かなようだ。
来年半ばから秋ごろにかけて、日米欧ほぼ同時に売り出されるというNS-X。正式デビュー時の車名は『Allegre(アレグレ)』になるという有力情報を、シカゴでつかんだことを付け加えておこう。
〈まとめ=ドライバーWeb編集部〉