第50期棋王戦コナミグループ杯(共同通信社と観戦記掲載の21新聞社、日本将棋連盟主催)は挑戦者決定トーナメントが進行中。6月27日(木)には永瀬拓矢九段―狩山幹生四段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、持将棋指し直しにもつれ込む大熱戦を187手でものにした狩山四段が強敵を倒して2回戦進出を決めています。
あいさつ代わりの持将棋
ともに受け主体の棋風なだけにどちらが先攻するかに注目が集まります。10時に始まった対局は角換わり腰掛け銀対右玉の展開に進んだのち20時24分に持将棋が成立。互いにほとんどの持ち時間を使い切った熱戦は2局目に突入します。
持ち時間を1時間ずつ追加して始まった指し直し局は狩山四段が先手番に。相掛かりの持久戦から雁木に組み替えたのは、角道が止まるだけに消極的ながらこれも狩山流。千日手の可能性も出るなか、後手の永瀬九段はしびれを切らして左辺の端攻めで戦端を開きました。
攻めずに勝つ将棋術
持ち時間各4時間の本局は23時を過ぎたころようやく戦いに突入。先攻に踏み切った永瀬九段ですが、一気の敵陣攻略は無理と見て遅攻に切り替えます。自陣に馬を引き付けたのは駒得を生かして息長く指す狙い。しかし本局はここから狩山四段の指し回しが光りました。
自玉を守る4枚の金銀を押し上げ大駒を圧迫したのが相手の「攻め駒を攻める」好着想。手順に築いた天空の城は狩山流受け将棋を物語る珍形にほかなりません。自玉の安全を確かめた狩山四段が反撃に乗り出したのは1局目の対局開始から実に14時間後のことでした。
終局時刻は翌28日(金)0時45分、最後は再び相入玉模様になりながらも点数不足を認めた永瀬九段の投了で狩山四段の金星が決まりました。全体を振り返ると、2局を通じて敵玉への寄せの手をほとんど指さずに勝った狩山四段の勝負術が功を奏した格好です。
水留啓(将棋情報局)