カンテレのドキュメンタリー『ザ・ドキュメント』(毎週金曜25:25~※関西ローカル)では、「僕より先に死なないで~アスベスト・中皮腫患者の7年~」を28日に放送する。

  • 『ザ・ドキュメント 僕より先に死なないで~アスベスト・中皮腫患者の7年~』=カンテレ提供

■アスベストが原因とされるがん患者に密着

アスベスト(石綿)が原因とされる希少がん“中皮腫”の患者で、同じ病気で苦しむ人々を励ますため全国を回った右田孝雄さんの生涯を追う本番組は、カンテレで2019年に放送した『見知らぬ棘~アスベスト・中皮腫患者の闘い~』の続編となるドキュメンタリー。2016年に中皮腫で余命2年と宣告された右田さんが、中皮腫患者が支え合えるコミュニティづくりに注力し、今年3月に59歳で亡くなるまでの約7年間を密着取材した。

かつて“奇跡の鉱物”と呼ばれたアスベストは、海外で発がん性などの危険性が指摘されていたにもかかわらず、日本では長い間、国が使用を禁止せず、生活の至る所に使われた。その結果、知らず知らずのうちに吸ってしまったアスベストが原因とされる希少がんの中皮腫を発症し、苦しむ患者が全国各地にいる。アスベストを扱う仕事をしていなくても発症する中皮腫は、誰しもが罹患する可能性がある病気だが、希少がんゆえに治療法も少ないままだ。

右田さんは、自身も中皮腫で余命宣告を受けて悩み苦しみながらも、中皮腫患者同士で励まし合う手助けをしたいと、同じ中皮腫患者の栗田英司さんと“中皮腫サポートキャラバン隊”を結成。中皮腫は希少がんゆえ情報が乏しかったが、右田さんは「不安を分かち合いたい」と自身のブログで呼びかけ、全国を回り、患者同士の交流を重ねた。また国などに新たな治療薬の早期承認を働きかけるなど、常に“患者の未来”のために動き続けた。しかし、無情にも次々とやってくる仲間の死。そのたびに、右田さんはもうこんな思いはしたくないと悔しがり、悲しんだ。「僕より先に死なないで、僕は死ぬまで元気だから」が口癖だった右田さん。明るく笑って過ごす姿は、患者たちの希望だった。同じ病に苦しむ仲間たちのため、残された命を捧げた右田さんが、人生の最期に願うこととは。

一般的に吸い込んでから20年~50年ほどたって発症する中皮腫の発症のピークは、2030年前後と言われている。決して他人事ではない、中皮腫患者らの生き様を通してアスベスト被害の実態に迫る。

■常盤貴子がナレーション担当

ナレーションは、常盤貴子が務める。収録を終えて常盤は「見入ってしまいました。特に、右田さんの絞り出すような最期の言葉。こんな風に闘ってくれてた人たちがいたんだ……。アスベストの被害について知るのは遅かったけれど、中皮腫の発症はこれからピークを迎えるということなので、それまでに何かできることがあるはずです。探していかなくては、と強く思いました」と話す。「アスベストは吸ったら危ないということぐらいしか知らなかった」という常盤は、ナレーション収録を経て心境に変化があったといい「いつ自分の身にふりかかってもおかしくない中皮腫を知り、恐怖を感じました。これだけ多くの方々が苦しんでいる事実に、自分ごととして早く解決しなくてはと思いました」と熱を込めて語った。さらに、右田さんの生きざまについて「人としてすごい方だったんだなと思います。希少がんであるがゆえに情報も乏しいからこそ、患者さん同士で励まし合うお姿が、たのもしいなと思いました。右田さんと栗田さんが作られたコミュニティの大切さは、お2人がいなくなってしまったからこそ一層感じられます。ウェブサイトを開設してくださっているから、もしも自分に中皮腫の疑いがあった時に調べられる場所があるということですよね。今後も増えるであろう中皮腫患者を救ってくれる、すごい功績だと思います」と敬意を表した。最後に「私のように知らない人がほとんどだと思うので、いつ自分や自分の大切な人が中皮腫になってしまったとしても対応できるように、知識として知っておいてほしいです」と呼びかけた。

■常盤貴子 コメント

――ナレーション収録を終えた今の感想をお聞かせください。

見入ってしまいました。特に、右田さんの絞り出すような最期の言葉。こんな風に闘ってくれてた人たちがいたんだ……。アスベストの被害について知るのは遅かったけれど、中皮腫の発症はこれからピークを迎えるということなので、それまでに何かできることがあるはずです。探していかなくては、と強く思いました。

――今回、声を吹き込むにあたって意識されたことはございますか。

柔らかく伝えた方がいいのか、淡々と伝えていった方がいいのか、どっちがいいのかと考えていました。でも、立ち向かう相手があまりにも巨大だから、柔らかくしすぎて軽くなってしまうよりは、極力事実を伝えていく方向性でできれば、と思っていました。

――右田さんの生きざまについてどのように感じられましたか。

右田さんが笑顔で活動して伝えてくださるので、見ていてすごく引き込まれるし、内容がヘビーなことであっても、楽しく伝えてもらえると、聞く方も楽しくなれるんだなと思えました。(右田さんは)人としてすごい方だったんだなと思います。「希少がん」であるがゆえに情報も乏しいからこそ、患者さん同士で励まし合うお姿が、たのもしいなと思いました。右田さんと栗田さんが作られたコミュニティの大切さは、お2人がいなくなってしまったからこそ一層感じられます。ウェブサイトを開設してくださっているから、もしも自分に中皮腫の疑いがあった時に調べられる場所があるということですよね。今後も増えるであろう中皮腫患者を救ってくれる、すごい功績だと思います。

――ナレーション収録前と後で、アスベスト・中皮腫患者の方々に対する考え方や心境の変化は?

(収録前は)アスベストは吸ったら危ないということぐらいしか知らなかったです。ある日突然、がんになり、しかもその症状が一転してしまうことも。それが“中皮腫”ということも初めて知りました。番組の中で、希少がんだから治験ができず、新薬の開発が進まないというお話がありました。いつ自分の身にふりかかってもおかしくない中皮腫を知り、恐怖を感じました。これだけ多くの方々が苦しんでいる事実に、自分ごととして早く解決しなくてはと思いました。

――視聴者のみなさんに、本作の見どころ、メッセージをお願いします。

私のように知らない人がほとんどだと思うので、いつ自分や自分の大切な人が中皮腫になってしまったとしても対応できるように、知識として知っておいてほしいです。